【来年4月から】60時間超の時間外労働に対し、割増率が変わります
今回は、中小企業が来年4月から行わないといけない対応について解説いたします。( ※この60時間には法定休日に出勤した時間はカウントされません)
● 法改正の背景
現在大企業に関しては、長時間労働抑制のため1か月について60時間を超える時間外労働について割増賃金率を5割以上の率に引き上げとなっています(労働基準法第37条)。
しかしながら、経営体力が必ずしも強くない中小企業においては、 時間外労働抑制のための速やかな対応が困難であり、やむを得ず時間外労働を行わせた場合の経済的負担も大きいものです。
このため、労働基準法第138条において同条に規定する中小事業主の事業については、当分の間、法定割増賃金率の引上げの適用を猶予することとされていましたが、2018年の労働基準法改正により猶予措置が廃止されることになりました。それにより、中小企業も1か月60時間を超える時間外労働について、割増賃金率が2割5分以上から5割以上の率に引き上げとなります。
● 対応方法
それでは、時間外労働が60時間を超えてしまうことへの対応としてはどうしたらよいのでしょうか。対応としては、以下の2つの方法が考えられます。
① 割増賃金率を引き上げる
時間外労働が60時間を超えた分に対して、50%以上の割増賃金率による割増賃金を対象者に支払う
具体的には
● 時給単価が1,600円の人が80時間残業をした場合 ●
<2023年3月31日まで> 1,600×1.25×80=160,000円
<2023年4月 1日から> (1,600×1.25×60)+(1,600×1.5×20)=168,000円
このように同じ時間働いたとしても、引き上げ前後で8,000円の差が生じてきます。
② 代替休暇制度を付与する
月60時間を超えた時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、引き上げ分の割増賃金を支払う代わりに、有休の代替休暇を与える
この場合は労使協定が必要となります。また、労働者に代替休暇制度を使わせることを事業主から強制できず、代替休暇を使うかどうかは労働者に委ねられます。ほかにも、与える代替休暇時間は60時間を超えた部分(上記①の例で言えば20時間)ではないことに注意が必要となります。
具体的には
代替休暇の時間数=(1ヶ月の時間外労働時間数-60)×換算率
<換算率の計算式>
労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率(50%以上)-労働者が代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率(25%以上)①の例で考えてみると
<換算率>
50%-25%=25%
<代替休暇の時間数>
(80-60)×25%=5
よって5時間の代替休暇を与えれば良いということになります。
ただし、この代替休暇は下記の通り、少し制約が多いのが難点ではあります。
・60時間を超えた月の末日の翌月から2か月以内に与えないといけない
・取得単位が1日もしくは半日である
※代替休暇として与える時間数が、1日または半日に満たない場合は?※
労使協定で、端数として出てきた時間数に他の有給休暇を合わせて取得することを認めていた場合は、 代替休暇と他の有給休暇を合わせて半日または1日の単位として与えることができます。
● 最後に
2023年4月1日までまだ少し時間はありますが、今からでも各個人の現在の労働時間が適正かを把握することが重要です。特定の従業員にのみに残業が偏っている場合には原因を探し出し、可能な部分は他の従業員に作業を振り分けるなどして平準化していくことで、少しでも60時間を超えることのないように対応することが必要になってきます。
また、業務効率化が期待できる機械設備の導入を検討されてもいいかもしれません。現在「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」という助成金があり、その中に一定の条件はありますが「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」というのがあり、一定の成果目標を達成すれば購入に対しての助成金が出る可能性がありますので、こちらも併せてご検討されても良いかもしれません。
ご不明な点がございましたら、かぜよみまでお気軽にご相談ください。
※本記事の記載内容は、2022年5月現在の法令・情報等に基づいています。
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