労働災害の防止には必要不可欠!『送り出し教育』の重要性
一方、事業者が行う新規入場時教育に先立ち、作業員を作業場に送り込む側の下請け企業も『送り出し教育』を行います。
送り出し教育とは、作業員に対して事前に実施する教育のことで、新規入場時教育と両方の実施により、作業員の安全意識が高まり労働災害の発生防止につながります。
何事もなく安全に工事を終えるためには欠かせない、送り出し教育の重要性を説明します。
新しい現場に入る前に必要な送り出し教育
建設業における労働災害は年々、減少傾向にあるものの、全産業のなかでは依然として高く、死亡災害は30%を超えています。
建設現場の死亡災害はその6割近くが、新しく現場に入ってから7日以内に発生しています。
新しい現場は、建設工事の技術が未熟な作業員はもちろん、ベテランの作業員であっても不慣れな現場の作業となり、注意すべき点が増えるため、危険な行動をしてしまいがちです。
新しい現場においては経験や年齢などにかかわらず、誰もが労災を起こしてしまう可能性があるため、事業者は労働安全衛生法に基づき、さまざまな安全衛生教育などを実施しなければいけません。
安全衛生教育には、労働者を雇用する際に行う『雇入れ時教育』のほかに、作業員が新しく作業場に入場する際に行う『新規入場時教育』と、入場の前に行う『送り出し教育』があります。
どちらも労災を防ぐために、現場の状況や安全上のルールを作業員に周知するためのものですが、教育を行う主体企業やタイミングが異なります。
新規入場時教育は元請け企業が作業員を受け入れる際に作業所などで行うのに対し、送り出し教育は、下請け企業や専門の工事を担う協力企業などが作業員を作業場に送り出す前に、自社の事業場などで行います。
送り出し教育では、作業員が新しく入ることになる作業場の基本的なルールを周知します。
事業者によって異なりますが、基本的には工事の概要や期間、作業場の状況や範囲、自社や元請け企業の安全衛生方針などを学ばせます。
ほかにも、担当する工事の作業手順や搬入経路、機械や資材の取り扱い、事故の予防策、緊急時の措置、近隣協定、挨拶、点検、清掃に至るまで、その内容は多岐に渡ります。
また、教育と同時に、作業員の健康状態や実務経験や資格などの確認を行い、工事の配置の参考にすることもあります。
送り出し教育の注意事項と全体のフロー
送り出し教育を実施するのは、下請け企業や協力企業の事業主とされています。
しかし、現場を詳しく知る安全管理者や安全衛生責任者、雇用管理者や職長などが代理で行うケースもあります。
また、送り出し教育は、新しく現場に入るすべての作業員が対象となります。
経験を重ねたベテランの作業員も、1日だけ応援で現場に入る作業員も、等しく教育を受けさせなければいけません。
ほかにも、送り出し教育の体制が整っていない二次請け企業や三次請け企業の作業員に対しては、一次請け企業が責任を持って、教育を行う必要があります。
教育を実施する期間は、工事を受注して元請会社と打ち合わせを終えてから、作業員が作業場に入る前日までになります。新しい現場に入る前に、あらかじめルールを理解しておく必要があるためです。
教育の時間は事業者や現場によって定められてはいませんが、ある程度の時間を確保しないと、すべてを学ばせることはむずかしいでしょう。
下請け企業は、元請け企業から提供を受けた作業場の状況やルールをまとめた教育資料をもとに送り出し教育を行い、実施報告書を元請け企業に提出します。
元請け企業は、この実施報告書を参考にしながら、現場に入場した作業員に対して、新規入場時教育を行います。
新規入場時教育は送り出し教育と重複する事項も多々ありますが、繰り返し作業員に教育を行い、しっかりと理解してもらうことが、労災を防ぐことにつながります。
建設現場は経験や資格、所属が異なる作業者が集まります。
新たに、または途中から建設現場に加わることになった作業員が安全に作業できるよう、送り出し教育を適切に実施しましょう。
※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。