森会計事務所

介護施設での夜勤の実態と、その改善策とは

24.01.02
業種別【介護業】
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介護業のなかでも特別養護老人ホームや介護老人保健施設、グループホームなど施設系の職場において、「夜勤」は必要不可欠な仕事です。
しかし、夜勤に対する不安や負担を感じている介護スタッフも多く、介護施設として何らかの対策をとる必要があります。
そこで今回は、介護業における夜勤の実態と、業務改善のための施策を紹介します。
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介護施設の8割が長時間夜勤の2交替制

介護職の勤務形態における夜勤は、特別養護老人ホームなどの入居施設において夕方もしくは夜から翌朝まで勤務することをいいます。
夜勤の一般的な勤務時間は2交代制または3交代制で、通常は次のような勤務体系になります。

・2交代制
1日を日勤(8時間)と夜勤(16時間)の二つに分けて勤務体系を組みます。この場合、日勤が「午前8時~午後5時」、夜勤が「午後4時または5時~翌朝の午前9時または10時」という時間帯が一般的です。
・3交代制
1日を日勤(8時間)、準夜勤(8時間)、夜勤(8時間)の三つに分けて勤務体系を組みます。この場合、日勤が「午前8時~午後5時」、準夜勤が「午後4時~午前1時」、夜勤が「午前0時~午前9時」というシフトになり、均等に実働8時間ずつ勤務することになります。

スタッフ数に余裕がある介護施設であれば、3交代制を採用することもできるでしょう。
しかし、多くの介護施設は人材の余裕がないため、夜勤のシフト組みに苦慮しているのが現状です。

日本医療労働組合連合会が実施している『2022年介護施設夜勤実態調査』の結果によると、夜勤形態では「2交替夜勤」の施設が87.4%を占めていることがわかりました。
そして、2交替夜勤の施設のうち、70%以上の施設で1回あたりの勤務時間が16時間前後の長時間夜勤となっており、介護スタッフの負担が大きくなっていることがわかります。
過去の調査結果を見ても、2交替夜勤は80~90%台で大きな変化のないまま推移しており、特段の改善策も施されていないことがうかがえます。

夜勤の負担を軽減させる改善策は

では、介護職で夜間業務を行うスタッフの負担を減らすには、どうすればよいのでしょうか。

特養や老健など比較的規模の大きな施設では、複数名での夜勤体制を採用することができます。
その一方で、グループホームや小規模多機能型居宅介護施設などではそのほとんどが一人体制となっているため、忙しいときは休憩・仮眠もほとんど取れないという状況になるといわれています。

労働安全衛生規則第616条では、夜勤を行う施設での睡眠や仮眠について、『仮眠場所を男性用と女性用に区別して設けなければならない』と定めています。
しかし、先の調査結果によると、夜勤を行うため仮眠室が必要な介護施設のうち、41.5%の施設で「仮眠室がない」と回答しています。
特に、施設規模が小さいグループホームや小規模多機能型居宅介護施設では、仮眠室を設けていない傾向が強くなっています。

介護スタッフの感じる夜勤の不安や負担の多くは、「トラブルがあった場合の責任が大きい」「体調管理がむずかしい」といった悩みからくるものであり、精神的なマイナス要素が大きく影響しています。
このような不安・負担を解消にするためには、複数名体制の夜勤シフトを採用することが最も効果的ですが、前述した通り、慢性的な人材不足に悩む介護業界にとって早急な改善は容易ではありません。

まずは長期的に捉えて、夜勤専門スタッフの増員や過去の在職者の夜勤登録など、余裕を持った人員配置を目指して計画的に夜勤体制を構築する必要があります。
そして、それと並行し短期的な対策として『夜間緊急時対応マニュアル』を策定する、緊急時に駆け付けられるスタッフを整備するなど、夜間勤務中のスタッフの不安を軽減させる施策を取り入れることが大切です。
また、日常の研修や教育に重点を置き、夜間の緊急時の対応を不安なく一人でも実行できるようスタッフを育成し、経験を積ませることも有用です。
男女別の休憩室・仮眠室の設置など環境面における整備が充分でない施設は、早急に対応を検討しましょう。

少ない人数のなかでも、夜勤にあたるスタッフの精神的な不安・体力的な負担を減らすことが改善の近道です。
スタッフ一人ひとりのスキルアップを事業所全体で支援し、安全な夜勤体制を構築していきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。