機内の迷惑行為を厳しく禁止する『航空法』の規定とは?
これに伴い、乗客の迷惑行為に基づく航空機内のトラブル、いわゆる『機内トラブル』も増加傾向にあります。
国内外の移動手段として多くの人に利用されている航空機ですが、迷惑行為は航空の安全を脅かし、大勢の人命を危険に晒す行為にもなりかねません。
そのため、乗客の迷惑行為は航空法で厳しく禁止されています。
どのような行為が法に抵触し、罪に問われるのか、確認していきましょう。
航空機の中で行なってはいけない行為
航空機は、大人数が閉鎖された空間に長時間にわたって着席しなければいけないという特殊性から、トラブルが起きやすいといわれています。
しかし、そうしたストレスから来るものだとしても、航空機内の迷惑行為やマナー違反は、安全を阻害し、万が一の際に大きな事故につながる可能性があるので、絶対に行なってはいけません。
2004年1月15日には機内の迷惑行為についての禁止・処罰規定を定めた改正航空法が施行されました。
改正後の航空法第73条の3では、機内の迷惑行為を『安全阻害行為等』とし、乗客はもちろん、パイロットや客室乗務員なども含むすべての搭乗者に対し、以下の行為を禁止しています。
・航空機の安全を害する行為
・航空機内の搭乗者または財産に危害を及ぼす行為
・航空機内の秩序を乱す行為
・航空機内の規律に違反する行為
また、航空法の運用をさらに細かく定めた『航空法施行規則』では、以下のような具体的な行為を禁止しています。
(1)搭乗口や非常口の扉の開閉装置を勝手に操作すること
(2)トイレで喫煙すること
(3)乗務員の業務を妨げること
(4)使用制限がある状況で禁止された電子機器を使用すること
(5)指示に従わず座席ベルトを装着しないこと
(6)離着陸時に座席の背やテーブルなどを所定の位置に戻さないこと
(7)手荷物を脱出の妨げになる場所に放置すること
(8)救命胴衣などの非常用の機器をみだりに使用すること
もし、これらの安全阻害行為を行うとどうなるのでしょうか。
まずは客室乗務員から注意を受け、それでも止めない場合は、機長から該当の行為を行なってはならない旨の禁止命令が出されます。
禁止命令にも従わない場合は、ほかの客室乗務員や乗客と協力して、迷惑客に対し、拘束や降機、搭乗拒否といった強制措置を取ることになります。
場合によっては、出発空港への引き返しや、最寄りの空港への緊急着陸などが行われ、警察へ引き渡されることになります。
航空機内で迷惑行為を行なった場合の罰則
安全阻害行為を行なった乗客は、機長の禁止命令に従わなかった時点で航空法第150条に基づき、50万円以下の罰金が科せられる場合があります。
さらに、空港への引き返しや緊急着陸などが行われた場合には、航空会社が被った損害に対して、その費用を請求される可能性もあります。
海外の事例ではありますが、航空機内で乗客が暴れて空港に引き返したケースでは、航空会社がその乗客に約1,100万円の損害賠償請求を行なったこともありました。
また、安全阻害行為に該当しなくても、迷惑行為は別の法律で罰せられる可能性があるので、注意しなければいけません。
たとえば、客室乗務員やほかの乗客に対して暴力行為を働けば暴行罪や傷害罪が適用されますし、航空機内の設備を破壊した場合は、器物損壊罪などに問われる可能性があります。
暴言や威嚇なども軽犯罪や脅迫罪として処罰される場合があります。
近年は客室乗務員に対する盗撮も増えており、2023年に航空業界の労働組合が行なった「盗撮された経験」に関するアンケート調査では、約7割の客室乗務員が「ある」もしくは「断言できないがあると思う」と答えています。
盗撮は明確な迷惑行為であり、状況によっては、撮影罪が適用されることもあります。
撮影罪は、2023年7月13日に施行された通称『性的姿態撮影等処罰法』によって定められており、適用されれば3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処される場合があります。
航空機内では、使用禁止時間帯でのスマートフォンをはじめとする電子機器の使用など、誰もがうっかり禁止されている行為を行なってしまうかもしれません。
迷惑行為を行わないことはもちろんですが、もし意図せず行なってしまっていた場合には、速やかに客室乗務員の指示に従うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。