森会計事務所

『エンゲージメント』という概念と、高める意義とは?

20.06.09
ビジネス【人的資源】
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エンゲージメントとは会社と従業員の関係性を表す言葉で、『愛着』や『思い入れ』などと訳されます。
会社に忠誠を誓い、懸命に働くような『愛社精神』という言葉は使われなくなって久しいものの、従業員と会社が一丸となり、共に影響を与えあい、成長していくという理念や考え方はいつの時代にも通用します。 
従業員の会社に対する愛着や思い入れの薄さが指摘されることも多くなりましたが、エンゲージメントを強くすると、思わぬ効果が生まれることもあります。
今回は、エンゲージメントを高めるメリットや、その方法について解説します。
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従業員のエンゲージメントを高める方法は?

事業主にとって、理想的な社員とはどのような社員でしょうか。
多くの経営者が理想とするのは、会社への愛着があり、仕事には熱意を持ってあたり、職務内容への満足度も高い社員ではないでしょうか。
『エンゲージメントが高い』状態というのは、企業によって解釈がさまざまですが、概ね上記のような条件を兼ね備えた社員のことを『エンゲージメントの高い社員』と定義するのが一般的です。
つまり、『会社への愛着』『仕事への熱意』『職務への満足度』が、エンゲージメントを測るうえでのポイントとなります。

終身雇用制度の崩壊や働き方改革によって、個人の働き方は多様化し、一つの企業に骨を埋めるという考え方もなくなってきました。
人材は常に流動的で、企業の人手不足も深刻化しています。

そんな状況の中で、人事や育成制度により踏み込んだ、新しい経営戦略として、エンゲージメントが注目されるようになりました。
組織と個人の結びつきを強めることで、人事領域における問題解決や、さらなる生産性の向上が期待できるとされ、多くの企業が『エンゲージメント』を高めるための施策を打ち出しています。

ゲーム・メディア事業を提供しているグリー株式会社では、マネージャーが社員の悩みや相談に乗る『1on1ミーティング』を実践。
信頼関係を築くことで、社員の満足度を高めています。

また、外資系大手コーヒーチェーンのスターバックスコーヒージャパン株式会社では、従業員同士を『パートナー』と呼び、さらには社内外に向けた自社ブランドの周知やPRによって、従業員自らがスターバックスの理念に共感し、内発的動機によって動くように働きかけています。
従業員に自社の“ファン”になってもらうことで、エンゲージメントを高めるという施策です。

ほかにも、『スキルマーケット』をはじめとするWebサービスの開発・運営で注目を集める株式会社ココナラでは、会社と社員が目標をリンクさせて、達成をサポートしていくメソッドを導入しており、株式会社メルカリの100%子会社、株式会社メルペイでは、毎月1回の調査で社員の状態を可視化する組織スコアリングを取り入れています。

各企業では、会社の経営目標に沿った従業員の動機付けに成功しており、それが業績の向上にもつながっているのです。


エンゲージメントを高めるメリットは?

さまざまな施策によって従業員のエンゲージメントが高くなると、社員のモチベーションの向上や、それに伴う生産性の向上、さらには組織の活性化や、離職率の低下などが期待できます。

上司に言われた仕事をこなすだけではなく、社員自らが会社の将来を真剣に考え、さまざまなアイデアを出し、熱意を持って実践する。
そんな理想的な環境が構築できるのです。
当然、活気のある職場は、従業員の満足度も高く、離職する社員も減っていきます。
結果的に人材の定着につながるのが、エンゲージメントの最大のメリットといえるのではないでしょうか。

では、どのようにエンゲージメントを高めていけばよいのでしょう。
前述したように、企業によって多種多様な取り組みが行われていますが、大事なのは社員をどのように満足させるかということです。
給与を上げたり、福利厚生を充実させたりすることだけではありません。
社員の働きやすい職場作りや、スキルアップ、将来設計のための成長支援、さらにはやりがいのある仕事を任せることなども、エンゲージメントを高める方法の一つです。
また、従業員の現状のエンゲージメントのレベルを把握しておくことも大切です。
たとえば『会社の戦略目標を理解している』『生産性向上のために何をするかわかっている』『自社の社員であることを誇りに思っている』などのチェック項目を設けた社員アンケートを行えば、社員全員のエンゲージメントのレベルを知り、施策に活かすことができます。

いずれにせよ、これからの企業成長にはエンゲージメントが欠かせません。
企業によってエンゲージメントを高めるための最適な施策はさまざまです。
背面服従ではなく、本当の愛社精神を育て、人材の定着や業績の向上に結び付けるためにも、自社に適した方法を模索していきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。