至誠国際特許事務所

第2回 「何のために知財権を取るか?-その費用対効果-」

22.08.03
中小企業支援弁理士木村の知的財産フリートーク
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前回のメルマガに書いたとおり、特許、商標等の知的財産(以下、「知財」と略します)を権利として持つ意味は、「他人によるマネ、模倣を防止、阻止し、自社のマーケットを独占する」ためです。
 現在、知財権取得には様々な意味づけがされていますが、これが本来的な意味です。

 しかしながら、知財権を取得したり、調査するためには費用がかかります。従って、この「費用対効果」を確認しておく必要があります。
以下、当所で経験した事例で「知財の費用対効果」を考えてみましょう。
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前回のメルマガに書いたとおり、特許、商標等の知的財産(以下、「知財」と略します)を権利として持つ意味は、「他人によるマネ、模倣を防止、阻止し、自社のマーケットを独占する」ためです。
 現在、知財権取得には様々な意味づけがされていますが、これが本来的な意味です。

 しかしながら、知財権を取得したり、調査するためには費用がかかります。従って、この「費用対効果」を確認しておく必要があります。
以下、当所で経験した事例で「知財の費用対効果」を考えてみましょう。

1.外国から商品を輸入して日本で販売した、日本で権利侵害となった事例:
 当所ではこのような事例は複数経験しており、その多くは中国からの輸入品の場合です。
 この背景には、もともと「知的財産の権利は各国毎であり、その国の権利は他国には及ばない」(「属地主義」)という基本理念が各国において未だ十分に理解されていない、という事情があります。

 多くの場合、その外国の会社が「自分の国では知財権(特許権、実用新案権、意匠権)があるから心配ない、というようなコメントを日本企業に対して行い、日本企業のバイヤーがその言葉を信じて日本へ輸入した後に、日本で成立している他人の特許権等を侵害してしまった、という場合がほとんどです。

 このような場合に、どうすればよかったのかといえば、日本へ輸入する前に、日本の(知財権の調査を業務としている)特許事務所又は調査会社に依頼して「日本でその商品と同一の構造、形態の商品に関し、知財権(特許、実用新案、意匠、商標)が登録されているか否か」の調査を行い、「問題がない」という確認をしたのちに輸入、販売する、ことを行うことが必要なのです。

 このような調査を「侵害調査(権利抵触調査)」と言います。
 当所では、特許、実用新案に関しては約5万円~10万円程度、意匠の場合には8万円程度、商標の場合には約5万円程度で行っており、結論は、詳細な「調査報告書」を以てご報告をしており、必用な場合には面談でのお打合せを行わせていただいております。

 このような調査をすればほとんどの場合、問題となる知財権がある場合にはその存在を確認でき、事前に対応(例えば、商品の仕様を変更、販売をとりあえず中止等)ができ、突然に、権利者から警告書が届き、「販売中止、賠償金支払いを要求する」という事態を事前に回避できます。

 当所の経験からすると、事件になる多くの場合には、このような調査を行っておらず、結果的に、当該商品の販売停止、在庫品の廃棄、数百万円の和解金の支払いで事件が終了する、という事態に至っております。
従って、商品の販売停止により生ずる損害、在庫品回収、侵害品の廃棄に要する費用及び和解金費用を考慮すれば、「侵害調査」を行うことの費用対効果は明らかです。


2.外国の個人発明家が日本で特許を保有していたために日本大企業によるコピーを阻止できた事例:
 30年前になりますが、フランスの個人発明家が、非常に規模の大きい「形態、構造を機械的に変形できるアリーナ構造」について各国で特許を保有し、日本でも特許を複数保有しており、この特許は非常の独創的で高度な発明でした。
 発明者はその後来日して複数の大企業を訪問して営業・プレゼンを行い日本での事業化を行いました。

 その結果、ある中規模のゼネコンと特許のライセンス契約を結び、日本で本格的に事業化を開始しました。しかしながら、その途中で、ゼネコン側のライセンス契約違反が発覚し、契約条項違反の工事が明らかなりました。
 発明者はその後何度か来日し、そのゼネコンの社長と交渉をしましたが、解決には至らず、結果的に訴訟になりました。
 私は発明者側の弁理士として弁護士と共に東京高裁で戦い、結果的に、双方の和解で終結しましたが、和解金は1億円程度で、ほぼ勝訴と言える内容でした。
 この場合に、この発明の日本での特許化に要した費用は約300万円程度ですから、この事件の場合にも、費用対効果の観点では、「少額の投資で多額の利益を得ている」と言えます。

 上記1のケースは、依頼人が侵害者側(被告側)の立場の場合、2のケースは本人が被侵害者(原告側)の場合ですが、いずれの場合にも、知財権保護に関する活動(1の場合には、事前調査、2の場合には日本での特許化)は有効に機能していることは明らかです。
 
 現在の企業活動は、コンプライアンスが重視され、他社が所有する知財権との関わり合いは切っても切れない関係性にあります。

 基本的には、紛争事件にならないことがベストであり、紛争事件になった場合には本来の企業活動とは別の作業に時間と多額の費用がかかることになります。
 従って、紛争事件を事前に回避し、かつ、もし仮に紛争事件になった場合には、適切に対応できるように、知的財産権に関する手当をされておくことが安定した企業経営につながります。
 
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。