店の軒先で行う店頭販売で注意すべきポイント
店内で調理したテイクアウト用の料理を販売する店頭販売は、キッチンカーのような移動販売とは異なり、店先など既存の店舗のスペースを使用できるというメリットがあります。
また、店先で販売するため、新規顧客の獲得につながるという効果もあります。
しかし、店内で販売する以上に、衛生面や提供の仕方などには気を配る必要があります。
店頭販売を考えている飲食店オーナーに向けて、店頭販売を始めるためのポイントなどを説明します。
店頭販売は新規顧客の獲得に直結する
店頭販売は、その店をお客に知ってもらうよいきっかけになります。
メニューや味を気に入ってもらえれば、後日、店内で飲食してもらえたり、リピーターになってもらえたりする可能性もあります。
お客は実際に料理を見て選べるため、思っていた料理と違うといった認識のすれ違いも起きづらく、混雑時でも手軽に料理を買うことができます。
飲食店としても、満席のせいでお客を逃してしまう機会の損失を防ぐことができるので、特にランチタイムに混雑しやすいオフィス街や商業地の飲食店などにはメリットが多いでしょう。
キッチンカーによる移動販売は出店場所の確保や車両などが必要になるのに対し、店頭販売は既存の場所や設備をそのまま活用できるため、ほとんどイニシャルコストやランニングコストがかかりません。
また、移動販売は食品衛生責任者が1人以上いる必要があり、出店する地域を管轄する保健所の営業許可もする必要があります。
しかし、店頭販売であればすでに飲食店として営業許可証を取得しており、食品衛生責任者も設置しているため、新たな許可申請や届出などが必要になることはありません。
ただし、飲食店の許可で認められているのは、あくまで店内の厨房で調理した料理を店頭販売する場合に限られます。
厨房ではなく、そのまま店頭で持ち帰り用の容器にご飯を盛り付けたり、スープをよそったりするのは調理行為となり、別途、露店飲食店営業の許可が必要になります。
ほかにも、ケーキや焼き菓子などを製造して販売するには菓子製造業、ハムやソーセージは食肉製品製造業、刺し身は魚介類販売業、自家製麺のラーメンやうどんはめん類製造業など、許可がそれぞれ必要になることに注意しましょう。
お客が持ち歩き、後で食べることを意識する
店頭販売で特に気をつけなければならないのが、衛生管理です。
店内で食べる場合とは異なり、店頭販売はお客が出来立てを食べるわけではありません。
家や職場などに持ち帰ってから口にするものなので、その分、食中毒のリスクが高くなります。
たとえば、食中毒菌の腸管出血性大腸菌は、環境によっては約1時間で8倍にも増殖します。
食中毒菌は、温度・水分・栄養分の3要素が揃うと爆発的に増殖するため、原材料の仕入れから調理、販売までの衛生管理を徹底し、お客にはできるだけ早めに食べてもらうように呼びかけましょう。
ほかにも、水分はよく切る、サラダなどの生ものは販売しないといった工夫が必要になります。
調理してすぐに販売しないのであれば、温度管理のできる冷蔵設備の設置も考えなければいけません。
また、温かい料理と冷たい料理を分けることも、食中毒のリスクを下げる効果があります。
そのためには、メニューに合ったテイクアウト用の容器を用意する必要があります。
定食や弁当であればご飯と惣菜を分けるための仕切り付きか、別々の容器に入れましょう。
汁ものであれば内蓋付き、カレーや丼物であれば深い丼タイプなどが最適です。
さらに、お客が料理を持ち歩くことになるため、持ちやすさや盛り付けが維持できるかどうかなども重要になります。
料理がおいしくても、持ちづらかったり、盛り付けが崩れたりしては、リピートにつながりません。
店の人気メニューでも店頭販売に向かない料理であれば、思い切って店頭販売では取り扱わないという判断も求められます。
店頭販売は、ただ店先に料理を並べるだけで成立するものではありません。
料理の色合いや盛り付け、見やすい容器などの工夫はもちろん、POPや立て看板などで、店の前を通るお客の関心を引くなどの工夫が大切です。
飲食店にとって店頭販売は、ローコストかつ新規顧客を獲得しやすい販売方法といえます。
許可申請や食中毒などに対する理解を深め、売上アップを目指してはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。