森会計事務所

約款のルールが変わる? 新設された『定型約款』のポイント

19.05.07
ビジネス【企業法務】
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インターネットの普及などで、不特定多数の当事者間取引が増加しています。 
そんななか、契約を効率的に締結するため、あらかじめ契約条件を細かく定めた『約款(規約も同じです)』が用いられることが増加し、ビジネスにおいても約款による取引は当たり前になりつつあります。
しかし、取引の相手方が約款をよく読まないで取引をしたところ、後にトラブルになり、約款の内容に合意していたかどうかで紛争になることが少なくありません。
そこで、改正民法に『定型約款』の規定が新設され、2020年4月1日に施行されることになりました。 
今回は、『定型約款』のポイントをご説明します。
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1.定型約款の定義 

改正民法では、定型約款に関する以下の用語が定義されています(548条の2第1項)。 

『定型取引』 
(1)ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、
(2)その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの。 

『定型約款』 
定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体。


 2.定型約款のみなし合意

(1)定型約款を契約の内容とする旨の合意をしていた、または(2)定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合、定型取引を行うことの合意をした者は、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなされます(548条の2第1項)。
従来は、約款の個別の条項について実際に合意した場合に、初めて当該約款について契約が成立すると解釈されていました。
しかし、改正民法では、上記条件をみたせば、個別の条項の合意が擬制される(合意したとみなされる)ことになりました。
もっとも、上記条件をみたした場合であっても、著しく相手方に不利な個別の条項についての合意が擬制されるとするのは相手方に酷です。
そこで、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる個別の条項については、合意をしなかったものと擬制されることになりました(同条2項)。


 3.定型約款の内容の表示 

定型取引を行っている、またはこれから行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前か後の相当の期間内に、相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければなりません(548条の3第1項)。
この相手方からの請求を拒んだときは、個別条項のみなし合意が認められません(同条2項)。 
ただし、すでに定型約款を記載した書面の交付又は電磁的記録の提供を行えば、改めて内容を表示する必要はありません(同条1項但書)。 


 4.定型約款の変更 

定型約款を作成し、相手方と個別条項についての合意が成立した後、以下のいずれかの実体要件と、手続要件を満たせば、個別に相手方と合意することなく定型約款による契約内容を変更することができます(548条の4第1項)。

実体要件(1) 
定型約款の変更が『相手方の一般の利益に適合する』場合(同条1項1号)。

実体要件(2) 
定型約款の変更が以下の要件をみたす場合(同項2号)。 
(1)契約をした目的に反しないこと 
(2)以下の事情に照らして変更が合理的であること  
・変更の必要性  
・変更後の内容の相当性 
・548条の4により定型約款を変更することがある旨を定型約款に定めておくこと  
・その他の変更に係る事情 手続要件 変更の効力発生時期を定め、かつ、(1)変更する旨、(2)内容、(3)効力発生時期を、インターネットその他適切な方法により周知させること(同条2項)。
なお、実体要件(2)により変更する場合には、変更の効力発生時期までに周知手続を取る必要があります(同条3項)。 

以上の通り、改正民法の定型約款のルールには抽象的な要件が多く、そのルールに即した約款を準備するにはケースバイケースの対応が必要です。
早めに定型約款の準備を始めることをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2019年5月現在の法令・情報等に基づいています。