とにかく早く!『アジャイル・マーケティング』が注目される背景
半年前のトレンドが見向きもされないというケースも増えています。
マーケティング活動にもスピードが求められるなかで、注目を集めているのが『アジャイル・マーケティング』です。
このマーケティング手法は、計画から導入までのプロセスを高速化し、リリース後に顧客の反応やデータを見ながら、微調整を行なっていく手法のことです。
高速化するマーケットに対応するためには必要不可欠なアジャイル・マーケティングについて説明します。
アジャイル・マーケティングの導入背景
従来のマーケティングは、プロジェクトが立ち上がると、まず消費者のデータを集めて分析を行い、ニーズを把握したうえで施策や行動計画を策定し、リリースするという流れが一般的でした。
完成度の高い商品やサービスを世の中に送り出せるというメリットはあるものの、立案からリリースまで時間のかかるプロジェクトも少なくありません。
大きなプロジェクトになればなるほど、関わる人と時間とコストが増え、途中の仕様の変更や追加の注文に応じられないなど、柔軟な対応もむずかしくなっていきます。
一方で、デジタル技術の普及によって、「ものを作る、商品情報を伝える、評判が広がり購入に至る」といった一連の消費活動が高速化しています。
そのなかで、四半期や1年といった長い時間をかけて商品やサービスを完成させる丁寧なマーケティングは必ず成功するとはいえなくなってきているのが現状でしょう。
たとえば、消費者側はECサイトやSNSの普及によって、新商品の情報をいとも簡単に入手できるようになり、流通の発達によって消費者のもとに商品が届くスピードも格段に向上しました。
ネットで注文した商品が、翌日には届いているということも今では珍しくありません。
また、企業側は工場を持たない会社でも、他国の工場に生産を委託して仕入れる輸入OEMであれば、安価で大量に素早く商品を作れるようになりました。
これらの製造・情報・物流の高速化がもたらしたものは、市場の急速な変化です。
トレンドが短いスパンで移り変わり、市場が求めるものも常に変化するようになりました。
こうした流動性の高いマーケットについていくには、膨大なデータを集めて綿密な計画を立てる従来のマーケティング手法ではなく、リリースすることを最優先とし、消費者の反応に応じて柔軟に微調整を加えていくマーケティング手法が必要になります。
その一つが、アジャイル・マーケティングです。
次に、詳しくみていきましょう。
短いスパンでPDCAサイクルを回していく
『アジャイル(agile)』の名詞形である『アジリティ(agility)』は日本語で「機敏な」「素早い」「回転が速い」などと訳される言葉で、もともとはソフトウェア開発の現場などで使われていた用語でした。
ソフトウェア業界における『アジャイル開発』は、時間をかけて大規模な完成品を求めるのではなく、まずは及第点の製品を市場に出したうえで、ユーザーからのフィードバックをもとに改良や改善を繰り返しながら完成度を高めていく開発手法のことです。
このアプローチ方法は、アプリ開発やWebページなど、主に開発の途中で仕様変更や要素の追加などが想定されるプロジェクトに使われています。
この手法をマーケティングに応用したのが、アジャイル・マーケティングです。
アジャイル・マーケティングもアジャイル開発と同じく、短いスパンでPDCAサイクルを回し、消費者の反応を見ながら、微調整を行います。
リリースの段階で完璧なものを作り上げるのではなく、まずは小さな規模でリリースすることを最優先とします。
その後、リアルな顧客の反応をとらえ、分析・テストを繰り返しながら商品の改良・改善を行なっていくのが、この手法の最大の特徴です。
たとえば、あるサービスのキャンペーンの一環としてWebページを作成する場合、最初から完成形を目指すのではなく、小規模のプロジェクトとしてある程度の段階で一度リリースします。
その後、検証を繰り返しながら、ユーザーの反応も拾い上げて、コンテンツを増やしたり、UI(User Interface)に改良を加えたりといった調整を行なっていきます。
このようにまずはリリースし、最終的にユーザーの望む形にしていくという考え方が、アジャイル・マーケティングの根幹といえます。
アジャイル・マーケティングのメリットは、従来のマーケティングよりもユーザーに早くリーチができることにあります。
企業規模が大きければ、一つのプロジェクトに対し、多くの部門や関係者が関わることになります。
アジャイル・マーケティングは、短いスパンでPDCAサイクルを回すため、チームも小回りが利く少人数でなければならず、ある程度プロジェクトチームに権限を持たせていく必要があります。
従来のマーケティングとは正反対のマーケティングともいえる手法のため、まずはそのメリットとデメリットを把握したうえで、社内の理解を求めていくことが大切です。
※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。