土地家屋調査士法人共立パートナーズ

第三者が登記簿の附属書類を閲覧するには『正当な理由』が必要に

23.08.01
業種別【不動産業(登記)】
dummy
2021年に公布された不動産登記法の一部改正が、2023年4月1日から順次施行され始めました。
その内容は、不動産登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し(2023年4月1日施行)、相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行予定)、住所等変更登記の申請義務化(施行日詳細は未定、2026年4月ぐらいに施行予定)などといったものです。
なかでも、登記簿の附属書類の閲覧制度について、今まではこれらの書類を閲覧したい場合、『利害関係がある者』なら閲覧できました。
しかし、法改正により閲覧制度が見直され、2023年4月1日から登記申請書や附属書類を閲覧するには『正当な理由』が必要になりました。
改正前は『利害関係』の解釈が事例ごとで各登記官の解釈に委ねられており、個別に判断しなければなりませんでした。
そのため、このたびの改正で「正当な理由」となったのです。
今回は、登記簿の附属書類を閲覧するための要件を説明します。
dummy

附属書類のバリエーションと必要性

登記簿の附属書類とは、登記申請書および添付書面のことで、不動産登記を行うときに提出する書類です。

不動産登記簿は、不動産の物理的な状況を記した『表題部』と、その不動産の所有権などを記した『権利部』で構成されています。
物理的な状況とは、土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を指します。
たとえば、新しく建物を建てた際などに新規で行う表題登記には、『所有権証明書』(工事完了引渡証明書、検査済証)や『建物図面』、『土地所在図』などが必要になります。

また、不動産の相続を受けた際の所有権移転登記であれば『固定資産評価証明書』や、相続人と被相続人の『戸籍謄本』、さらに遺言による相続の場合は『遺言書』なども提出しなければいけません。

このように、登記を申請する際には登記申請書とあわせて、各種添付書類を用意する必要があります。
さらに、手続きを司法書士などに委任する場合は、『委任状』も添付書類に含まれます。

では、なぜ登記の申請には登記申請書だけではなく、添付書類が必要なのでしょうか。

登記の申請時は、登記簿に正しい登記情報を反映させる必要があります。
そのため申請先の法務局に対して、申請内容が正確であることを示すために、権利変動などの経緯も明確に記した添付書類を提出するのです。

正当な理由がなければ閲覧できない

これまで土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類は、登記申請人以外に「利害関係がある者」であれば、第三者でも手数料を支払えば閲覧できました。
しかし、登記法ではこの利害関係がある者の定義について明確に示されておらず、登記官が個々に判断していました。

そこで、閲覧できる人の具体的な範囲が分かりづらい点と、プライバシー保護の観点から、2023年4月1日からは登記申請人以外の第三者が附属書類の閲覧を請求する場合は、「正当な理由があるとき」に「正当な理由があると認められる部分に限る」と改正されました。

この「正当な理由」について、『令和5年3月28日・法務省民二第537号』では、『請求人において登記簿の附属書類を閲覧することに理由があり、かつ、その理由に正当性があることをいう。具体的には、登記簿の附属書類中の個々の書類に含まれる情報の内容、重要度なども考慮しつつ、その閲覧が認められる程度の正当性があるかどうかを個別に判断することになる』と示されています。

また、『一般に「正当な理由がある」と認められる場合』と『一般に「正当な理由がある」とは認められない場合』の例示も行われました。
たとえば、登記簿の附属書類のうち請求人が作成した書類の閲覧を請求する場合や、自己を申請人とする登記記録にかかわる登記簿の附属書類を請求人が閲覧することを申請人が承諾した場合などについては「正当な理由がある」とされ、ほかの法令等により交付等に係る手続が規定されている場合や、被害者等の現住所の閲覧制限措置がされている場合などについては、「正当な理由があるとは認められない」ケースとなっています。

つまり、正当な理由がなければ利害関係がある第三者でも、登記簿の附属書類を閲覧できなくなったというわけです。
また、登記申請人以外の第三者が登記簿の附属書類を閲覧するには、正当な理由があることを証明する訴状や当事者の陳述書などが必要となります。

附属書類などの閲覧の請求は個人でもできますが、必要があれば、まずは司法書士に相談してみるとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。