上手に導入! インセンティブ報酬の代表例と法規制
会社の業績が上がれば上がるほど報酬もアップし、会社役員や従業員に、業績向上の動機を与える効果があることから、そのように呼ばれています。
目標の達成の有無により支払いが決定されるインセンティブ報酬は、効果的に用いることで、働き手のやる気を促します。
今回は、導入の代表例と法規制について解説します。
インセンティブ報酬の代表例とは
インセンティブ報酬として最もイメージがつきやすいのは、成果報酬を現金で支給する方法です。
基本給は保証しつつ、業績に応じて成果報酬を上乗せして支給するようにすれば、従業員に対し安心感を与えつつ、仕事へのモチベーションを向上させることが可能です。
そのなかで近年では、自社株式を支給する方法も広がりを見せています。
会社により名称や方法にはバリエーションがありますが、『株式報酬制度』などと呼ばれ、業績に連動して支給される株式が決定されたりするものです。
業績が良ければ支給される株式も多くなるということであれば、業績アップのために働くことのモチベーションになります。
さらに、会社の業績が上がれば、当然株式の価値も上がるため、このことも役員や従業員が業績アップのために働く動機となるといえます。
報酬として自社株式を支給する場合、役員や従業員がすぐに売却をしてしまうと、インセンティブ報酬としての機能(自身が保有している株式の価値を向上させようとする機能)が失われてしまうため、会社の業績が一定のラインを超えるまで、第三者への譲渡を制限するといった工夫が必要になります。
譲渡制限の方法として、業績ではなく、継続勤務による方法もあります。
『譲渡制限付株式報酬』などと呼ばれ、一定期間の継続勤務という条件を達成した場合に、譲渡制限を解除するものです。
従業員は中長期的な利益を目指すため、会社にとっては優秀な人材の流出を防ぐことにもつながります。
ほかにも、『ストック・オプション』や『新株予約権』を付与する方法も多く用いられています。
ストック・オプションとは、自社の株を特定の価格で購入できる権利のことです。
たとえば、自社株を1,000円で購入する内容の新株予約権を付与されたのち、会社の業績アップに伴って自社株の価値が1,500円となれば、1,500円の価値がある自社株を1,000円で購入できます。
購入した株は価格が高くなったときに売却して利益を得られるため、従業員のモチベーションアップにつながります。
新株予約権は、ストック・オプションととてもよく似ていますが、従業員にしか購入できないストック・オプションに対して、こちらは社内外問わず誰でも取得することが可能です。
社外の投資家や企業などへの報酬にも使用できます。
整備が進められる法規制
インセンティブ報酬を会社の取締役に支給する場合、取締役が自由に報酬を設定することを防ぐための手立てが用意されています。
具体的には、金銭報酬の支給についてはその具体的額や計算方法を、また、株式や新株予約権の支給については支給される株式または新株予約権の上限数を、定款または株主総会で定める必要があります(会社法第361条1項1号ないし5号)。
新株予約権を、低廉な金額または無償で株式を購入できる内容で発行する場合において、それが特に有利な条件であるときには、公開会社では株主総会の特別決議、非公開会社では理由の説明が必要になります。
ただ、インセンティブ報酬として、新株予約権を会社の従業員に対して発行する場合には、たとえその新株予約権の内容が有利なものであっても、株主総会の特別決議等は必要ありません。
また、取締役に発行する場合であっても、定款または株主総会決議での定めに従い発行しており、その新株予約権の公正な価値が、定款または株主総会決議で定まる取締役の報酬額の範囲内に収まっている場合には、株主総会の特別決議は不要となります。
インセンティブ報酬としての新株予約権は、職務遂行の対価である報酬としての性質を鑑みて規制が緩和されているため、発行がよりしやすくなっているのです。
インセンティブ報酬については、企業にとって導入がしやすいよう法整備も進んでいます。
従業員のモチベーションと会社の業績、双方の向上につながるインセンティブ報酬を上手に導入していきましょう。
※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。