集客につながる『ハッピーアワー』で利益を維持するには
ハッピーアワーを実施しているのは、主にアルコール飲料を提供する飲食店で、その目的は客足の鈍る時間帯にお客を呼び込むためです。
しかし、利益率を下げる集客方法のため、ハッピーアワーが逆に店の負担になってしまうこともあります。
リスクや注意点をふまえながら、効果的なハッピーアワーの導入方法を考えていきます。
アイドルタイムを利益につなげる
ハッピーアワーが飲食店の取り組みとして導入されるようになったのは1960年代といわれており、日本では繁華街などにある飲食店を中心に、広く普及しています。
ハッピーアワーは、月曜日から金曜日までの平日16時から19時頃までに設定する店が多いといわれていますが、業態によっては土曜日や日曜日、祝日に実施しているケースもあります。
また、深夜営業の居酒屋や接待飲食店のクラブなどでは、オープンから22時までなど、遅めの時間帯にハッピーアワーを設定している店もあります。
飲食店がハッピーアワーを導入する一番の目的は集客です。
通常、来店数のピークはモーニング、ランチ、ディナー、深夜の4種類で、それぞれの間の客足が鈍る時間帯のことを『アイドルタイム』といいます。
アイドルタイムは店を開けていても、お客がほとんど来店しないため、従業員の待機時間が生まれ、人件費や光熱費などのコストも余分にかかってしまいます。
そのためランチ営業を行なっている居酒屋などは、ランチとディナーの間のアイドルタイムに店を閉めて休憩時間にすることがほとんどで、いわゆる昼から夜まで“通し営業”を行う店は少ないようです。
多くの飲食店はアイドルタイムに店を開けても集客が見込めないことから、ディナータイムが始まる17時ごろに営業を再開します。
しかし、あえてアイドルタイム中である16時にハッピーアワーを始めることで、ほかの店に先んじて集客を図ることができるというわけです。
また、ハッピーアワーを目的に来店したお客が、ほかのお客を呼び込む好循環も起きやすく、これがきっかけでリピートしてくれるお客も少なくありません。
さらに、ハッピーアワーは従業員の待機時間を減らすことにもつながります。
値段の付け方が成功のカギになる
メリットの多いハッピーアワーですが、飲食店の中にはあえて導入しない店もあります。
なぜなら、集客とは逆の効果が出てしまうリスクもあるからです。
ハッピーアワーが来店の動機になっているお客は、基本的にはお得なサービス価格のメニューが目的のため、ハッピーアワーが終わると帰ってしまったり、それ以外の通常料金の時間帯を避けるようになってしまったりする可能性があります。
また、ハッピーアワーのお客が増えれば、従業員の業務量も増えることになります。
人手不足の店であればシフトを組み直す必要があり、ハッピーアワーの間だけ出すメニューで増えた料理の仕込みにも手間を取られることになります。
さらに、一番の問題は、ハッピーアワーの時間帯は客単価が低くなるため、利益率が下がってしまうということです。
ハッピーアワーのメニューはサービス価格なので、お客にとっては原価率が高いメニューになります。
原価率が高いということは店にとっては粗利が低いメニューということになり、正規料金のメニューと比べると、ほとんど利益が出ないという状況に陥る恐れもあります。
そこで、大事なのはハッピーアワーで提供するメニューの値段の付け方です。
酒類はそれぞれ原価が異なるため、ドリンクメニューを一律半額にした場合、原価の高いドリンクばかり頼まれてしまうと利益を上げることができません。
生ビールの中ジョッキの原価は160円~200円ほどで、ハイボールの原価は50円~60円ほどといわれています。
どちらも通常価格が500円なのであれば、、一律で半額にするよりも、たとえばビールは300円、ハイボールは200円と設定したり、ビールのみ1杯目を無料でハイボールは一律半額にしたりといった、どのメニューを頼まれても一定の利益が出るような工夫が必要になります。
ほかにも、ハッピーアワーだけの限定メニューやお得なセットメニューなどの開発も、利益を確保するうえで効果的といえます。
場合によってはこうしたハッピーアワー限定メニューが話題となり、店のセールスポイントになることもあります。
ハッピーアワーは他店と差別化を図るための有効な手段だといえます。
店の立地条件や客層、提供するメニューなど相対的な視点から、自店ならではの取り組みを考えていきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。