新たな時代に必要不可欠な『グロースマーケティング』とは?
しかし、時代の流れと共に、マーケティングに対する考え方も変わりつつあります。
近年、注目を集めているのは、新規顧客の獲得だけではなく、既存顧客との関係を深めながら、企業や事業、製品やサービスの持続的な成長を目指す『グロースマーケティング』という新しいマーケティングです。
多くの大手企業が取り組み、成果を出しているグロースマーケティングについて、理解を深めていきましょう。
グロースマーケティングが注目される背景
インターネットの普及と進化は、顧客の消費活動に大きな影響を与えました。
さまざまな国の異なる価値観を持つ人々の考えが可視化され、個人の好みや興味が多様化し、より複雑になることで、社会的なブームによって一つのものが爆発的にヒットするということが少なくなりました。
消費活動は顧客の価値観に、より大きく紐づくものになったといえます。
また、SNSなどによって、トレンドが移り変わるスピードも一昔前と比べると格段に速くなり、人気のアイテムやコンテンツが数カ月後にはすでに時代遅れになっているというケースも少なくありません。
一部の界隈で流行したものが、別の界隈ではまったく知られていないなど、トレンドの分断も起きています。
さらに、企業と顧客の関係も売り買いで終わるのではなく、サブスクリプションサービスなどによって、長期化する傾向にあります。
特定の企業が一強となる時代は終わり、顧客はそのサービスが気に入らなければ、すぐに別のサービスに移ることも容易になり、顧客視点でのサービス提供がますます重要になったといえます。
こうした時代の変化を背景に、顧客との関係を構築してエンゲージメントを高めながら、企業や事業、製品やサービスの持続的な成長を目指す『グロースマーケティング』という考え方が大きな注目を集めています。
企業にとっては新規顧客の獲得も大切ですが、今のビジネスモデルでは新規の顧客獲得はむずかしくなる一方といえます。
獲得にかけるコストが大きいため、新規だけでは事業がうまくいかない可能性もあるでしょう。
そこで重要になるのが、獲得した顧客への理解や顧客の満足度をより重視するグロースマーケティングです。
グロースマーケティングが注目されるようになった理由の一つには、技術の進化により、顧客の行動データの分析や活用が可能になり、既存顧客の新たなニーズを見つけられるようになったことがあげられます。
グロース(growth)は、日本語で「成長」や「発展」という意味です。
企業の持続的な成長や発展のために、既存顧客との良好な関係の構築が欠かせないという考え方が、グロースマーケティングの軸となっています。
グロースハックとリーンスタートアップが鍵
グロースマーケティングを行ううえで、重要なキーワードが『グロースハック』と『リーンスタートアップ』です。
グロースハックは、製品やサービスの持続的な成長を目的に、その方法を模索して実行することを意味した言葉であるのに対し、リーンスタートアップはグロースハックを実現するための手法の一つを表しています。
グロースハックは、従来のような広告によって製品やサービスを訴求していくのではなく、製品やサービスそのものに成長のための仕組みを取り入れ、改善を行なっていくことを重視しています。
一方、リーンスタートアップは製品やサービスを開発するためのマネジメント手法で、そのものの完成度よりも、市場に出すことを何よりも優先します。
短期間でコストをかけずに最低限の製品やサービスを作って市場に出し、顧客の反応を見ながら検証し、改善を加えていくことで、顧客満足度を上げていきます。
たとえば、GoogleやAmazonなどは、まずサービスを提供し、顧客の反応を受けて改善を行なっていくというフローをたどることで知られています。
今や大企業や先進的な企業でなくても、まず世の中に製品やサービスをリリースすることによって、PDCAサイクル(※)を高速で回すビジネスモデルは珍しいことではなくなりました。
※Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのプロセスを繰り返し、業務効率を改善するフレームワーク
こうしたリーンスタートアップを筆頭としたグロースハックのための手法には、データの解析が欠かせません。
現代では、IoT やGPS、AIなどのデータ解析技術が急速に進歩したことにより、顧客のフィードバックや、顧客行動のデータ分析などが容易になり、既存顧客に向けた製品やサービスの品質向上に取り組みやすくなりました。
このように、集めたデータを活用して、顧客の消費行動を理解し、PDCAサイクルを高速で回すのがグロースマーケティングの大まかな流れとなります。
グロースマーケティングの代表的な事例としては、オンラインストレージサービスの『Dropbox』があります。
Dropboxを友人に紹介することにより、無料で追加容量を獲得できるという施策は、新規ユーザーを増やすと同時に、既存ユーザーの継続利用を促すことに成功しています。
また、音楽ストリーミングサービスの『Spotify』は、Facebookと連携し、タイムライン上でユーザーに多く聴かれている曲がわかる仕組みを導入することで、ユーザーとの関係の深化を図りました。
顧客との強固な関係を構築し、企業や製品、サービスの持続的な成長を目指すグロースマーケティングは、マーケティングの世界に大きな変化をもたらしています。
今後主流となるグロースマーケティングを理解し、自社のマーケティング施策に落とし込んでみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2024年3月現在の法令・情報等に基づいています。