森会計事務所

聞きなれない『制約社員制度』の企業にとってメリットは?

14.05.18
ビジネス【人的資源】
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「異動」という言葉には、
人生の悲喜こもごもが含まれていて
人気ドラマの舞台になるほどです。
なぜでしょうか。

それはこれまで、
人事異動が昔の兵役の召集令状のように
絶対の権限を持っていたからです。

それに従う代償はもちろん、
生涯にわたる雇用保障でした。
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企業成長のための人的資源熟考

この点が、海外の場合と違うところでしょう。
つまり海外では、
本人の希望や納得というのが普通、前提だからです。
でなければ従業員は辞めていくでしょうから。

ところが日本でも、生活水準が向上し、
男女の役割や介護や育児の事情が変わると、
人事異動にも影響を与えるようになりました。

もちろん以前から、異動といっても、
第一に現在の仕事の期間があまり長すぎないよう、
第二に直属上司の意見(内諾)を聞き、
そして第三に本人の希望を考慮するというのが常でした。

そしてこの「本人の希望」を前面に掲げる近年の工夫が、
「自己申告異動制度」や「社内公募制度」でした。

ところで人事異動には、誰が見てもなるほど、
というような納得性が大切です。
これは本人はもちろん、
周囲や社内に対しての説得性も必要です。

ところが個人的事情は千差万別であり、
数量化も分類もし難いものです。
それゆえ、正社員か非正社員か。
さらには、正社員の中にも区分を設け、
制約社員というような中間的なカテゴリを設けました。

このような方策が生まれた背景は何でしょうか。
それは、企業が従業員の雇用や育成や活用に
責任を持ちきれなくなったからです。
企業自体の長期ビジョンが描けないのに、
雇用まで責任をもてるはずがありません。

これまでの組織主導の人材育成が、
方向転換の時を迎えているのです。
人事異動について、
制度的に本人の希望を取り入れるという制約社員制度は、
その突破口の一つと考えるべきでしょう。


次回の「企業成長のための人的資源熟考」は
「制約社員をどうやって戦力化していくか?」
をテーマにお届けいたします。


[プロフィール]
佐野 陽子(さの・ようこ)
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。

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