司法書士法人小笠原合同事務所

司法書士の日常:権利証の重み

23.04.09
事務所案内
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「司法書士」と聞いて、なにをイメージされるでしょうか?
正直、いまいちピンとこないという方が大半だと思います。
そんな司法書士を少しでも身近に感じてもらえるような、日々の業務で体験したエピソードをご紹介。
今回は、登記に必要な「権利証(登記済証)」についてのお話しです。

権利証に込められた想い

日本の優勝で幕を閉じた野球のWBCで盛り上がり、さらに桜も満開となってすっかり春本番。

それどころか今年は例年以上に暖かく、春を通り越して初夏の陽気を思わせる日々が続いています。

毎年3、4月は人の動きが激しく、取引件数も増え通常より多くのお客様と出会う日々の中で、先日、90歳を超えた女性の自宅を訪問する機会がありました。

その方は、戦後からずっと故郷の徳島で暮らしてきましたが、高齢の一人暮らしということもあり、ご子息のいる他県へ引っ越すために自宅を売却するということで、その登記手続のために訪問しました。

物件や売却意思の確認、必要書類への署名、捺印等を進めていく中で、権利証を法務局へ提出するために預かりたい旨を伝えたところ「この権利証は返ってきますか」とのお尋ねがありました。

もちろん返ってきますと答えたところ「良かった」とホッとした表情を見せられました。

念のため、売却後はこの権利証は無効になる旨を説明しましたが、それは承知とのこと。

ただ、家族との思い出が詰まった自宅の「証(あかし)」として大切に保管しておきたいということでした。

数々の取引に立ち会う中で、自宅売却後の権利証の扱いをどうするかを毎回確認していますが「もういらないのでそちらで処理をお願いします」と言われることも多いためか、登記完了後の権利証への意識が薄かったのではないかと気づかされました。

権利証とは、登記申請のために必要な書類であることは当然ですが、そこには売主の思いが詰まっており、たとえ登記が完了して効力がなくなったとしても、その権利証に積み重ねられた思い出は、色あせることなくずっと続いていくものであると改めて教えてもらった気がします。

家族の思い出(イメージ)
※画像はイメージです