わかもり税理士事務所

グローバル展開を行うなら各国の『競争法』に要注意!

25.05.27
ビジネス【企業法務】
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近年、国内の市場にとどまらず、積極的に海外展開を推し進める日本企業が増えています。
グローバル化は、新たな収益機会の創出や事業の多角化といった大きなメリットをもたらす一方で、予期せぬリスクも潜んでいます。
その一つが、各国の「競争法」の存在です。
日本でビジネスを行ううえでは日本の競争法である「独占禁止法」を意識するように、グローバル展開を行う際、特に注意したい各国の競争法について解説します。

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海外で日本企業の摘発リスクが高まっている

競争法とは、市場における公正な競争を促進し、消費者の利益を保護することを目的とした法律の総称で、日本では「独占禁止法」がこれにあたります。
独占禁止法の正式名称が「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」である通り、多くの国でも、私的独占の禁止と公正取引の確保を目的とした競争法が定められています。

各国の企業が進出する国の競争法に基づき、自由かつ公正に競争することで、よりよい品質の製品やサービスが、より低い価格でその国の消費者に提供されることになります。
競争法は、各国の健全な市場経済の発展に不可欠な役割を果たしているといえるでしょう。

そのため、日本企業も海外で事業を展開する際には、その国の競争法をしっかりと理解し、守らなければいけません。
各国で異なる部分はあるものの、具体的な違反行為として、競争法では企業間の不当な取り決め(カルテル)、市場における支配的な地位の濫用、不公正な取引方法などを規制の対象としています。
これらの行為は、市場の競争を歪めて、新規参入を妨げたり、消費者の選択肢を狭めたりする可能性があるため、多くの国で禁止されています。

もし、現地の競争法に違反してしまうと、巨額の制裁金が科せられたり、事業活動に大きな支障を来したりする可能性があります。
実際に、日本企業の海外展開が進むなかで、こうした違反行為による摘発リスクが高まってきており、日本企業が現地当局の調査および制裁の対象とされるケースも増えてきました。
2025年4月に、イギリスの「競争・市場庁(日本の公正取引委員会に相当)」が、日・米・欧の自動車メーカー10社などに対して、競争法違反で総額約7,700万ポンド(約150億円)の制裁金を科したことを発表しました。
同じく、EUの「欧州委員会競争総局」も競争法違反として、日本を含む各社にペナルティを科しています。

進出予定の国の競争法を確認することが重要

各国の競争法は、その国の経済状況や歴史的背景、政策目標などによって、さまざまな特色を持ちます。
たとえば、アメリカでは競争法として、「シャーマン法」や「クレイトン法」、「連邦取引委員会法」が定められており、これらの法律は総称して「反トラスト法」と呼ばれています。
反トラスト法は、カルテルや独占的行為に対して非常に厳しい規制を設けており、司法省反トラスト局や連邦取引委員会などが執行機関として機能しています。

また、2008年に施行された中国の競争法である「中華人民共和国独占禁止法」は、独占的合意、市場支配地位の濫用、企業結合などを規制しています。
近年、中国は巨大プラットフォーム企業に対する規制を強化するなど、競争法による規制の動きを活発化させています。
中国市場に進出する日本企業は、中国政府の動向を注視しておくとよいでしょう。

このほかにも、多くの国で競争法が定められています。
公正取引委員会のホームページでは、各国の競争法を紹介しているので、進出を考えている国の競争法を確認しておきましょう。

各国の競争法の内容は複雑であり、頻繁に改正されることがあります。
グローバル展開を行う日本企業は、市場参入を予定している国の競争法を調査し、理解を深めておく必要があります。
現地の法律事務所やコンサルティング会社などを活用し、常に最新かつ正確な情報を収集する体制を構築することが重要です。

さらに、海外の競争法の執行機関は、企業に対して情報提供や意見交換の機会を設けている場合があります。
必要に応じて、機関に相談したり、意見を聴取したりすることで、予期せぬ法規制違反のリスクを低減できるでしょう。

グローバル展開を行う日本企業にとって、各国の競争法は決して無視できない重要な法規制です。
進出先の国の競争法をしっかりと理解して遵守することで、持続的な成長と企業価値の向上につなげていきましょう。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。