わかもり税理士事務所

不適切なWebサイトへの広告表示を防ぐ『ブランドセーフティ』

25.05.27
ビジネス【マーケティング】
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デジタル広告は今や人々の生活に深く浸透し、企業が顧客とつながるうえで欠かせないツールとなりました。
しかし、その一方で、不適切なサイトへの広告表示によるブランドイメージの毀損や、風評被害といったリスクが顕在化しています。
自社の広告が暴力的なコンテンツやヘイトスピーチが掲載されたサイトに表示されてしまった場合、消費者はその企業に対して「そういうものを支持しているの?」と感じ、不信感を抱くかもしれません。
このような事態を避けるために、企業が取り組む必要のある「ブランドセーフティ」について解説します。

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急速に市場が拡大するデジタル広告のリスク

インターネットの普及に伴い、デジタル広告の市場は急速に拡大しています。
従来のテレビCMや新聞広告と比較して、デジタル広告はターゲットを絞りやすく、効果測定も容易であるため、多くの企業が積極的に活用しています。
総務省の「情報通信白書」によれば、2021年にインターネット上のデジタル広告の売上高は、新聞・雑誌・ラジオ・テレビのマスコミ4媒体の広告を初めて上回りました。

拡大を続けるデジタル広告の市場ですが、デジタル広告の仕組みは複雑であり、広告が表示される場所を完全にコントロールすることは困難です。
特に、AIやアルゴリズムを使ってリアルタイムで広告枠を自動売買する「プログラマティック広告(運用型広告)」と呼ばれる自動取引システムを利用する場合に、広告は膨大な数のWebサイトやアプリに配信される可能性があり、不適切なWebサイトへ表示されるリスクが高まってしまいます。
不適切なWebサイトとは、主に暴力的なコンテンツやヘイトスピーチ、フェイクニュースなどが掲載されたサイトを指します。

また、デジタル広告の世界では、実在しないWebサイトやアプリに広告を配信して、広告費を不正に取得する「アドフラウド(広告詐欺)」と呼ばれる行為も横行しており、課題の一つとなっています。
アドフラウドは、広告の表示回数やクリック数を偽装するというもので、「ボット(自動プログラム)」を悪用するケースや、不正なWebサイトの運営者が主犯の場合もあります。

こうした不適切なWebサイトへの表示やアドフラウドは、企業の信頼低下やブランドイメージの毀損につながります。
場合によっては消費者の不信感が募り、不買運動に発展する可能性も否定できません。
実際に、広告が不適切なコンテンツと共に配信されてしまい、問題になったケースも多々あります。

ブランドセーフティで広告リスクを減らすには

2025年3月には日本の出版社のWebサイトや料理レシピサイトに、不適切な広告が表示されたことが問題になりました。
ただし、それぞれの企業が公式Xや自社サイトで謝罪文を掲載し、意図していない表示であったことを説明し、迅速で誠実な対応を行なったことにより、むしろ称賛を浴びる結果となりました。
このケースでは、自社サイトに不適切な広告が表示されたというものですが、不適切なWebサイトに自社の広告が意図しないまま表示されてしまうことも少なくありません。

企業がどれほど注意深くデジタル広告を管理していても、完全にリスクを排除することはむずかしいのが現状です。
そこで、これまで以上に重要になるのが「ブランドセーフティ」です。

ブランドセーフティとは、企業やブランドの広告が不適切または有害なコンテンツと一緒に表示されるのを防ぐ取り組みのことを指します。
具体的な方法はいくつかありますが、まず大切なのは広告の掲載先の精査です。
コンテンツの質や運営者の信頼性、評判などについて、広告を掲載するWebサイトやアプリを事前に精査し、信頼性の高い媒体のみを選択するようにしましょう。

また、広告が適切な場所に表示されているかどうかを監視し、不適切な表示を防止する「アドベリフィケーションツール」の導入も効果的です。
アドベリフィケーションツールは、AI技術を活用して広告が掲載されたWebサイトやアプリのコンテンツを解析し、企業やブランドにとって不適切なコンテンツが含まれていないかを自動的に判断してくれるというものです。

あわせて、「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」も作成しておくことをおすすめします。
ブラックリストとは、広告を表示したくないWebサイトやアプリのリストのことで、ホワイトリストとは、広告を表示したい信頼性の高いWebサイトやアプリのリストを指します。

ブランドセーフティは複数の対策を並行して行うことで、高い効果を発揮します。
デジタル広告は企業にとって重要なマーケティングツールですが、不適切な広告表示によるリスクも伴います。
ブランドセーフティへの意識を高め、適切な対策を講じることが企業やブランドを守ることにつながります。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。