GW明けの離職を防ぐ! 『メンター制度』で相談できる環境を構築
英気を養うための大型連休ですが、連休中とのギャップや、慣れない仕事へのストレスなどにより、GW明けからメンタル不調に陥ってしまう新入社員もいます。
メンタル不調は離職につながる可能性もあり、企業としては貴重な人材を失うことにもなりかねません。
不安や悩みを抱えた社員をフォローする『メンター制度』の概要や、導入手順などを解説します。
不安や悩みに寄り添う『メンタリング』
厚生労働省によれば、2020年3月に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.0%、新規大卒就職者が32.3%でした。
どちらも前年より上昇しており、若手社員の早期離職が増加していることがわかります。
特に生活のリズムが乱れ、職場や仕事への不安が浮き彫りになる大型連休明けは、離職が増える時期といわれており、企業としては何らかの対策を講じる必要があります。
その一つが、『メンター制度』の導入です。
メンター制度とは、『メンター(Mentor)』と呼ばれる経験豊かな先輩社員が、『メンティー(Mentee)』と呼ばれる後輩社員に対し、仕事やキャリアの形成、人間関係など、職場や会社におけるさまざまな問題の解決に向けて、サポートを行う個別支援活動のことです。
支援活動は主に双方向の対話によって行われ、メンターはメンティーが自主性を持って判断し、課題解決に向けて動けるようにサポートをしていきます。
この定期的なサポートのことを『メンタリング』といいます。
メンターはメンティーの直属の上司や先輩ではない、別部署の先輩社員が選ばれることが一般的です。
メンター制度は、通常は自然に関係性が築かれる職場の先輩・後輩の関係を制度化したものであり、直接的な人事評価を行わない他部署の先輩社員がメンターとなることで、メンティーは気負うことなく、悩みや不安を打ち明けることができます。
新入社員は、新しい職場環境や慣れない仕事への不安から、無意識のうちにストレスを溜めてしまい、大型連休明けに憂鬱な気分になったり、不安感に襲われたりすることがよくあります。
こうしたメンタル不調に陥った際に、親身になって自分の話に耳を傾けてくれる先輩社員がいれば、不安感や焦燥感は和らぎます。
また、対話によって漠然とした自分の目標や仕事への意義などを明確にすることもできるでしょう。
メンター制度を導入するための準備
メンター制度を導入する場合は、まず目的と対象者(メンティー)を明確にします。
たとえば、毎年大型連休後に新卒の新入社員から離職者が出ているのであれば、目的は離職者を出さないことになり、対象者は新卒の新入社員になります。
メンター制度を導入する前に、社内で意識調査などを行い、現状を把握しておくことも重要です。
離職者が出ている原因が業務内容や人間関係によるものではなく、給与や労働時間といった労働条件などに起因するものであれば、労務的な観点からの改革が必要だからです。
導入する目的と対象者が決まれば、具体的な運用の期間や面談の頻度などを計画に落とし込んでいき、人事部の社員などで構成されたメンター制度の推進チームによって計画を進めていきましょう。
まずは、メンターを指名、または自薦・他薦などの方法で選定したうえで、メンターにふさわしい人物かどうかの選任を行い、メンティーとのマッチングを行なっていきます。
メンター制度は、個人の能力に依存する部分が大きいため、メンターを選定する際には、経験が豊富で人材育成の重要性を理解し、信頼感のある誠実な人を選ばなければいけません。
また、メンターとメンティーの相性は重要です。
相性が悪ければ、メンターとメンティー双方の離職を促してしまうことにもなります。
マッチングの際には、双方の性格や特性をよく分析し、対象のメンティーに寄り添える人物を担当させるようにしましょう。
そして、実際にメンタリングを始める前に、メンターおよびメンティーに対しての事前研修を行ないます。
研修をとおして、お互いの役割や期待、行動などをあらかじめ明確にしておくことで、誤解や混乱を防ぐことができます。特にメンターは効果的なメンタリングができるようにスキルを身に付けることも大切です。
メンタリングのタイミングは企業によって異なりますが、大型連休明けの離職防止を目的とするのであれば、大型連休の前後に面談の時間を設けることをおすすめします。
原則として、メンタリングは就業時間内に行うようにし、メンタリングが終わったら、推進チームにメンターから内容を報告してもらうようにします。
この報告とメンティーへのアンケート調査をもとに、課題を洗い出しフィードバックすることで、効果の高いメンタリングを実施していきましょう。
メンター制度の導入は新入社員の離職防止だけでなく、メンターとなる先輩社員のコミュニケーションスキルや、部下育成の視座を育めるというメリットがあります。
しかし、メンターの役割を担うことで、業務負担が増えたり、人間関係の悪化を招いたりするおそれもあります。
まずは自社にメンター制度の導入が必要かどうかを確認し、導入するのであれば効果的に制度を活用できるよう十分な準備を行いましょう。
※本記事の記載内容は、2024年3月現在の法令・情報等に基づいています。