早期退職を防ぐために!『衛生要因』を可視化する方法
このように従業員が不満を抱く要因のことを、アメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグは『衛生要因』と名づけました。
衛生要因が改善されていないと、従業員の不満は溜まっていき、最終的には離職に至ってしまう場合があります。
従業員が離職するリスクを解消するためには、従業員がどの衛生要因に対して不満を持っているのか把握しなければいけません。
今回は、衛生要因を『見える化』するための方法を解説します。
『衛生要因』と『動機付け要因』とは?
厚生労働省によれば、2022年の1年間の離職者は約765万人でした。
前年よりも離職者数は増えており、今後もその傾向は続いていくと見られています。
また、総務省が公表している『令和4年就業構造基本調査』では、過去5年間に前職を辞めた人の離職理由のトップが「労働条件が悪かったため」(約232.6万人)でした。
特に、「自分に向かない仕事だった」(約140.9万人)と回答した人は5年前から約25万人も増えています。
前述のフレデリック・ハーズバーグは、職場における特定の要素が仕事の満足や不満足につながるという『二要因理論』を提唱しました。
この理論のなかで、従業員に不満を抱かせる要因のことを『衛生要因』、仕事の満足感を得られる要因のことを『動機付け要因』と定義しています。
仕事の満足感を得られる動機付け要因として、「仕事の成果」や「やりがい」、「業務への責任感」や「理念への共感」などがあります。
一方、衛生要因は「職場の人間関係」、「職場環境」、「給与」など、より個人の生活に根ざしている要因が含まれます。
二要因理論では、この動機付け要因を満たし、かつ衛生要因の不満が解消されることで、従業員の仕事に対するモチベーションを最大限に高められるとしています。
つまり、従業員の不満足と満足を感じる要因に相関性はなく、衛生要因だけが改善されても、仕事自体への満足度は上がらず、あくまで不満が解消された状況に過ぎないということです。
従業員の仕事への満足度を向上させるには、動機付け要因も並行してバランスよくアプローチしていく必要があります。
衛生要因から現状との乖離を見つける
仕事の満足感には直接関係しない衛生要因ですが、だからといって放置してよいわけではありません。
衛生要因が改善されないままだと、不満が蓄積し、従業員の離職につながる可能性が高くなります。
給与に納得できていないのか、それとも人間関係に悩んでいるのか、従業員の不満を取り除きストレスを減らすためには、従業員が納得できていない衛生要因を見つけ、企業側が解決に向けて動く必要があります。
そのためには、まず現状の可視化が欠かせません。
衛生要因が解消されていない従業員は、一般的に不満を表に出すことはありません。
管理者側は、注意深くすべての従業員を観察し、普段の言動からあたりをつけていきます。
たとえば、ミーティングや会議などの場で、積極的に発言をしなかったり、面倒くさそうな態度だったりする従業員は要注意です。
解決できていない衛生要因を抱え、やる気をなくしている可能性があります。
観察によってあたりをつけると同時に、社内アンケートや満足度調査、個別ヒアリングも不満を感じている衛生要因の可視化には効果的です。
匿名でのアンケートなどであれば、従業員も不満を吐き出しやすくなります。
従業員がどこに不満を感じているか把握できたら、本人が重視していることと現状で、何が乖離しているかについて確認します。
たとえば、個人で完結する業務を得意としている従業員に顧客訪問が必要な業務を担当させている、社外で人と接する仕事がしたい従業員に在宅で事務作業をさせているようなケースです。
このように本人の意思と現状の乖離を把握し、解消していくことで、離職防止につなげることができます。
企業としては、まず従業員が不満に感じている衛生要因を把握することが最優先です。
その次に、衛生要因に応じた対策を講じていくことが重要です。
また、従業員が意欲的に働くためには、衛生要因を取り除くだけではなく、動機付け要因を満たすための施策も大切です。
それぞれの内容と違いを理解しながら、離職防止に向けた取り組みを進めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。