森会計事務所

養育費の支払義務も強化! 離婚後の子の養育に関する新ルール

26.05.26
ビジネス【法律豆知識】
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「請求しても、どうせ払ってもらえないだろう」といった思いから、子どもの成長に欠かせないはずの養育費をあきらめてしまうケースが少なくありません。
これまで日本では、離婚後の養育費の未払いが深刻な社会問題となってきました。
養育費を受け取れている母子世帯は、わずか3割弱にとどまっているというデータもあります。
2024年5月に成立した「改正民法」が2026年4月1日から施行され、親権や養育費に関するルールが大きく変わりました。
養育費の支払義務の強化など、離婚後も子どもを安心して育てるための新ルールについて、理解しておきましょう。

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問題化するひとり親世帯の子どもの貧困率

現在の日本において、ひとり親世帯で暮らす子どもの貧困率は2021年時点で44.5%に達しており、OECD(経済協力開発機構)加盟国のなかでも最悪の水準にあります。
その背景にあるのが、養育費の不払い問題と言われています。

厚生労働省の調査によると、母子世帯のうち養育費の支払いを継続して受けているのは28.1%、父子世帯に至ってはわずか8.7%にとどまっています。
さらに深刻なのは、離婚時に養育費の取り決め自体をしていない世帯が半数を超えているということです。
母子世帯の母が養育費の取り決めをしていない理由としては、「別れる相手と関わりたくない」「相手に支払う能力がないと思った」「相手に支払う意思がないと思った」といったものが多く、結果として子どもの生活基盤が損なわれているのが実態といえます。

こうした課題を解決するため、2024年5月に改正民法が成立しました。
この改正の最大の目的は、父母が離婚した後であっても「子どもの利益」を最優先に確保することにあります。

新ルールでは、子どもを養育する親の責務がより具体的に定義され、親権や養育費、さらには離れて暮らす親との親子交流(面会交流)のあり方が見直されました。
2026年4月1日から施行され、養育費に対する法的な強制力が大きく変わっています。

改正により養育費の支払義務が強化

改正による大きな変更点として、父母は婚姻関係や親権の有無にかかわらず、子どもを養育する重い責務を負うことが法律に明記されます。

これまでは「親権がないから関係ない」「離婚したからもう家族ではない」といった理屈で養育費の支払いを免れようとするケースもありましたが、改正後は親である以上、子どもが自立するまでの成長を支える義務があることが明確な指針となります。
これにより、養育費の支払いは単なる金銭の授受ではなく、親としての最低限の責任であるという認識が法的に裏付けられることになります。

その具体的な仕組みとして、まず「法定養育費制度」が新設されます。
この制度は、離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、暫定的に一定額の養育費を請求できるようになるという仕組みです。
現在の暫定額は子ども一人あたり月2万円で、この暫定的な養育費が支払われない場合は、相手の財産などの差押え手続を申請することができます。
これにより、「話し合いがまとまらないから1円ももらえない」という最悪の事態を防ぐことができます。

ただし、この制度はあくまで最低限の支払いを確保するための暫定的な措置です。
いずれは、父母の協議や家庭裁判所の手続などによって、各自の収入を踏まえた適正な養育費の額を決める必要があります。

また、離婚時に養育費の取り決めをしていても、さまざまな理由で養育費が支払われないケースがあります。
その場合、状況によっては相手の財産を差し押さえるという選択肢もありますが、これまでは公正証書や裁判所の調書といった「執行力のある公的な書類」を用意しなければなりませんでした。
しかし、改正後は、養育費の合意があれば「先取特権」が認められるようになり、公正証書などがなくても、一定の裁判所の手続を経て、差押えの手続に移行しやすくなります。

さらに、家庭裁判所の権限も強化されます。
相手が収入を隠している疑いがある場合、裁判所が勤務先などに収入情報の開示を命じることができるようになります。
また、民事裁判所への一度の手続で、財産の調査から差押えまでを一括して申請できる「ワンストップ化」も図られ、これまで泣き寝入りしていた親にとって大きな後押しとなるでしょう。

親権や親子交流のルールなども見直される

改正によって、親権のあり方も変わります。
これまでの日本の法律では、離婚後は父母のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」しか認められていませんでした。
しかし、施行後は、父母が合意すれば離婚後も双方が親権を持つ「共同親権」を選ぶことが可能になります。
もちろん、虐待のおそれがある場合や、どうしても意見が合わない場合などは、従来通り「単独親権」にすることもできます。
子どもの教育方針や医療行為について、離婚後も両親が相談して決めていくスタイルが選択肢に加わることで、父親・母親双方が子育てに主体的に関わり続ける土壌が整えられることになります。

ほかにも、安心・安全な親子交流の実現に向けたルールや、財産分与の請求ができる期間の延長(2年から5年へ)、養子縁組に関する見直しなど、多岐にわたる変更が行われています。
これらの新ルールを正しく理解しておくことは、大切な子どもの未来を守ることにつながります。
離婚する予定などなかったとしても、万一に備えて、新しいルールの内容を把握しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年5月現在の法令・情報等に基づいています。