この秋、フリーランス新法施行! 企業が守るべきルールと注意点
この法律は「契約の明確化」「報酬の原則60日以内の支払い」「ハラスメント対策」などを含んでおり、フリーランスの就業環境の整備を目指すものです。
今回は、フリーランスに発注する事業者が取引にあたり気をつけるポイントを説明します。
フリーランスの働き方を守る新しい法律
『フリーランス新法』は、正式名称を『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)』といい、2023年4月28日に可決、同年5月12日に公布された後、2024年の秋頃までの施行が予定されています。
発注事業者とフリーランスの間の「業務委託」に係る事業者間取引が適用対象となり、取引の適正化ならびにフリーランスの就業環境の整備が目的です。
近年、働き方の多様化が進展するなか、フリーランスという働き方を選択する人が増えてきました。
特にデジタル化が進むにつれ、インターネット上で完結するサービスを介して仕事を請け負う『クラウドワーカー』や、なかでも主に単発の仕事を請け負う『ギグワーカー』といった、新しい働き方が普及しています。
そのため、フリーランスを含む多様な働き方を、それぞれのニーズに応じて柔軟に選択できる環境を整備することが重要となっています。
一方で、急速な働き方の多様化に制度面での整備が追いついていないという実態があります。
厚生労働省が設置した『フリーランス・トラブル110番』に寄せられた相談内容のうち、2023年は約3割が報酬不払い、支払遅延などのトラブルとなっており、報酬の支払い関係のトラブルが最も多いことが明らかになりました。
そのほか、書面等の不交付や条件・内容が不明確といった契約条件の明示やハラスメントなど就業環境に関する相談も寄せられています。
「個人」として業務委託を受けるフリーランスと、「組織」として業務委託を行う発注事業者との間には、交渉力やその前提となる情報収集力の格差が生じやすいため、「透明な契約条件」「報酬の遅延や未払い」「不当な契約解除」といった取引上でのトラブルが発生しやすいと考えられています。
今回施行される『フリーランス新法』では、こうした状況を改善し、フリーランスが安定的に働くことができる環境を整備することを目指しています。
新法の施行にあたり発注側が注意すべきこと
フリーランス新法は、フリーランスとして働く人々の権利を守り、発注者である事業者との間の健全な取引関係を構築するための重要なステップです。
発注事業者の要件により、フリーランスに対する義務が異なるため、事業者は新しい法律の要件を正しく理解し、適切な対応を行うことが重要です。
具体的には、フリーランスに業務委託する事業者が、(1)従業員を使用しているか否か、(2)継続的業務委託をするかどうかによって、義務項目が異なります。
発注事業者が従業員を使用していない場合(フリーランス含む)
・書面などによる取引条件の明示
発注事業者が従業員を使用している場合
・書面などによる取引条件の明示
・報酬支払期日の設定、期日内の支払い
・募集情報の的確表示
・ハラスメント対策に係る体制整備
発注事業者が従業員を使用している、かつ継続的業務委託をする場合
・書面などによる取引条件の明示
・報酬支払期日の設定、期日内の支払い
・禁止事項の設定(報酬の減額、成果物の受領拒否、不当な給付内容の変更ややり直しなど)
・募集情報の的確表示
・育児介護等と業務の両立に対する配慮
・ハラスメント対策に係る体制整備
・中途解除等の事前予告、理由開示
上記のうち、たとえば「ハラスメント対策に係る体制整備」は、発注事業者が別に雇用主として労働関係法令(男女雇用機会均等法等)に基づき講じることとされている従業員のハラスメント対策と同様の内容であり、フリーランスを対等な取引上のパートナーとしてみなすことを促す意図があると考えられます。
これらの義務項目に違反した場合、50万円以下の罰金に処せられる可能性があるため、フリーランスに発注している事業者は注意が必要です。
具体的な内容については施行までの間に定められる予定のため、最新情報を関係省庁のホームページなどで確認しましょう。
働き方が多様化しているこれからの時代、企業が業務を発注する先としてフリーランスが占める割合は増えてくることが予想されます。
発注側となる企業は、発注先であるフリーランスに対し、不当な扱いをすることがないよう注意しましょう。
※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。