森会計事務所

もし買い物トラブルが起きたら? 知っておきたい『消費者契約法』

22.11.29
ビジネス【法律豆知識】
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モノやサービスを購入する際に、消費者と事業者の間で結ばれる契約は『消費者契約』と呼ばれ、消費者が法律によって特に保護されていることをご存じでしょうか。
普段はあまり意識することもありませんが、商品を購入後に「説明と違う」「強引に買わされたので返品したい」などといった問題が起きた時、役に立つ法律知識です。
今回は、消費者契約の内容を規制している『消費者契約法』に基づき、モノやサービスの売買にまつわるトラブルについて解説します。
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『消費者契約法』は消費者を守るための法律

私たちは消費者として、衣料品や食品などの購入をはじめ、サブスクリプションサービスの加入、スマホの購入と回線の契約など、さまざまな消費者契約を結んでいます。

通常は消費者が自分で判断してモノやサービスを購入していますが、事業者の『不当な勧誘』(事業者が消費者に誤解を与えたり、困惑させたりする不適切な行為)により、本来は必要のない買い物をしてしまったり、予期せぬ内容の契約を結んでしまったりすることがあります。

そもそも消費者と事業者では、持っている情報量や交渉力に格差があります。
その格差によって消費者側が不利な契約を結んでしまうケースも多いと考えられるので、2001年には、消費者を守るため、契約を取り消せる『消費者契約法』が施行されました。

この消費者契約法は、幾度かの法改正によって契約が取り消せる範囲が拡大され、現在は以下にある不当な勧誘で結んだ契約は、『契約後であっても消費者の判断で』取り消すことができることがあります。

●嘘をつかれた(不実告知) 
●不利になる情報を言われなかった(不利益事実の不告知)
●不確かなことを「確実だ」と言われた(断定的判断の提供)
●不要であるにも関わらず著しい分量や回数の契約をさせられた(過量契約)
●帰ってほしいと伝えたのに居座られた(不退去)
●帰りたいのに強引に引き留められた(退去妨害)
●就職セミナー等で不安をあおられた(不安をあおる告知)
●デート商法等で好意を利用された(好意の感情の不当な利用)
●高齢者等が不安をあおられた(判断力の低下の不当な利用)
●霊感商法等で不安をあおられた(霊感等による知見を用いた告知)
●契約前なのに強引に代金を請求された等(契約締結前に債務の内容を実施等)

このように、不当な勧誘の内容はさまざまです。

消費者契約法などの法律に基づき、消費者が契約を取り消すことのできる権利を『取消権』といいます。
取消権を行使できる期間は、消費者が契約の誤認に気づいたり、困惑の状態を脱したりしてから1年間です。
契約を締結してから5年を過ぎると時効となり、取消権が消滅するので注意が必要です。

ちなみに、消費者契約法はそもそも消費者を守るためのものです。
たとえ『キャンセルを認めない』『事業者は責任を負わない』などの条項があったとしても、法律に基づき、無効になります。
このように、消費者の利益を守るという側面が大きいのも消費者契約法の特徴です。


消費生活センターは市民の心強い味方!

消費者が取消権を行使すると、事業者は消費者に代金を返金しなければなりません。
一方、消費者も購入した商品の現物を返却する必要があります。
すでに商品の一部を消費していたり、サービスを受けている場合は、残っている分を返還するだけで問題ありません。
現物が手元に残っていない場合も返還する必要はありませんが、転売などで利益を得ている場合には、転売相当額を返す必要が出てきます。

また、前述したように、『事業者は一切の責任を負わない』とする条項や、『一切のキャンセルや返品を受けつけない』とする条項、平均的な損害の額を超える『高額なキャンセル料を求める』とする条項などは無効になります。
ほかにも、『成年後見制度を利用すると契約を解除する』とした条項や、消費者が一方的に不利になる条項なども無効です。

消費者契約の契約書があった場合は、トラブルに遭った際の備えとして、関係書類を残しておくことが大切です。
また、トラブルの状況を書き記したメモや、現物や商品の写真なども証拠になるので、取っておきましょう。

万が一にも不当な勧誘で消費者契約を結んでしまった場合は、できるだけ早く消費生活センターに連絡しましょう
消費生活センターは全国に約850カ所あり、専門の相談員が無料で相談に応じてくれます。
解決のためのアドバイスや、場合によっては事業者との間に入り、解決を図ってくれることもあるので、心強い味方です。
消費生活センターでは、トラブルが起きる前の相談も受け付けているので、契約に不明な点があれば相談してもよいでしょう。

最近ではインターネットショッピングでの消費者トラブルも増加しています。
消費者契約法で守られてはいるものの、問題が起きてしまうとそれなりに手間も時間もとられ、時効になれば取り消せなくなってしまいます。
モノやサービスを購入する際は事前によく確認し、不利な買い物をしないように気を付けましょう。


※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。