離婚の最終手段・離婚訴訟に必要な『法定離婚事由』とは
日本では、夫婦双方の合意があれば、比較的スムーズに離婚することができます。
しかし、夫婦間で離婚の合意が得られない場合には、最終的な手段として、裁判所に離婚を認めてもらう「離婚訴訟」という手続きに進むことになります。
ただし、離婚訴訟を起こせば必ず離婚が認められるわけではありません。
裁判所に離婚を認めてもらうためには、民法で定められた「法定離婚事由」のいずれかに該当する必要があります。
今回は、離婚訴訟を通じて離婚を成立させるために理解しておきたい、法定離婚事由について説明します。
協議離婚が主流で、そのほかの方法はわずか
厚生労働省が公表している「人口動態統計」を見てみると、2023年の離婚件数は18万3,814組と、前年の17万9,099組より、4,715組増加しました。
年々緩やかに減少傾向にある日本の離婚件数ですが、多くの場合は、夫婦が話し合いによる合意を得て離婚する「協議離婚」が選ばれています。
協議離婚は家庭裁判所などを通さずに成立する離婚で、全離婚件数の約9割がこの協議離婚によるものです。
一方、話し合いによって離婚が成立しない場合は、裁判所の力を借りることになります。
裁判所によって離婚を成立させる方法もさまざまで、家庭裁判所の調停委員を交えた話し合いによって合意を目指す「調停離婚」や、離婚訴訟中に夫婦が和解に至って離婚が成立する「和解離婚」、そして、裁判所が判決を出すことによって離婚が成立する「判決離婚」などがあります。
一般的には、調停離婚で合意が得られない場合に離婚訴訟を起こすことになり、その裁判中に和解しないと、最終的に判決離婚によって離婚を成立させることになります。
ちなみに、2020年の離婚の種類別の割合を見てみると、協議離婚が88.3%だったのに対し、調停離婚は8.3%、和解離婚は1.3%、判決離婚はわずか0.9%となっています。
離婚訴訟は相手がいくら離婚を拒否しても、裁判所が判決を出せば離婚することができます。
裁判所が「離婚はやむを得ない」と判断すれば、相手の同意なしで離婚が成立するということです。
また、親権・養育費・財産分与・慰謝料など、夫婦間で合意できなかったことを裁判所が一括して判断してくれますし、裁判後にトラブルが起きても、その判決文が証拠として活用できます。
たとえば、慰謝料の未払いなどが起きても、強制執行などの法的手段を講じることが可能です。
離婚を求める側は法定離婚事由の立証を
司法の判断で結婚生活に終止符を打てる離婚訴訟ですが、一部の例外を除いて、まず離婚調停が不成立でなければ、裁判所に訴えを起こすことはできません。
日本は「調停前置主義」をとっており、裁判による決着よりも夫婦間の話し合いによる解決を重視しているからです。
まずは調停委員に間に入ってもらう、離婚調停で離婚の成立を目指すことになります。
また、離婚訴訟を行う場合、離婚を求める側は民法770条に定められた以下の5つの法定離婚事由のいずれか、もしくは複数に該当する事実を具体的に主張し、証拠によって立証する必要があります。
単に「性格の不一致」といった抽象的な理由だけでは、離婚は認められません。
法定離婚事由の1つ目は「不貞行為」です。
これは、配偶者のある者が配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。
一般的に「浮気」や「不倫」と呼ばれる行為がこれに該当します。
2つ目は「悪意の遺棄」です。
これは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦間の同居義務、協力義務、扶助義務を意図的に放棄することを指します。
具体例としては、一方的に家を出て行き生活費をまったく渡さない、正当な理由なく同居を拒否する、病気の配偶者を看病せずに放置する、生活費を浪費して家庭を顧みない、といったケースがあげられます。
3つ目は、配偶者の「3年以上、生死が不明である」ことです。
配偶者が行方不明となり、生死が3年以上確認できない場合、離婚が認められることがあります。
ちなみに、相手の生死が不明ということは協議や調停などが不可能であるため、このケースに限っては離婚調停を行わなくても離婚訴訟を起こすことができます。
4つ目は、配偶者が「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」ことです。
配偶者が重度の精神疾患にかかり、夫婦としての協力・扶助義務を果たすことができず、かつ回復の見込みがない場合は離婚が認められることがあります。
ただし、この事由は単に精神病にかかっているというだけでなく、その程度が「強度」であり、「回復の見込みがない」ことが必要とされ、裁判所でも非常に慎重に判断されます。
5つ目は、「その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある」です。
上記の4つの事由に該当しない場合でも、配偶者からのDVやモラハラ、犯罪行為や著しい浪費など、夫婦関係が完全に破綻し、もはや修復不可能と認められるような事情がある場合には、離婚が認められることがあります。
離婚訴訟を起こす際には、自分のケースが法定離婚事由に該当するかどうかを確認しておく必要があります。
特に、5つ目の「その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある」は、個々のケースや具体的な状況によって判断が大きく左右されるため、まずは弁護士などの専門家に相談することが大切です。
※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。