開業や改装の際に考えたい『キッズスペース』を設けるメリット
キッズスペースで子どもを遊ばせておくことで、親は安心して受診できるため、治療や定期的な歯のクリーニングなどに通いやすくなります。
逆に、子どもを遊んで待たせるスペースがない場合、歯科医の腕がよくて医院の雰囲気は悪くないにもかかわらず、子育て世代には通いづらい歯科医院になってしまう可能性があります。
集患にも大きな影響が出るキッズスペースの必要性や、設置する際の注意点などについて考察します。
キッズスペースはどんな歯科医院に必要か
子育て世代がかかりつけの歯科医院を選ぶ際に重視するポイントの一つに、キッズスペースの有無があります。
キッズスペースがないと、いくら家から近くて利便性がよくても、丁寧な診療で評判がよくても、待合室で小さい子どもを一人で待たせておけないため、定期的に通うのがむずかしくなってしまいます。
子どもを持つ親は院内にキッズスペースがあることで安心して治療を受けられますし、子どもを同伴させることで、小さいうちから歯科医院という環境に慣れさせることもできます。
子どもは虫歯治療のイメージや、幼児歯科健診などで、歯科医に苦手意識を持っているケースが多く、歯科医院を怖い場所、痛い治療をする場所だと感じている子どもがほとんどです。
キッズスペースがあることで、歯科医院は楽しい場所、遊べる場所という印象を子どもに持たせることができ、親子そろって通院する大きな動機となるでしょう。
また、子育て世代が通いやすい歯科医院にすることは、子どもの歯の健康を守るためにも役立ちます。
生えたばかりの乳歯は石灰化が進んでおらず、虫歯になりやすいため、幼児期から口腔内のケアを行うことで虫歯のリスクを軽減することができます。
幼少期の口腔環境は、その後に生えてくる永久歯にも影響を与えます。
地域の子どもたちの歯の健康を守る『予防歯科』という観点からも、キッズスペースの設置を検討していきましょう。
ただし、すべての歯科医院にキッズスペースが必要になるわけではありません。
立地や住民の層によっては、キッズスペースが不要の歯科医院もあります。
たとえば、ビジネスパーソンを対象としたオフィス街の歯科医院や、若者世代が中心の繁華街の歯科医院、シニア世代が多い住宅地やニュータウンの歯科医院などは、キッズスペースを設けても集患にそれほど影響がありません。
公園や学校が集中していて、多くの子育て世代が暮らす地域の歯科医院であれば、子どもが多いので、キッズスペースの必要性も増してきます。
本当にキッズスペースを設置するべきかどうかは、立地や住民の層を見極めたうえで判断しましょう。
キッズスペースを設置するときの注意点
キッズスペースを設ける際には、いくつか注意点があります。
まずは、キッズスペースの広さです。
歯科医院の多くは、待合室に付随する形でキッズスペースを設置することになりますが、キッズスペースを広く取ってしまったことで待合室が狭くなってしまっては、ほかの患者の満足度を下げてしまうことになります。
一方で、キッズスペースを小さくしてしまうと、せっかく設置したのに、遊びにくくて子どもが満足しなかったり、気づいてもらえなかったりする可能性もあります。
大事なのは、そのキッズスペースを利用するのは何歳くらいまでの子どもなのか、そのスペース内でどのくらいの人数が遊べるのかを想定しておくことです。
子どもの対象年齢によってキッズスペースに必要な遊具や絵本、設備は異なります。
歯科医院の患者の層によっても子どもの来院数は変わってくるので、事前にリサーチを行なっておきましょう。
また、子どもの事故や定期的なメンテナンスについても注意する必要があります。
キッズスペースの近くに電源コンセントがあると、子どもが遊具などを入れて感電してしまうかもしれません。
コンセントを隠すか、離れた場所にキッズスペースを設置するようにしましょう。
モニターや棚、家具や家電などは倒れないようにしっかりと固定し、ドアや机の角はカバーやコーナークッションなどで覆い、子どもが怪我をしないように配慮することが大切です。
こうした怪我や医院外への飛び出し、不審者による連れ去りなどを防ぐために、子どもを見守る人員を配置したり、Webカメラを設置したりして、常に子どもの姿を確認できる体制を構築している歯科医院もあります。
キッズスペースを柵で囲っておくことも、子どもの安全を守るためには効果的です。
また、子どもが使用する遊具や絵本は、日々使用することで消耗します。
特に乳幼児は遊具を口に入れる傾向があるため、定期的な洗浄や消毒、メンテナンスを実施することを心がけましょう。
近年は保育士資格保有のスタッフが常駐する託児システムを備えた歯科医院や、テーマパークのような趣向を凝らした歯科医院も存在します。
スペースの関係でキッズスペースを設けることがむずかしい場合は、子どもの靴の脱ぎ履きを省略できるよう院内を土足可能にしたり、モニターでアニメなど子どもが喜ぶ映像を流したり、絵本やおもちゃを充実させたりといった、できる工夫からはじめるのが望ましいです。
子育て世代を集患しやすい地域に立地する歯科医院は、自院の患者の年齢層や集客できる見込みの住民層などをリサーチしたうえで、患者が満足するキッズスペースの設置を検討しましょう。
※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。