「遅刻の罰にトイレ掃除」は違法?
当社は飲食店です。従業員が遅刻すると、他の従業員やお客様に迷惑がかかります。
なので、遅刻の罰としてトイレ等の掃除当番を割り当てています。これは労働基準法上問題なのでしょうか。
賃金はそのまま支払うため「減給の制裁」には当たらないとは思うのですが、どのように考えればいいのですか?
なので、遅刻の罰としてトイレ等の掃除当番を割り当てています。これは労働基準法上問題なのでしょうか。
賃金はそのまま支払うため「減給の制裁」には当たらないとは思うのですが、どのように考えればいいのですか?
<懲戒規定に根拠が必要。苦痛伴う業務命令は無効>
多くの企業では、就業規則に服務規律の規定を設けています。労働基準法89条では就業規則の記載事項を定めていて、10号に「事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」があります。
例えば、以下の4点があります。
1.入退場に関する規律
2.遅刻、早退、欠勤、休暇の手続き
3.服装規定
4.職務専念規定
服務規律を維持するために、規律違反に対する制裁として懲戒処分を行うことがあります。減給もそのひとつです。
実際に労働しなかった時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば、賃金の計算方法に過ぎませんが、不就労時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば、その超える額につき労働基準法91条の「減給の制裁」に該当します(昭和63・3・14基発150号)。
裁判で、「日勤教育」と称して草むしりなどをさせられた労働者らが裁量権の逸脱であるとして損害賠償請求した事案があります。
判決では、いかなる教育を実施するかについて、基本的には会社の裁量的判断に委ねられ、その方策として日勤教育自体は何ら違法なものではなく、許されるとしました。
ただし、その期間は、月10万円の手当が支払われず、実質的な減給になることから、裁量を逸脱したものとしました(大阪高裁平成21・5・28など)。
懲戒処分を行うためには、その理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則上明記されていなければなりません。
仮に根拠規定があったとしても、懲戒が、労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効になります(労働契約法15条)。
遅刻に対してはまず注意等を行い、改善を求めるのが穏当でしょう。
飲食店であれば清潔保持という観点から、業務命令としてトイレ掃除を多めに割り当てることは考えられます。
裁判(最二小判平成5・6・11、国鉄鹿児島自動車営業所事件)では、かなりの肉体的、精神的苦痛を伴う作業を懲罰的に行わせることは、業務命令権の濫用で違法としたうえで、焦点となった「降灰除去作業」は、職場環境を整備するため必要な作業であり、作業内容は社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるとはいえず、労働契約上の義務の範囲内に含まれるとして違法ではないとしています。
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
安全スタッフ2015年3月1日号
多くの企業では、就業規則に服務規律の規定を設けています。労働基準法89条では就業規則の記載事項を定めていて、10号に「事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」があります。
例えば、以下の4点があります。
1.入退場に関する規律
2.遅刻、早退、欠勤、休暇の手続き
3.服装規定
4.職務専念規定
服務規律を維持するために、規律違反に対する制裁として懲戒処分を行うことがあります。減給もそのひとつです。
実際に労働しなかった時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば、賃金の計算方法に過ぎませんが、不就労時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば、その超える額につき労働基準法91条の「減給の制裁」に該当します(昭和63・3・14基発150号)。
裁判で、「日勤教育」と称して草むしりなどをさせられた労働者らが裁量権の逸脱であるとして損害賠償請求した事案があります。
判決では、いかなる教育を実施するかについて、基本的には会社の裁量的判断に委ねられ、その方策として日勤教育自体は何ら違法なものではなく、許されるとしました。
ただし、その期間は、月10万円の手当が支払われず、実質的な減給になることから、裁量を逸脱したものとしました(大阪高裁平成21・5・28など)。
懲戒処分を行うためには、その理由となる事由とこれに対する懲戒の種類・程度が就業規則上明記されていなければなりません。
仮に根拠規定があったとしても、懲戒が、労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効になります(労働契約法15条)。
遅刻に対してはまず注意等を行い、改善を求めるのが穏当でしょう。
飲食店であれば清潔保持という観点から、業務命令としてトイレ掃除を多めに割り当てることは考えられます。
裁判(最二小判平成5・6・11、国鉄鹿児島自動車営業所事件)では、かなりの肉体的、精神的苦痛を伴う作業を懲罰的に行わせることは、業務命令権の濫用で違法としたうえで、焦点となった「降灰除去作業」は、職場環境を整備するため必要な作業であり、作業内容は社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるとはいえず、労働契約上の義務の範囲内に含まれるとして違法ではないとしています。
現場で気になる労働法Q&A
【記事提供元】
安全スタッフ2015年3月1日号