土地家屋調査士法人共立パートナーズ

引っ張り続けたその会社、後継者に引き継がせるには?

18.07.26
業種別【不動産業(相続)】
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株式会社の“おひとり社長”が、自分の死後、特定の者に会社の事業を引き継いでもらいたいと考えている場合、どのような相続対策をしておけば安心でしょうか?
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株式をすべて相続させるだけでは不十分!?

例えば、「長男を後継者として自分の事業を引き継いでもらいたい」と考えている場合、個人事業主であれば、事業に関わる全財産をその者に相続させる旨の遺言書を書いておけば、後継者が事業を引き継ぐことができるので、対策としてはこれで完了です。

ところが、株式会社の場合、会社の事業そのものや経営権の相続というものがありません。個人事業の資産とは異なり、株式会社の資産は、それ自体が独立して存在するものとされているからです。そのため、仮に会社の全株式を後継者に相続させたとしても、その者ができるのは、配当金の請求や株主総会の開催といった株主としての権利を主張することに限られます。後継者が社長になって経営に参加するには、取締役会や株主総会の承認が必要となるため、全株式を相続させても会社そのものを渡したことにはならないのです。


他の相続人にも配慮した対策が有効

それでは、「株式会社化はしているものの、実質は個人事業と変わらない“おひとり社長”で、事業を引き継ぐ特定の相続人1人に会社を譲りたい」という場合は、どうすればよいでしょうか?

その場合はまず、遺言書において、「会社の株式全部を後継者に相続させる」旨を定めておくことが必要です。株式を複数の相続人に分けてしまうと社内で権力闘争などが起こる危険があるため、経営を安定させるためには全株式をまとめて後継者に相続させる方が無難です。

もっとも、「遺産の大半が株式」という場合、全株式を特定の者に相続させると、他の相続人の遺留分を侵害することにもなりかねません。そのような事態を防ぐには、後継者に対し、社長の生前から株式を贈与しておくか、遺留分を侵害しない程度に過半数以上の株式を相続させる旨の遺言を残しておく対策をしておきましょう。

また、会社の入っているビルやその敷地などの不動産が社長の個人資産である場合、これも後継者に相続させようと考えがちですが、そのような対策が必ずしも奏功するわけではありません。むしろ、社長の死後に他の相続人の反感を買って“争続”問題が生じてしまい、会社の経営も不安定になる、という事態も散見されます。

このような場合は、あえて個人資産を他の相続人に相続させ、会社から他の相続人に賃料収入が入るようにするなどの工夫をすることで、相続分の減る他の相続人の不満を解消することができます。


遺言書の作成・管理がより容易に

現在審議されている民法改正(相続分野)では、自身で作成する遺言書について、これまではすべて自書しなければならないとされていたところ、相続させる財産を一覧にした財産目録を添付する場合は、その目録について自書する必要がないとされています。

また、自身で作成した遺言書が紛失したり変造されたりすることを防ぐため、法務局で遺言書を保管することができるようにもなります。

このように、遺言書の作成・管理もますます容易になっていくことをふまえて、今のうちから積極的に相続対策をしておきましょう。



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