森会計事務所

幅広い客層の獲得にも効果的!『重複開設』の条件と注意点

26.09.01
業種別【美容業】
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美容室と理容室を一つの店舗、同一の空間で営業する『重複開設』が増えています。
以前は認められていなかった重複開設ですが、2016年の規制緩和によって、一定の条件をクリアすれば開設が可能になりました。
これにより、たとえば、夫婦でダブルライセンスを取得して一緒に店舗を開業するなど、経営の選択肢が広がりました。
異なる二つの業態を組み合わせることで、幅広い客層の獲得につなげることができる一方、開業するにあたっては、乗り越えなければならないハードルもあります。
重複開設に必要な手続きや注意点などを把握しておきましょう。

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美容室と理容室の違いをあらためておさらい

美容室と理容室は適用される法律や必要な免許、提供できるサービスの内容が異なります。
美容室は美容師法に基づいて運営されており、パーマネントウエーブ、結髪、化粧などの方法により、容姿を美しくすることを本来の目的としています。
一方、理容室は理容師法に基づいて運営されており、頭髪の刈込、顔そりなどの方法により、容姿を整えることを本来の目的としています。

提供できるサービスの代表的な違いの1つは、カミソリを使った顔そり、いわゆるシェービングの可否です。
理容師はカミソリを使って顔全体を剃ることが法的に認められていますが、美容師はメイクアップに付随する軽い産毛剃り程度しか行うことができません。

こうしたサービス内容の違いから、主なターゲット層も異なります。
理容室は、定期的な身だしなみとしてシェービングを求めたり、きっちりとした短い刈り上げを好んだりする40代以上の男性客がコアターゲットになる傾向があります。
一方、美容室では、ヘアスタイル全体のデザインやカラーリング、パーマなどを楽しみたい女性、特にトレンドに敏感なオフィスワーカーや主婦層がメインの顧客層となります。
理容室と美容室が得意とする技術や、顧客のニーズに違いがあることを理解しておきましょう。

このように異なる強みを持つ理容室と美容室ですが、かつては双方を同一の空間につくることが認められていませんでした。
しかし、ニーズの高まりに伴い、2016年には理容師法施行規則と美容師法施行規則の一部が改正され、一定の要件を満たすことで、理容所と美容所を完全に仕切ることなく同一の場所で開設できるようになりました。
このルールの見直しによって、夫婦での開業やダブルライセンスを活かした自由な店舗づくりができるようになったのです。

幅広い客層の獲得と他店との差別化になる

重複開設のメリットは、理容と美容の強みを掛け合わせたサービスが提供でき、幅広い客層に利用してもらえる点にあります。
理容室を好む男性客と美容室を好む女性客、それぞれのニーズを一つの店舗で満たすことができるため、夫婦や家族が一緒に通える店づくりが可能になります。

さらに、他店との差別化にもつながります。
厚生労働省の発表によると、2024年度末時点の美容室数が27万7,752件だったのに対し、理容美容重複施設は381件にとどまっています。
2022年度末時点では267件だったので、年々増加はしているものの、やはり理容と美容のサービスを仕切りのない空間で同時に提供できる店舗は希少です。
地域で「家族全員が通える店」という独自の立ち位置を築けることは、大きなメリットといえるのではないでしょうか。

店舗基準から資格まで、重複開設の条件

メリットの多い重複開設ですが、決してハードルは低くありません。
まず設備面においては、理容所と美容所の双方で求められる衛生上の措置を満たす必要があります。
消毒のための設備や換気、採光など、それぞれの法律で定められた基準に適合した店舗設計が必要です。
店内に設置できる椅子の台数については、原則として理容所の基準が適用されます。

手続きの面では、一つの店舗について、理容所と美容所それぞれの開設届を保健所へ提出する必要があります。
設計の早い段階から、管轄の保健所と十分に相談しながら進めるようにしましょう。

また、同一空間での営業が認められる条件として、「理容行為及び美容行為を行う者が、理容師及び美容師の双方の資格を有する者のみからなる施設であること」と規定されています。
つまり、店で施術を担当するすべてのスタッフが理容師免許と美容師免許の両方を持っている、いわゆるダブルライセンス保持者でなければならないということです。
たとえば、夫が理容師免許のみ、妻が美容師免許のみを持っている状態では、同じ空間で施術を行うことはできません。
夫婦で仕切りのない重複開設の店舗を運営したい場合は、夫が美容師免許を、妻が理容師免許を追加で取得し、二人とも両方の資格を持つ必要があります。
制度の変更により、すでにいずれか一方の資格を持っていればもう一方を取得する際の修業期間が短縮されるようになりましたが、それでも一定の時間と労力がかかります。

このように満たすべき条件がいくつかある重複開設ですが、幅広い年齢層のお客を獲得できるチャンスでもあります。
これから開業を考えている理容師や美容師、すでに片方の資格を持っているオーナーにとっては、挑戦する価値のある店舗形態といえるでしょう。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。