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患者から治療費外の謝礼を受け取る際のルールとリスクとは

21.04.06
業種別【医業】
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日本医師会では、医師が医療行為を受けた患者から『謝礼』を受け取ることは慎むべきという見解を示しており、また多くの病院では、患者からの謝礼を禁止しています。
しかし、いまだに手術前や手術後に、患者の家族から治療費外の現金や金券などが医師に渡されることも少なくありません。
もし、医師が患者から謝礼を受け取った場合には、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。
今回は、治療費外の謝礼に関するルールとリスクについて解説します。
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謝礼の授受は医師の倫理指針で禁止されている

かつては患者の家族が、医師に“心づけ”という形で、謝礼を渡す慣習がありました。
しかし、近年はホームページなどで謝礼を受け取らないことを明言している病院も多くあり、実際に謝礼の慣習は減少傾向にあります。

患者の家族にとってみれば、謝礼には自分の大切な家族をしっかりと診てくれるようにお願いする気持ちが込められていますし、また、手術が成功したあかつきに、医師への感謝の気持ちを伝えたいという意図があります。
医師にとっても、せっかくの心付けを断るのは心苦しいものですし、相手の気持ちを尊重するのであれば、受け取ってしまったほうがよいのではないかという思いもあるでしょう。

しかし、日本医師会では『医師の職業倫理指針』のなかで、『患者から謝礼を受け取ることは、その見返りとして意識的か否かを問わず何らかの医療上の便宜が図られるのでないかという期待を抱かせてしまう』と危惧しており、『慣習化すれば結果として医療全体に対する国民の信頼を損なうことになるので、医療人として慎むべき』としています。
医師は定められた報酬以外を要求してはならないとしており、また、現金、贈答品を問わず、謝礼は授受すべきではないという見解を示しています。


医師が謝礼を受け取ったことで発生する医院のリスク

当然、医師は謝礼の有無や、謝礼の金額によって治療内容や方針を変更することはありませんし、どのような患者にも、最適な治療を施すのが医師のつとめです。
したがって医院としても、医師への謝礼は受け取らないに越したことはなく、たとえ患者の家族から申し入れられたとしても、気持ちだけを受け取るようにと周知すべきといえます。

ただ、その患者の家でとれた野菜や、お菓子などの差し入れは、断ることで関係を悪化させてしまいかねない場合に受け取ってしまったとしても、社会通念上の儀礼の範囲内のものとして、問題とまではされないことが多いでしょう。
また、患者が「どうしても謝礼を渡したい」と譲らないような場合には、その謝礼金を医療施設への寄付として手続きをしてもらい、受け入れるという方法があります。
寄付金は診療や医療施設の修繕、医学教育などに使用されます。
この方法であれば、患者は感謝の気持ちを伝えられますし、医師も謝礼を受け取ったことにはなりません。

では、もし医師が謝礼を受け取った場合には、どんなリスクが考えられるのでしょうか。

法的には、私立病院に勤務する医師であれば特に問題はありませんが、国公立病院に勤務する医師は『みなし公務員』となるため、原則として公務員と同じ義務が発生します。

刑法197条1項では、『公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する』としており、もし謝礼を受け取った場合には、収賄罪が成立する可能性があります。

また、国公立・私立を問わず、税法上では、勤務医でも受け取った謝礼金が20万円を超える場合には雑所得や事業所得として申告する必要があり、申告をしないと、追徴課税を課せられることがあります。

まとめると、国公立病院に勤務する医師以外は、その方法や税務申告にさえ気を付ければ、謝礼を受け取ってもただちに法的な問題はないといえます。
一方で、病院側の職務規定などで謝礼の授受を禁止しているにもかかわらず、もし医師が受け取っていることが発覚した場合には、懲戒処分の対象にせざるを得ないこともあります

医師が謝礼を受け取ると、勤務する病院にリスクが生じる可能性もあります。
そのことを理解しながら、適切な対応を取るよう認識を共有しておく必要があるでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。