2024年4月に条件付き解禁! タクシー不足を補う『ライドシェア』
ライドシェアの解禁は、深刻化するタクシー不足を解決する一助になると、大きな期待が寄せられています。
一方で、日本版ライドシェアはアメリカなどで普及しているライドシェアとは仕組みが異なり、いくつかの懸念点もあります。
日常的にタクシーを利用している人は知っておきたい、日本版ライドシェアの概要を説明します。
個人タクシーの派生型となるライドシェア
厚生労働省の調査によると、タクシー運転手の平均年齢は60歳を超えており、全産業の平均43.4歳と比べてもかなり高齢化が進んでいます。
また、運転手のなり手の不在や、コロナ禍による離職なども相まって、日本のタクシー不足は社会問題化しつつあります。
こうしたタクシー不足の解消に向けて、日本でもライドシェアについての議論が進められてきました。
ライドシェア(英語ではridesharing)とは、ドライバーと乗客をマッチングさせるサービスのことを指し、主に『TNC型』と『PHV型』という二つの形態があります。
アメリカやオーストラリア、中国などで普及しているTNC型のライドシェアは、「Uber」や「Lyft」などの配車プラットフォームを介して、登録した一般ドライバーと利用者をアプリでマッチングさせる形態です。
片や、イギリスやドイツなどで導入されているPHV型は、ライドシェアを行う一般ドライバーに対して、国が登録や車両・運行管理を義務づける、いわば個人タクシーの派生型といえます。
日本では、安全面などからタクシー事業者がタクシー事業の一環として、ライドシェアを行う一般ドライバーの教育、運行管理や整備管理を行うため、PHV型寄りのライドシェアになることが予想されます。
自家用有償旅客運送制度を大幅に見直し
日本では、タクシー営業に必要な認可を受けずに一般ドライバーが自家用車を使用して乗客を運ぶ行為を禁止しています。
しかし、過疎地などのタクシーが確保できない地域に限り、国土交通大臣の登録を受けた市町村やNPOが自家用車を使って有料で人を運送する『自家用有償旅客運送』が認められています。
道路運送法に基づいた自家用有償旅客運送制度は、タクシーなどの旅客運送に必要な第二種運転免許がなくても一般ドライバーが有料で人を運送できる制度です。
交通が不便な地域での実施に限定されるうえ、福祉を目的としたものでなくてはいけないという条件があります。
さらに、地域における関係者との協議と、道路運送法に基づく登録やタクシー会社の講習を受ける必要があります。
タクシーが不足しているからといって、すぐに一般ドライバーによる旅客運送を実施できるわけではありません。
今回のライドシェア解禁は、この自家用有償旅客運送制度を大幅に見直すことで、観光地や繁華街でも、一般ドライバーによる旅客運送を実現させることを目的としています。
配車アプリのデータを活用し、需要を可視化
では、日本版のライドシェアは具体的にどのようなかたちで運用されていくのでしょうか。
まず、タクシーの配車アプリが導入されている地域においては、アプリのデータを活用して、タクシーが不足する時期や時間帯を特定します。
現在、全国の70%以上の地域が配車アプリのデータによって、タクシーの不足状況を可視化することができます。
この結果に基づき、一般ドライバーと自家用車による運送サービスを、タクシー事業の一環として提供することになります。
また、配車アプリが導入されていない地域に対しては、関係者へのヒアリングや、無線配車の状況などから不足状況を分析し、不足分について地域の一般ドライバーと自家用車を活用すると同時に、配車アプリの導入を促進していきます。
ライドシェアが導入されることで、今後は繁忙期が来るとタクシーが不足する海水浴場近辺やスノーリゾート、終電が過ぎるとタクシーがつかまらなくなる繁華街やターミナル駅付近などでも、移動手段の確保が見込めます。
タクシー会社が加盟する業界団体の『東京ハイヤー・タクシー協会』では、まずは東京都内で、今年の4月から数百台規模でライドシェアをスタートすると発表しました。
また、政府はタクシー会社以外の企業がライドシェア事業に参入できる全面解禁についても、6月スタートを視野に議論を進めています。
ライドシェアが全国的に普及するには時間を要するでしょう。
しかし、新たなサービスとして軌道に乗れば、利用客、働き手、時代のニーズに応えた『三方よし』の事業として発展していくかもしれません。
今後もライドシェアを巡る動きに注視していきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。