「お友だちと仲良しですね」はNG? 求められる『LGBTQ』対応
飲食店でもお客や従業員がLGBTQの当事者である可能性は高く、社会状況の変化のなかで、必要な対応が求められるようになりました。
性的マイノリティへの配慮を打ち出している店は、LGBTQのお客の来店動機になりますし、LGBTQの従業員も安心して働くことができます。
飲食店におけるLGBTQへの対応について、できることを考えていきましょう。
接客の際には先入観と偏見に要注意!
『LGBTQ』とは、レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)、クイア(Queer)やクエスチョニング(Questioning)の頭文字からなる性的マイノリティの総称です。
クイアはLGBTに当てはまらない性的マイノリティを包括する概念で、クエスチョニングは性的指向や性自認が定まらない人を指します。
日本のLGBTQに該当する人の割合は3~10%といわれており、飲食店においても、来店するお客や働くスタッフがLGBTQである可能性は決して低くありません。
多様な性を認める社会では、LGBTQについて理解し、必要な対応を行うことが求められています。
飲食店でのLGBTQ対応について、最も気をつけなければいけないのは、お客への接し方です。
たとえば、同性カップルのお客が誕生日のお祝いで来店した際に、店のスタッフが「お友だち同士で仲がよいですね」と声をかけて、不快な思いをさせてしまったというケースがありました。
また、男性のお客が同性パートナーの誕生日を祝うために、電話口で2名分のコース料理を予約した際、「奥様は苦手な物やアレルギーなどはございますか?」と聞かれたというケースもあります。
どちらも「同性の2人組は友達同士」「男性のお客のパートナーは女性」という先入観からくるもので、スタッフ自身にはそのつもりがなくても、公平性を欠く接客となってしまいます。
大切なのは、異性同士、同性同士、1人か複数か、LGBTQか否かに関わらず、誰に対しても先入観を持たず、フラットに公平な接客を心がけることです。
スタッフにLGBTQを正しく理解したうえで働いてもらうために、ミーティングや研修などを定期的に行うのも効果的です。
オールジェンダー対応トイレの必要性
飲食店でLGBTQへの対応を進める際、必ず議題にのぼるのがトイレについてです。
LGBTQの当事者が使用する場合、男女別に分かれているトイレでは使いづらいという声があるため、スペースや予算に余裕があれば、男女別のほかに「だれでも使える」トイレ、いわゆるオールジェンダー化のトイレを設置するとよいでしょう。
スペースや予算がなければ、男女別ではなく「だれでも使える」トイレのみにするという方法もあります。
トイレのオールジェンダー化は、トイレマークをオールジェンダーのマークに付け替えるだけなので、予算がなくても簡単に行うことができます。
ただし、LGBTQではない人の立場では男女が共有するオールジェンダー化のトイレは気を使う、という意見もあるので、できればオールジェンダー化のトイレのほかに女性専用トイレがあるとのぞましいでしょう。
こうした施策によって、LGBTQのお客がトイレを使用しやすくなれば、店への好感度が上がって常連客になってくれたり、パートナーや友達に広めてくれたりするかもしれません。
店側としても、オールジェンダートイレが設置されていることを店のサイトや口コミサイト、SNSなどで積極的にアピールしていきましょう。
また、オールジェンダートイレがあれば、LGBTQのスタッフも働きやすくなります。
店の経営者や責任者は、働く人に対してもLGBTQの配慮をした方がよいでしょう。
もし、制服の着用を定めるのであれば、男女問わず統一したデザインにしたり、複数パターンのデザインを用意して性別ではなく好みで選べる方法にしたりするといった対応もあります。
さらにスタッフとの会話にも注意しなければいけません。
人の性的指向や性自認を本人の許可を得ずに第三者に暴露することを、『アウティング』といいます。
何気ない会話のなかでも「◯◯さんってゲイだよ」などの発言はアウティングに該当し、当事者を傷つける可能性があります。
また、悪気はなくても「結婚するの?」や「彼女はいるの?」などの質問は、LGBTQに限らず相手に不快感を与えることがあるので控えましょう。
ほかにも、LGBTQのスタッフを雇用する際は、無意識下の差別的な言動を意味する『マイクロアグレッション』にも気をつける必要があります。
たとえ褒め言葉のつもりでいても、「バイセクシュアルだからセンスがあるね」や「ゲイだからおしゃれだね」などの言葉は、マイクロアグレッションになります。
マイクロアグレッションは、性的指向や性自認だけではなく、スタッフの国籍や宗教、文化的背景や障害、肩書や立場などに対しても起きるので、意識してしっかり言葉を選ぶことが重要です。
離職率が高い飲食業界では、働きやすい環境を整備することがスタッフを定着させるためのカギになります。
LGBTQのスタッフが働きやすい店を目指し、全スタッフがLGBTQにおいて正しい知識を持ち、対応に反映させることで、さまざまな立場のお客が来店しやすくなります。
店舗の環境整備と併せて、スタッフへの指導や教育もしっかり取り組みましょう。
※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。