採用の段階で優秀な人材を見極める際のポイント
しかし、慢性的な人手不足で人材が確保できていないという医院は少なくありません。
しかも、どんなに採用に力を入れても、必ずしも優秀な人材を採用できるとは限らないでしょう。
特に、小規模なクリニックでは雇用できる人数に限りがあるため、採用時にその応募者が優秀な人材かどうかを見極めることが重要になります。
優秀な人材を確保するために、歯科医院が採用時にできることを考えていきましょう。
人手不足のなかで優秀な人材を採用するには
現在、歯科業界は深刻な人手不足に陥っています。
特に、歯科衛生士は非常に不足しており、需要と供給のバランスが崩れている状態です。
厚生労働省が公表している『歯科衛生士復職支援事業実施状況調査結果(平成27年度)』によると、歯科衛生士不足を尋ねる質問で、全国47都道府県のうち33の自治体が「不足している」と回答しています。都市部・非都市部を問わず、7割の都道府県が歯科衛生士不足の状態なのです。
歯科助手や歯科技工士も減少傾向にあり、歯科医院は人材を確保することが喫緊の課題となっています。
このような人手不足のなかで優秀な人材を見つけて採用することが、歯科医院にとって生き残るための道といえます。
特に、小規模なクリニックは雇用できるスタッフの数が少ないことから、そのスタッフ一人ひとりが優秀でないと、患者のニーズに応えていくことはむずかしいでしょう。
しかし、採用活動に力を入れ、多くの求職者に応募してもらったとしても、求めている人材を採用できなければ意味がありません。
スタッフが能力不足であったり、教育がうまくいかなかったりすると、業務が滞って医院の経営に支障をきたすことになるのです。
そうしたリスクを避けるためにも、採用の面接で応募者が優秀な人材かどうかを見極めなくてはいけません。
多くの歯科医院が求めるのは、院長の方針と合致し、高い意識を持ちながら、明るく仕事に取り組んでくれる人材です。
もちろん相応の経験を持っていることが望ましいですが、キャリアがあるからといって、必ずしも優秀な人材とは限りません。
その応募者が優れているかどうかを判断するためには、履歴書や職務経歴書だけではなく、面接を通して能力や性格を紐解いていく必要があります。
歯科医院の面接は一般的に、志望動機や経歴を確認する程度で、あとは雑談で終わってしまうというケースが多いようです。
大半の歯科医師は人事のプロではないため、面接のノウハウが乏しく、応募者に会った際の第一印象や感覚で採用を決めてしまいがちです。
しかし、優秀な歯科衛生士や歯科助手を採用したいのであれば、事前に求めている人材のチェック項目を作成するなど、明確な評価基準を持って、面接に臨むべきでしょう。
ネガティブな返答をする応募者には要注意
面接でチェックしておきたいのは、第一にコミュニケーション能力です。
多くの患者と接することになる歯科医院では、スタッフがコミュニケーションをしっかりとれるかが何よりも重要になります。
面接では「挨拶ができているか」「スムーズな応答ができているか」「質問に的確に答えられているか」などのほかに、「笑顔かどうか」「人の目を見て話せているか」なども確認しておきましょう。
また、質問に対して、常にネガティブな返答をする応募者には要注意です。
たとえば、歯科衛生士のなかには短い期間で何度も転職している人がいます。
その転職理由を尋ねた際に「仕事が面白くなかった」「労働環境が悪かった」といった回答をする人がいるかもしれません。
実際にその通りだった可能性もありますが、しっかりと考えて転職を行ってきた人であれば、たとえ何度も職場が変わっていたとしても、前の職場を全否定するような回答はしません。
ネガティブな回答が多い応募者は、もし採用しても、同じような理由をつけて短期間で離職してしまう可能性があります。
実際に面接で行う質問は、事前に送られてきた履歴書や職務経歴書をしっかりと読み込み、その応募者に合わせたものを考えておきましょう。
応募者の志望動機や自己PRは、すでに完成したテンプレートが世の中に出回っているので、あまりあてにはなりません。
経験者であれば前の職場で担当していた業務や患者とのエピソード、未経験者であればその人が過去に取り組んだことや採用後に頑張りたいことなどに焦点を当てて、質問を考えていくことが大切です。
ほかにも、経験者であれば具体的に起きそうな歯科医院でのトラブルを提示し、その解決策を尋ねるといった質問も有効です。
こうした質問では、その人の課題解決能力や行動力、責任感や仕事への理解度などを確認することができます。
ケースごとにさまざまな質問を織り交ぜながら、自院にマッチする優秀な人材かどうかを確認しましょう。
採用活動で最初にすべきことは、自院が求める人物像を定めることです。
そのうえで、面接を通して、履歴書や職務経歴書だけではわからない業務経験値や能力、仕事に対する考え方や理解度などをしっかり確認することが大切です。
人手不足の今の時代だからこそ、優秀な人材を見極めましょう。
※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。