『外来環』が廃止され医療安全対策と感染対策の2つの加算が新設
これにより外来環は廃止され、この2つが初診料および再診料での加算点数として新設されました。
医療安全対策や、新興感染症等の院内感染防止対策をはじめ、歯科医院を含めた医療機関はより高い水準で対策を講じていかなければなりません。
今回新設された医療安全対策加算と感染対策加算について、その内容を把握しておきましょう。
歯科外来診療医療安全対策加算とは
『歯科外来診療環境体制加算(外来環)』とは、患者が安心・安全に歯科医療が受けられるように、緊急時の安全対策や診療環境の整備などの取り組みを行なっている歯科医院を評価する加算です。
厚生労働省が定める施設基準を満たし、地方厚生局長などに届け出ることにより、初診料や再診料に加算することができました。
診療報酬の改定は2年に1度行われていますが、『令和6年度診療報酬改定』により、この外来環が見直されることとなり、医療安全対策加算と感染対策加算に再編されることになりました。
なお、令和6年度診療報酬改定の施行日は、従来の4月1日施行ではなく、6月1日から施行されています。
まず、医療安全対策加算は、歯科外来診療における医療安全対策についての体制を評価した点数です。
医療安全対策加算には「1」と「2」が設けられ、地域歯科診療支援病院は「2」で算定し、それ以外の歯科医院が「1」で算定することになります。
共通の施設基準として、「医療安全対策に係る研修受講」「医療安全管理者の配置」「緊急時の対応」「医療安全対策に係る体制整備」「医療安全対策に係る院内掲示」の項目があり、それ以外に「1」と「2」にそれぞれ定められた基準があります。
「1」であれば、共通の基準のほかに、医療安全の体制整備については「歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業に登録」か「インシデント等の報告・分析体制を整備」のいずれかを満たす必要があります。
人員体制についても「歯科医師が複数名」か「歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ1名以上」のいずれかを満たす必要があります。
一方、「2」に関しては、共通の基準のほかに「インシデント等の報告・分析体制を整備」が必須条件となっています。
人員体制については「歯科医師が複数名」か「歯科医師1名以上かつ歯科衛生士又は看護職員が1名以上」のいずれかを満たす必要があります。
令和6年3月31日時点で外来環の届け出を行っていた医療機関であれば、一部の項目について経過措置が設けられているので、確認しておきましょう。
歯科外来診療感染対策加算とは
感染対策加算は、院内感染を起こさないために、歯科医院の外来診療において、コロナやインフルエンザなどの感染症等の患者に対応可能な体制を評価した点数となります。
点数も通常の外来における感染対策を評価する「1」と「3」のほか、新興感染症等の発生時に対応可能な体制を評価する「2」と「4」に分かれています。
地域歯科診療支援病院は「3」と「4」で算定し、それ以外の歯科医院は「1」と「2」で算定します。
ここでは、「1」と「2」を中心に説明します。
「1」~「4」のすべてに共通する施設基準は、「歯科点数表の初診料の注1に係る施設基準」「院内感染管理者の配置」「院内感染防止対策に係る体制整備」です。
院内感染管理者とは、院内感染防止対策に係る研修を受けた人のことです。
ちなみに、歯科併設の病院などでは、歯科の外来診療部門に院内感染管理者を配置しなければいけません。
この共通の基準に加え、「1」は人員体制については「歯科医師が複数名」か「歯科医師1名以上かつ歯科衛生士又は研修受講の職員が1名以上」のいずれかを満たす必要があります。
「2」に関しては、共通の基準に加え、人員体制として「歯科医師が複数名」か「歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ1名以上」のいずれかを満たし、さらに、感染症等の発生時には、以下の4点をすべて満たさなければいけません。
・患者の診療体制
・事業継続計画策定
・医科医療機関との連携
・地域の歯科医療機関との連携(患者受入)
患者の診療体制とは、新興感染症等の患者や、感染の疑いがある患者に対して、歯科外来診療が可能な体制を確保していることを意味しています。
また、そうした患者に対して円滑な外来診療が実施できるように、他の医療機関との連携体制も重視されています。
これまで多くの歯科医院が届け出を行なっていた外来環が廃止され、新しい評価が新設されたことで、安全体制および新興感染症等における感染対策の状況によって、加算点数が算定できるようになります。
具体的な算定要件や点数、施設基準の届出様式などは、厚生労働省や各厚生局のホームページで確認しておきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。