社会保険労務士法人 かぜよみ

令和4年4月施行の年金制度改正法 老齢年金はどうなる?

21.12.27
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「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が令和2年6月5日に公布され、そのうち令和4年4月1日より老齢年金受給にかかわる3点が施行に至ります。何がどう変わるのでしょうか。法改正から、将来の年金制度を紐解いてみましょう。
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●はじめに

 「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が令和2年6月5日に公布され、そのうち令和4年4月1日より老齢年金受給にかかわる下記3点が施行に至ります。

●改正の内容

① 在職定時改定

現行制度では、65歳以上の方が社会保険に加入しながら働いて、厚生年金保険料を納め続けても、“退職をする”または“70歳に達する”までは、その間、老齢厚生年金へ反映(増額)されることはありませんでした。

今回の在職定時改定の導入により毎年、その年の8月までに納めた保険料に応じて同年10月(12月振込)分の年金から増額されることとなります。

働いた成果(納めた保険料)が、よりダイレクトに年金へ反映されることとなるのです。

② 60歳前半の在職老齢年金の支給停止基準額の緩和

老齢厚生年金は原則、65歳からの支給であるところ、男性であれば昭和36年4月1日以前に、女性であれば昭和41年4月1日以前に生まれた方で一定要件を満たせば、60歳前半から特別支給の老齢厚生年金が支給されます(例えば昭和34年4月2日生まれの男性であれば64歳から特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分が支給)。

こうした60歳前半(65歳未満)の老齢厚生年金を、働きながら(厚生年金に加入しながら)受給しようとすると、一定の調整がかかり、年金の一部又は全部が支給停止に至る場合があります。

具体的には、特別支給の老齢厚生年金の1ヶ月分とその月の標準報酬月額、さらにその月以前1年間に支給された賞与額を12で割った数字を合算した金額が28万円を超過すると、その大小に応じて年金が支給停止されることとなっています。頑張って働けば働くほど、年金支給停止の可能性が高まるといった、おかしな制度です。

とはいえ、この28万円の基準が令和4年4月支給分の年金から47万円(※年度ごとに多少変動する可能性あり)へ引き上げられます。

これまでは、報酬額等の兼ね合いにより全額支給停止になっていた方も、いくらかでも受給できるようになるかもしれません。年金には請求時効5年という制限があるため、これまでは支給停止により受給を諦めていた方も、とりあえず裁定請求をしてみることをおすすめいたします。

 

③ 繰り下げ上限年齢の引き上げ

老齢年金は65歳からの受給開始が原則であることは、前述のとおりですが、選択によってはその受給をあえて遅らせることができます。つまり、老齢年金の繰り下げです。

繰り下げることによる変化は、その繰り下げる月数によって、年金額が割増となることで、1ヶ月繰り下げる毎に0.7%ずつ増額されます(下限は12ヶ月)。

現行では、最大繰り下げ年齢は70歳=5年の繰り下げです。つまり70歳まで繰り下げて受給開始すれば「0.7%×60月」=42%割増された年金を生涯受給し続けることができます。

この最大繰り下げ年齢が75歳まで延伸されますので、10年繰り下げて84%割増の年金を75歳から受給するという選択も可能とされます(※ただし、令和4年3月31日時点で70歳未満の方が対象)。

人の命、いつどうなるか分からないことからすれば、いくら増額されるとはいえ、その選択は大変悩ましいところです。

ちなみに、女性の平均寿命である87歳までの受給を念頭とすると71歳まで(6年)繰り下げることで最も効率的に(多く)受給できる計算となります(在職定時改定や退職時改定等は考慮せず)。

 ●最後に

超高齢化社会を迎えて久しく、間もなく65歳以上の割合が30%に達しようとしている日本において、社会保障の給付と負担のアンバランスは今後より一層強まっていくはずです。

年金についても、それに漏れず、今回の改正も国としてなるべく長く働いて給与所得で生計を立ててもらえるように促していることは明らかです。③については選択の幅が広がるとはいえ、言い方を変えると自己責任による幅が広がることも意味しており、今後の世情に応じて、年金制度のさらなる改正もありうることを考えると、年金をリタイア後のメインの生計の糧として考えることは難しい時代になっていきそうです。

※本記事の記載内容は、2022年1月現在の法令・情報等に基づいています。

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