森会計事務所

男性従業員の育児休暇取得を推奨するメリットとは?

19.09.24
ビジネス【労働法】
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男性の育児休業(以下、育休)義務化の議論が盛り上がっています。
育児のために休暇を取得できる育休は、すべての従業員に認められた権利ですが、まだまだ男性の育休取得は普及していません。
しかし、企業側が男性の育休取得を推奨することで、社内のモチベーションや対外的なイメージの向上などにつながるケースが増えています。
そこで、今回は男性の育休取得を推奨することのメリットについてご説明していきます。
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従業員からの育休の申し出拒否はNG

『育児・介護休業法』では、『労働者は、その養育する 1 歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる(第5条)』と定めています。
そのため、従業員は、1人の子どもに対して1回、子どもの1歳の誕生日の前日までの期間で育休取得が可能です。
また、父母の両方が同時に育休を取得する場合は、子どもが1歳2カ月になるまで取得することができます。
さらに、子どもを保育所に入れたいが入所できない場合や、子どもの養育を行う配偶者が死亡や負傷などによって養育できなくなった場合などは、子どもが最長2歳に達するまで育休を延長することができます。

ただし、雇用されて1年未満の従業員や、育休を申し出てから1年以内に雇用が終了する従業員、さらには1週間の労働日数が2日以内の従業員については、適用除外の労使協定を結んでいる場合、育休を取得することができません。

育休は上記以外の従業員であれば、会社の規模や業種に関係なく、また男女の区別なく取得できるのです。
そのため、会社側はその従業員が職務から離れることで人材不足や経営困難に陥ったとしても、育休の申し出を拒否することはできません。
また、時期も関係なく、たとえ繁忙期であっても、年度末であっても、従業員から育休の申請があれば受け入れなくてはなりません。


進まない男性の育休取得の理由とは?

このように男性でも女性でも取得できる育休ですが、いまだに取得率には大きな男女差があります。
2019年に厚生労働省が発表した『平成30年度雇用均等基本調査』によれば、女性の育休取得率が82.2%であるのに対し、男性の育休取得率はわずか6.16%(前年度比1.02%プラス)にとどまっています。

社会的には推奨されている男性の育休取得ですが、やはり職場環境や旧態依然としたイメージから、なかなか取得が進んでいないのが現状です。
また、育休中の給与の支払いは会社側の裁量に任せられており、休業中は給与が支払われない企業がほとんどという点も、男性の育休取得にストップをかけている原因だと考えられています。

また、男性が育休を取得することによって、社内で嫌がらせが発生したり、報復人事が行われたりといった事例も報告されています。

カネカに勤める男性従業員は育休明けに転勤を命じられ、退職に追い込まれました。
2019年に男性従業員の妻が一連の経緯をSNS上で告発したため、ネットは大炎上。カネカの株価は下落しました。
また、同年、アシックスの男性従業員も育休取得後、不利益な扱いを受けたと会社を提訴しました。

こうした嫌がらせに対する世間の風当たりは強く、企業イメージは大きく損なわれました。
しかし、会社からの報復を恐れて育休を取得しない男性社員がいるのも事実です。


企業のイメージ&従業員のモチベーションアップに

企業側は、男性の育休取得を推進することで、大きなメリットがあることも知っておかなくてはいけません。
まず、男性の育休取得は、女性の負担の軽減につながり、結果として女性の社会進出促進につながります。
女性の社会進出は世界的な課題であり、それを社内全体で推進していくのは、グローバル化が進むなか、大きなメリットになるはずです。

また、その従業員のモチベーションアップにもなります。
育休を取得し、育児に参加することで、家族の存在を強く意識し、それが仕事の原動力となるのです。
さらに一時的にでも休むことによって、リフレッシュ効果も期待できます。
仕事から離れることによって、かえって仕事の面白さや大切さを再確認したという方も多いのではないでしょうか。

さらに、従業員の会社への帰属意識も高まります。
従業員のことを考えて、それを実行する会社には従業員も恩義を感じ、より仕事に邁進してくれるはずですし、家族への印象もよくなります。
1人の従業員が同じ会社で長年勤め上げるには家族の理解が必要不可欠であり、男性の育休取得推奨は、その家族全体を会社の味方につけることのできる良策といえるのではないでしょうか。

そして何よりも、対外的なイメージアップという大きなメリットもあります。
厚生労働省では、『次世代育成支援対策推進法』に基づき、子育てのサポートを行った企業に対し、『くるみんマーク』を与えています。
この認定基準の一つに、『一般事業主行動計画の計画期間において、男性従業員のうち育児休業等を取得したものが、1人以上であること』とあり、厚生労働省でも、企業における男性の育休取得を推奨していることがわかります。

くるみん認定企業になれば、高らかに『子育てサポート企業』とアピールすることができますし、それは人材不足の昨今、人事採用の現場でも有利に働くことが考えられます。

男性の従業員が気軽に育休取得をできるように、就業規則への記載や、育休から復帰までの社内体制の整備、さらには育休を取得しやすい空気づくりなど、必要となる対応を進めてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年9月現在の法令・情報等に基づいています。