エンゲージメントが高まり、組織を成長させる『D&I』の効果
多くの企業が取り組んでいるD&Iは、組織を成長させると同時に、従業員のエンゲージメントを高めるといわれています。
これからの企業経営にとって無視することのできない D&Iのメリットや導入方法について説明します。
SDGsの実現に欠かせないD&I
D&Iは、多様性を意味する『ダイバーシティ』と、受容性を意味する『インクルージョン』をかけあわせた造語で、特に近年は組織づくりに欠かせない概念となりつつあります。
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された『SDGs』は日本でもすでに定着し、多くの企業がSDGsの実現に向けて、さまざまな取り組みを行なっています。
日本語で「持続可能な開発目標」と訳されるSDGsは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)持続可能でよりよい社会を実現する」という理念のもと、世界中の貧困や環境、差別などに関する課題を2030年までに解決することを目標としています。
SDGsを推進している企業においては「leave no one behind」を実現するために、多様な人材を受け入れるD&Iを標榜とした組織づくりが重要になります。
D&Iを掲げているにもかかわらず、女性役員が少なかったり、障害者の活躍できる場がなかったりする企業は、主張と実情が伴っていないことになります。
SDGsを推進し、D&I経営に取り組むのであれば、性別や国籍、世代や障害の有無など、さまざまな属性の人たちを雇用しながら、それぞれの従業員の能力を活かせるような取り組みを行なっていかなければいけません。
たとえば、女性従業員の管理職への登用や、LGBTQへの配慮もD&Iの取り組みの一つです。
障害者や高齢者の雇用枠の拡大や、外国人労働者が力を発揮できるような環境の整備も、D&Iにおいては重要な施策といえます。
D&Iが組織にもたらすイノベーション
多様な属性の従業員が個々の能力を活かすD&Iは、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。
一つに、新しい発想やアイデアの創出があります。
異なる属性を持つ人たちが集まるということは、異なる知識や経験、価値観や能力が集まるということでもあります。
一つの属性の人たちだけの組織のことを、『同質性の高い組織』といいます。
同質性の高い組織は、考え方や価値観が近い人の多い組織という特性上、スムーズな共有が行われ、対立が起きづらいというメリットがあります。
しかしその一方で、同質性が高くなるほど思わぬ変化に対応できないというデメリットがあります。
変化のスピードが早い現代においては、その変化に対応できるような属性の多様性が欠かせません。
たとえば、ベテラン従業員のなかに若手従業員が加わると、新しいアイデアが生まれることがあります。
実際に、男性だけで行なってきたプロジェクトに女性が参加したことで、女性ならではの新たな視点が加わり、プロジェクトを進めることができたという事例もあります。
また、ユニバーサルデザインを考えるうえで、障害者や高齢者の意見が必要になることもあります。
外国人労働者ならではの発想が、これまでの慣習を変えることもあるでしょう。
固定概念を打ち破るような発想やアイデアは、同質性の高い組織ではなく、むしろ異質性の高い組織から生まれます。
いかにD&Iを推し進めていくか
さまざまな属性の人たちが多様な価値観を認め合うD&Iは、組織内の信頼関係の構築にも役立ち、従業員の定着率の向上も期待できます。
D&Iに取り組んでいる企業ということで対外的な評価も高まり、採用の現場でも有利に働くでしょう。
しかし、ただD&Iを掲げているだけで、実体が伴わない企業も少なくありません。
大切なのは、いかにD&Iを組織のなかに落とし込み、具体的な取り組みを行なっていくか、ということです。
そのためには、経営陣がD&Iを理解し、経営戦略に具体的な施策を組み込んでいく必要があります。
まずは、多様な人材が活躍できる仕組みになるような、人事評価制度の見直しを行わなければいけません。
性的指向や性自認に関する差別禁止を明文化するためには、就業規則に明記するなどの変更が必要になります。
経営戦略に沿って、従業員へのヒアリングなども行いながら、D&Iを実現するための体制づくりや制度化を積極的に進めていきましょう。
また、こうした職場環境の整備と同時に、従業員への周知や理解も求めていかなければいけません。
なぜ組織としてD&Iが大切なのか、多様性とはどういうことなのかについて研修や勉強会などを開き、従業員の意識改革を行うことが、D&Iの推進になります。
それは、ひいては組織の成長にもつながります。
自社のイノベーションを生み出すためにも、組織全体でD&Iを推し進めていきましょう。
※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。