森会計事務所

求人の年齢制限は原則禁止……でも例外は認められる?

19.05.07
ビジネス【労働法】
dummy
「社内の平均年齢が高いので、若い人に来てほしい」 
「体力が必要な仕事なので、なるべく若い人を採用したい」 
こういった理由で、求人募集に年齢制限を設けたいと思う場合があると思います。 
しかしそれは、原則として禁止されています。 
では、どうして問題なのでしょうか?
また、例外が認められることはないのでしょうか? 
今回は、求人募集の年齢制限についてご説明します。
dummy
非合理的な理由で採用を見送られないために 

雇用対策法では、労働者の募集および採用について「年齢にかかわりなく、均等な機会を与えなければならない」と規定されていて、求人の際、年齢制限を設けて人材を募ることは、原則として禁止されています。 
それは、「能力や経験ではなく、年齢だけを理由に採用を見送るのは合理的ではない」という理由によるもので、求職者が非合理的な理由で採用を見送られないように、また応募の間口が広くなるように定められています。 
募集要項に「40歳以下」という記載をしたり、あるいは、求人票では「年齢不問」としておきながら、書類選考や面接で年齢を理由に採用・不採用を決定したりする行為は、いずれも法律違反となりますので、ご注意ください。 

ただし、違反したからといっても、特別な罰則があるわけではありません。 
行政から指導勧告を受けることはありますが、これも必ず行われるとは限りません。 
とはいえ、このような勧告を受けると、会社のイメージはダウンしてしまいます。 
優秀な人材を求めて求人募集したはずが、求人の仕方が原因で人材不足になってしまっては本末転倒です。 
こうした事態を招かないためにも、求人募集の記載には注意が必要です。 


例外として、年齢制限が設けられるケースも 

とはいえ、職種によっては、若さや体力がないと続かないものがあります。 
また、仕事内容や雇用形態によっては、年齢制限がないと支障をきたす場合もあります。 
そのため、次のような理由があれば、求人募集で年齢を制限してもよいとされています。 

(1)未経験の若い人を採用する場合 
職種によっては、専門的な知識が必要な場合があります。 
こうしたケースで未経験の年配者を採用すると、一人前に育てるまでに時間がかかるため、年齢制限を設けることが認められています。 

(2)社内の従業員の平均年齢に偏りがある場合 
社内に若い人が少なく、年配の人が多い場合、定年退職により従業員が一度に大勢減ることがあります。 
こうした場合には、平均年齢の偏りを解消することを目的として、年齢制限を設けることが認められています。 

(3)提供する商品・サービスと年齢が深く関係している場合 
若年層向けの商品・サービスを提供している会社では、仕事内容と年齢が深く関わっています。 
そのため、求人募集の年齢制限には合理性があると判断され、例外として認められます。 

(4)仕事上、筋力や視力の維持などが必要な場合 
力仕事や精密な作業の多い職種には、一定以上の筋力や視力の維持が必要となります。 
これらの能力は加齢によって低下するとみなされ、年齢制限を設けることが認められます。 


年齢条件だけにとらわれない総合的な判断を 

会社にとって人材は財産そのものであり、人材の確保は企業の存続を左右する重要な問題です。 
「できることなら若い人に来てもらって、長く働いて欲しい」という気持ちはもっともです。 
だからといって、先ほど述べたような例外にあてはまらない理由で、求人募集に年齢制限を設けてはいけません。 
また、仕事の適性は年齢だけで判断できるものではなく、総合的に判断するべきものといえます。 
年齢だけで線引きしてしまい、せっかく応募してきた貴重な人材を逃してしまうこともあります。 
それは会社にとって大きなマイナスとなり、成長を足止めしてしまうことにもなりかねません。 
募集要項を作成する際には、“若い人材”にこだわり過ぎず、法律的に問題のない内容で掲載しましょう。 


※本記事の記載内容は、2019年5月現在の法令・情報等に基づいています。