わかもり税理士事務所

『省エネ基準』の適合義務化を前に準備しておきたいこと

24.10.01
業種別【建設業】
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「改正建築物省エネ法」の施行によって、建設における「省エネ基準」への適合が義務化されます。
これにより、2025年4月以降に工事に着手する建築物に関しては、住宅・非住宅にかかわらず、すべての建築物を国が定めた省エネ基準に適合させなければいけない予定となっています。
もし、適合しなければ工事の着手などが遅れてしまう可能性があります。
では、省エネ基準とはどのような基準なのでしょうか。
適合の義務化が始まる省エネ基準について、事業者はその内容を把握しておきましょう。

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義務化が進められた背景と2つの省エネ基準

日本では、地球温暖化を進める二酸化炭素やメタンなどの「温室効果ガス」の排出を2030年度までに46%削減(2013年度比)することを目標にしており、さらに2050年には温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。
これを受けて、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建設業界でも、「省エネ」対策を促進させていくことになりました。
そのための取り組みの一つが、『省エネ基準』の適合です。

2022年6月17日に公布された「改正建築物省エネ法」では、原則として、すべての建築物に対して、省エネ基準への適合を義務づけることになりました。
これまでも大規模な非住宅に関しては、2017年4月から省エネ基準適合の義務化がスタートし、2021年4月から対象が中規模の非住宅へと拡大していましたが、今後2025年4月の施行日以降に建てられる建築物は、非住宅・住宅にかかわらず、すべて省エネ基準適合の対象になります。

では、適合しなければいけない省エネ基準とは、どのような基準なのでしょうか。
建築物に定められた省エネ基準には、「一次エネルギー消費量基準」と「外皮基準」という2つの評価基準があり、どちらも建築物の省エネ性能を確保するために必要な基準となっています。

「一次エネルギー消費量基準」とは、建築物内で使われている設備機器の消費エネルギー量に関する基準のことで、「BEI」という単位で表されます。
BEIが小さいほど、エネルギー消費量が少なく、省エネ性能が高い建築物ということになります。
義務化がスタートすると、一次エネルギー消費量に関しては等級4以上の適合が必要になります。

また、「外皮基準」とは、建築物の外皮である外壁や窓などに設けられた基準で、外皮の表面積あたりの熱の損失量を示します。
外皮基準は「UA値」という値で表され、この値が小さいほど、建物内に熱が出入りしづらく、断熱性能が高い=省エネ性能が高い建築物ということになります。
この外皮基準はUA値によって1~7までの等級があり、義務化がはじまると、一次エネルギー消費量基準と同様に、等級4以上の適合が必要になります。

建築確認時に行われる適合性検査とは

義務化がスタートすると、建築物が省エネ基準に適合しているかどうかを調べるために、建築確認手続きのなかで原則として「適合性検査」が行われます。
まず、事業者は適合性審査を受けるために必要な計画書や計算書などの書面を準備しなければいけません。
適合性検査が不合格だった場合はもちろん、書面や手続きに不備があった場合も、確認済証や検査済証が発行されず、工事の着工が遅れてしまう可能性があるので注意しましょう。

また、建築物が完成した竣工後も「完了検査」と呼ばれる検査が行われます。
この完了検査で不合格になると、その建築物は使用できません。

なお、増改築の場合は、新たに増改築を行う部分にのみ、省エネ基準への適合が求められます。
増改築部分の壁・屋根・窓などに一定の断熱材などを施工するなどして、省エネ基準に適合させていくことになります。

ちなみに、省エネ基準の適合がすべての建築物に拡大されたことによって、適合性検査の増加による事業者や審査側の負担増が見込まれるため、建築確認の対象外の建築物や都市計画区域・準都市計画区域の外に建てられた平屋かつ200㎡以下の建築物などは、適合性審査が不要もしくは手続きの省略が認められます。

省エネ基準の適合義務化によって、今後はより高い省エネ性能を持つ建築物が求められるようになります。
2024年4月には、建築物の省エネ性能を表示する新たな「省エネ性能表示制度」もスタートしました。
これは、努力義務ではあるものの、建築物の販売・賃貸事業者に対して、販売などの際に省エネ性能の表示を求める制度です。

これからは、耐震性能と同様に省エネ性能も建築物を建てる際の大きな関心ごとになっていくのは間違いありません。
省エネに高い関心が向けられている今こそ、事業者は建築物の省エネ基準をよく理解して、2025年4月からの義務化に備えておきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。