『QSC+H』が重要! ホスピタリティを養うトレーニング方法とは
QSCは、『Quality(クオリティ)』『Service(サービス)』『Cleanliness(クレンリネス)』の頭文字を取った言葉で、人気の飲食店の多くはこのQSCが高いレベルに保たれています。
また、近年重視されている『Hospitality(ホスピタリティ)』の『H』を加えて、『QSC+H』と呼ばれることも増えてきました。
QSCに次ぐ第4の指標となるホスピタリティは、具体的にどのような意味なのか理解している人は少ないかもしれません。
飲食店におけるホスピタリティの重要性と、トレーニング方法を紹介します。
飲食店の『QSC』とホスピタリティの必要性
『QSC』は飲食店の基本であり、高いレベルで保たなければならない指標でもあります。
まず、『Quality(クオリティ)』とは、お客に提供するメニューの品質を意味します。
味付けや盛り付け、ボリュームや温度が適切で、常に同一の品質の物を提供できれば、お客の満足度は上がっていきます。
メニューの品質は、お客の満足度に直結します。
逆に、日によって味が変わってしまったり、同じメニューなのにボリュームに差異があったりすると、お客の満足度も下がってしまうでしょう。
次に、『Service(サービス)』とは、接客レベルのことを指します。
注文の取り方から、料理の運び方・提供の仕方、空いた食器の下げ方に会計まで、お客と直接関わるからこそ、飲食店のスタッフは接客の技術を常に磨いておく必要があります。
また、言葉遣いや態度、表情なども接客に関わる重要な要素の一つであり、お客と接していないときでも気を配らなければいけません。
接客レベルは、集客にも大きく影響する指標です。
最後の『Cleanliness(クレンリネス)』は、清潔感のことです。
衛生管理は飲食店の大前提であり、たとえクオリティやサービスのレベルが高くても、清潔ではない店にお客は足を運びません。
この3つの指標であるQSCは、清潔な空間でお客に心地よく飲食してもらうための基本です。
しかし、消費行動や食習慣、社会状況の変化などによって、飲食店の集客には、QSCだけではない指標が必要になってきました。
コロナ禍や軽減税率制度の導入による弁当や惣菜などの中食市場の拡大などにより、インバウンドによって復活の兆しが見えているものの、まだまだ外食産業は厳しい状況に置かれています。
こうしたなかで他店との差別化を図るには、QSCをベースとしながら『Hospitality(ホスピタリティ)』を高めて、全体的なお客の満足度を上げていかなければいけません。
ホスピタリティは、日本語で「思いやり」や「おもてなし」、「心配り」や「歓待」などと訳される言葉で、飲食店においては『お客に喜んでもらうための行動』を意味します。
ホスピタリティを高めるトレーニング
ホスピタリティは接客と似た概念ですが、接客が『必ず行わなければいけない行動』なのに対し、ホスピタリティは『絶対にしなければいけないものではないが、お客に喜んでもらうためには必要な行動』という違いがあります。
たとえば、お客から先に「お水をください」とオーダーされて、グラスに水を注ぐのが接客です。
一方、お客のグラスに水がなくなっているのを事前に察知して、呼ばれる前に「お水はいかがでしょうか?」とお声がけするのがホスピタリティです。
つまり、ホスピタリティとはお客に気を配り、自発的にお客のために行動することを意味します。
「子連れのお客が周囲に気を使わないで済む席を案内する」「寒がっているお客に風が当たらないよう冷房の角度を変える」「料理を食べ切れなかったお客に持ち帰り容器を用意する」などもすべて、お客のためのホスピタリティがある行動にあたります。
ただし、こうしたホスピタリティのある接客は、場を読む力や臨機応変に対応する力が必要となり、一朝一夕で身につくものではありません。
ホスピタリティを磨くには、スタッフが店員側とお客側に分かれて、実際にさまざまな場面を想定した疑似体験、いわゆる『ロールプレイングトレーニング』が効果的です。
たとえば「ラストオーダー直前にお客が来店された」「お客が飲み物をこぼしてしまった」「人気メニューが品切れになってしまった」など、いくつかの場面を再現し、実際に両方の立場を体験してみて、スタッフ全員で議論することがホスピタリティを高めることにつながります。
ホスピタリティのカギはお客の意図を汲んだサービスを提供したり、もしくはお客自身も気づいていなかった提案を行なったりするところにあります。
ロールプレイングトレーニングを重ねて、すべてのスタッフが自然にホスピタリティの高い接客ができるようにしておきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。