わかもり税理士事務所

未加入期間を確認! さかのぼって『社会保険』加入が必要になるケースとは

26.01.27
ビジネス【労働法】
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「パートタイマーの勤務時間を増やしたが、社会保険の加入手続きを忘れていた」「法改正で加入要件が変わっていたのに、手続きが漏れていた」など、日々の業務に追われるなかで、こうした「うっかり」は決して珍しいことではありません。
しかし、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、加入要件を満たした時点から加入が義務づけられる制度です。
もし、手続きが漏れていた場合には、本来加入すべきだった日までさかのぼって加入手続きを行う必要があります。
では、どのような場合にさかのぼっての加入が必要になるのか、その確認方法や実際の手続きの流れもあわせて確認しておきましょう。

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さかのぼることができるのは最大2年間

社会保険の手続きでは、原則として、「加入要件を満たした日」が資格取得日になります。
したがって、加入手続きが漏れていた期間が判明した場合には、現在から過去にさかのぼって加入手続きを行う必要があります。
これを実務上、「遡及加入」と呼びます。

たとえば、契約上は週20時間労働だったアルバイト従業員が、実態として常態的に週30時間以上働いていた場合や、特定の要件を満たす企業で短時間労働者の適用拡大が見落とされていた場合などがこれに該当します。
会社側に手続き上の意図がなくても、実態で加入要件を満たしていれば、法律上は加入義務が発生しています。

ここで重要になるのが、さかのぼれる限度です。
社会保険料の徴収権には時効があり、遡及加入できる期間は最大で2年間です。

健康保険法および厚生年金保険法では、保険料を徴収したり還付を受けたりする権利は、2年を経過したときに時効により消滅すると定められています。
そのため、もし3年前から加入要件を満たしていたにもかかわらず、未手続だったことが今になって発覚したとしても、実務的にさかのぼって加入できるのは直近2年分のみとなります。

社会保険の未加入期間を確認する方法

自社に未加入期間がないか確認するには、雇用契約書の内容と実際のタイムカード(出勤簿)や賃金台帳を照合する方法があります。

確認のポイントは「所定労働時間」と「実労働時間」の差です。
当初は社会保険の加入要件を満たさない短時間契約だったとしても、恒常的な残業や本人の希望によるシフトを増やしている場合には、実労働時間が所定労働時間を大きく上回ることがあります。
特に注意が必要なのは、「週の所定労働時間」「1日の所定労働時間」および「月の所定労働日数」が、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の4分の3以上になっているかどうかです。

また、従業員数が一定規模以上の企業(特定適用事業所)においては、「週の所定労働時間が20時間以上」「月額賃金が8.8万円以上」「2カ月を超える雇用の見込みがある」「学生ではない」という要件をすべて満たした時点で加入義務が生じます。
これらの要件は法改正により段階的に変更されているため、古い基準のままで判定していないか、定期的に見直す必要があります。

さかのぼって社会保険に加入するには

調査の結果、加入漏れが発覚した場合には、速やかに管轄の年金事務所へ届け出ましょう。
手続きの流れとしては、通常の入社時と同様に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出しますが、遡及加入の場合は勤務実態の証明資料が厳格に必要です。
これは、本当にその過去の日付から雇用実態があったのかを年金事務所が審査するためです。

必要書類としては、対象となる従業員の「被保険者資格取得届」です。
この際、資格取得年月日の欄には、本来加入すべきだった過去の日付を記入します。
加えて、その日付が正しいことを証明するための客観的な書類をさかのぼる期間分すべて用意します。
具体的には、当時の「雇用契約書」や「労働条件通知書」、実際に勤務していたことを示す「出勤簿(タイムカード)」、給与の支払いを証明する「賃金台帳」などです。
これらの書類は、さかのぼる期間分すべてを用意します。
また、基礎年金番号を確認するための年金手帳や通知書のコピーなども必要になる場合があります。

さらに、なぜ届出が遅れたのかを説明するための「遅延理由書」の提出を求められることもあります。
この書類には、事務処理の失念や確認不足など、遅延に至った経緯を正直に記載し、事業主の署名・押印をして提出します。
年金事務所によっては求められる書類が異なる場合があるため、事前に電話などで確認しておくとスムーズです。

手続きが無事に完了すると、年金事務所から過去分の保険料納入告知書が送られてきます。
さかのぼって加入した期間(最大2年分)の保険料は、原則として一括納付が必要です。
本来、毎月の給与から天引きすべきだった本人負担分の保険料についても、会社が一時的に立て替えます。
その後、会社は従業員に対して立て替えた分の保険料を請求することになりますが、従業員にとっても2年分の保険料を一括で支払うことは大きな負担となります。

そのため、従業員からの徴収方法については十分な話し合いが必要です。
翌月以降の給与から少しずつ分割して控除するなど、トラブル防止のため、労使間で合意形成を図るようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2026年1月現在の法令・情報等に基づいています。