過去最高を更新!いまさら聞けない『相続放棄』
「相続放棄」という言葉を、一度は耳にしたことがある方がほとんどではないでしょうか。
ここ数年増え続けている「相続放棄」ですが、令和5年度はついに28万件を超え過去最高を記録しています。
(令和5年度司法統計年報による)
今回は、他人ごとではなくなってきている、相続時の選択肢「相続放棄」についてお伝えします。
それって本当に『相続放棄』?
相続のご相談をお受けしていると、過去の相続において「相続放棄をした」とおっしゃる方がたまにいます。
詳しくお話しを聞いていくと、「父が亡くなった時、家族と話して自分の相続分の財産は全て母に」と言う場合がほとんど。
確かに、自分の相続分(法定相続分)を受け取らない(放棄)ことを、「相続放棄」と呼ぶのは厳密には間違いではありません。
ただ、令和5年度に28万件を超えた「相続放棄」とは別物です。
頭に「?」が浮かんでいる方もいると思いますので、ここで言う「相続放棄」について説明していきます。
家庭裁判所に申し立てる『相続放棄』
「相続放棄」とは、亡くなられた方(被相続人)の財産を一切相続したくない時に行う手続きです。
「相続放棄」を行うと、「初めから相続人では無かった」ものとみなされる制度。
ちなみに、財産とは預貯金などプラスの財産だけではなく、借金などマイナスの財産も含まれます。
では、どのような手続きが必要かと言うと……。
①自分が相続人となったことを知った日から3か月以内に
②亡くなった人の最後の住所つを管轄する家庭裁判所に
③相続放棄の申述(申し立て)を行う
必要な書類などを揃え家庭裁判所に「相続放棄の申述(申し立て)」を行うことで、「相続放棄」を行うことができます。
この家庭裁判所に申し立てを行う「相続放棄」ですが、最初の事例のようにご家族で話し合って財産を受け取らないような場合には、必ずしも必要な手続きではありません。
なぜなら、遺産分割協議で相続人が全員納得していれば、相続の割合は自由に決めることが可能だからです。
「相続放棄」が行われる主な理由には、主に以下のようなものがあげられます。
●プラスの財産より、マイナスの財産が多い
●相続したくない財産(不動産など)がある
●亡くなった方と疎遠で、関わり合いになりたくない
●特定の人に相続をさせたい
●他の相続人と疎遠で、やり取りをしたくない など……
理由は様々ですが、以上のような理由で相続放棄をされるというお話しをお聞きします。
「相続放棄」のデメリットや注意事項
相続放棄をすることで解決される問題もありますが、実はデメリットや注意が必要な点も……。
具体的には、以下のような点に注意が必要です。
●不要な財産だけを放棄することはできない
一切の財産(プラスの財産・マイナスの財産)を相続しない手続きが「相続放棄」のため、一部の財産だけを放棄することはできません。
相続したいけどもしかしたらマイナスの財産があるかも、というような場合は「限定承認」という制度もあります。
(ただし、こちらは相続人全員で手続きをする必要があります)
●「相続放棄」ができない場合がある
自分が相続人であることを知ってから3か月を過ぎている場合や、既に財産の一部を処分している場合など相続放棄ができない場合があります。
ただ正当な理由がある場合、3か月を過ぎていても相続放棄ができる場合も。
●相続財産の管理義務が発生する場合がある
相続放棄をした際によく問題になる「財産の管理義務」。
その中でも特に不動産の管理義務について問題になることが多いのですが、法改正が行われ、亡くなられた方と遠方に住んでいたり同居をしていない場合、その不動産の管理義務を免れるようになりました。
しかしながら、亡くなられた方と同居をしていたような場合などは、管理義務が変わらず発生することになります。
例えば、家が老朽化して危険な場合などに、対策を行うなど。
不動産を処分することはできないのに、対策の費用が必要になるなど注意が必要になります。
●特定の相続人に相続できない場合がある
お父様が亡くなられ、相続人がお母様とお子様1人。
このような場合に、お母様に全財産を相続させるため相続放棄をしても希望通りの結果にならないことがあります。
配偶者は常に相続人となりますが、それ以外の相続人には順位があり1位の子どもがいない場合は2位の両親(祖父母)、2位の両親もいない場合は3位の兄弟姉妹が相続人となるからです。
また、よくある相談で親の財産を自分の子ども(亡くなられた方の孫)に相続させたい場合、自分が相続放棄をすれば孫へ相続できるのではと思われる方もいらっしゃいます。
相続放棄をした人は、「元々相続人では無かったとみなされる」ので代襲相続は発生せず、お孫さんが相続人になることはありません。
●相続放棄をしても他の相続人へ通知されることはない
相続放棄を行っても、家庭裁判所から他の相続人へ通知が行くことなどは特にありません。
そのため、相続放棄をすることで本来相続人では無い方が、知らず知らずのうちに相続人になってしまうこともあります。
例えば、負債があるな場合などに配偶者と子どもが全員相続放棄を行った場合、本来相続人では無い両親や兄弟姉妹が相続人になど。
他の相続人へ相続放棄を伝える義務はありませんが、疎遠ではない場合など連絡をするかどうかも考える必要あるでしょう。
相続放棄に悩んだら専門家に相談を!
相続したいけど不動産の管理ができないから、関わり合いになりたくないから、相続放棄できる期限を過ぎてしまったなど、相続放棄について悩まれることもあると思います。
そのような場合、専門家へ一度相談されることをおすすめいたします。
例えば当事務所では、相続放棄の申述のお手伝いだけではなく、例えば不動産の売却のお手伝いの提案、期限が過ぎてしまった場合の対応、相続放棄をする際の注意事項や他の相続人の方との連携などもご提案させていただくことも可能です。
まずは一人で悩まず、ぜひ当事務所の無料相談の利用もご検討ください。
【参照・関連サイト】
「相続放棄の申述」について詳しくは、裁判所ホームページ等でご確認ください。
・相続の放棄の申述(裁判所)
※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。