至誠国際特許事務所

第10回 商標制度とは3 「クリスチャン・ルブタン事件-1-」

23.05.02
中小企業支援弁理士木村の知的財産フリートーク
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「クリスチャン・ルブタン事件-1-」

 タイムリーなので、「クリスチャン・ルブタン事件」についてお話します。
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 クリスチャンルブタン社は、女性用ハイヒールの製造販売メーカーで、「赤い靴底の女性用ハイヒール」を製造販売しております。米国、欧州では、「色彩のみの商標」が以前から登録する制度であっため、ルブタン社も米国、欧州では「女性用ハイヒールの靴底の赤色」を商標登録しています。

 そして、令和2年4月から日本でも色彩のみの商標が法改正により登録されるようになったため、日本でも登録をすべく出願しております。

 しかしながら、日本では、歴史的に靴底に様々な色を付けることは商慣習として行われており、その中に赤色もあります。
 例えば、底の赤い下駄なども江戸時代に存在しています。

 従って、ルブタン社の「(赤い靴底)レッドソール」の赤色を商標として登録した場合には、靴製造業者の日常的な製造行為を規制することになり、靴製造業、販売業の自由な発展を抑制することになります。

 そこで、ルブタン社のレッドソールの出願に対しては、登録に反対する立場から多くの情報提供が行われれております。そのような経過も相まって、拒絶理由通知、拒絶査定(審査での登録を認めない旨の最終決定)となり、理由は、「一色のみの色彩からなる商標は識別力がない(商標として機能しない)ことによります。

また、上記の事情により、一私人に独占させることは適当ではない、という理由(独占適応性の欠如)もあります。

 クリスチャンルブタン側は、この審査での最終判断である拒絶査定を不服として「拒絶査定不服審判」を提起しましたが、審判でも審査と同じ理由で却下され、審判での結論である拒絶審決を不服としてさらに知財高裁に審決取消訴訟を提起しておりますが、知財高裁でも、同様の理由により訴えは本年1月31日付けで却下されております。最高裁へ出訴は可能ですが、最高裁で結論が覆る可能性はほぼ考えられません。

 従って、欧米とは異なり、日本ではクリスチャンルブタンの「赤い靴底のハイヒール」の商標登録は最終的に認められない可能性が大きい、といえます。

 このような、外国の著名ブランドによる案件は、当該国の政府の意向が大使館等を通じて行政へ影響する可能性もある中で、日本特許庁及び裁判所は、欧米の先行例には影響されることなく、中小零細企業がほとんどの日本の靴製造販売業界の事情をよく反映し、独自の判断を下したものであり、中小企業知財弁理士としては特許庁、裁判所の判断を心から評価したい、と思っております。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。