協議離婚をするとき、『公正証書』って必要?
このうち調停と訴訟は家庭裁判所を利用する手段であるため、離婚が成立するときには、裁判所において調停調書や判決書などの書面を作ってもらえます。
しかし、裁判所を利用しない協議離婚の場合には、自分たちで書面を作らなければ、紙媒体の資料が手元に残らないこととなります。
では、自分たちで離婚協議書を作ろうと思ったときは、どのようにすればよいのでしょうか。
そこで今回は、協議離婚の内容を残すのにふさわしいとされる『公正証書』について説明します。
協議離婚のときに作るべき書面とは?
そもそも協議離婚とは、夫婦が話し合い、役所に離婚届を提出することで成立するものです。
そのため、極端な話をすると、離婚は離婚届に署名捺印さえすれば可能であり、離婚協議書を作る必要はありません。
ただし、離婚届を提出することで決まるのは、「離婚する」という事実と、子どもがいるのであれば「親権者の指定」のみです。
つまり、離婚届の提出だけでは、離婚をするという事実以外の、財産分与をどうするか、養育費をどうするか、面会交流をどうするか、年金分割をどうするか……といった離婚条件を何一つ決めないまま離婚することになります。
もっとも、財産分与や年金分割については、離婚後2年以内であれば請求することができます。
養育費については、離婚後も請求できます。
ただし、その際、事実上請求時以降の分しかもらえないことになるため、金額や支払い方法などについて離婚時に決めておくことが大切です。
離婚をすると決めた理由には、夫婦の数だけさまざまなケースがあります。
もしもどちらか一方でも、どうしても離婚を急ぎたい、とにかく離婚だけでも成立させたいなどという理由がある場合には、離婚届のみを提出し、そのほかの条件は離婚後に検討する、もしくは特に条件を定めないということもありえるでしょう。
しかし、財産分与や養育費などについてきちんと条件を定めて離婚したい場合には、離婚前に離婚協議書を作成するべきといえます。
公正証書作成のメリット・デメリット
では、離婚協議書を作ろうと思った場合、どういった形式で作ればよいのでしょうか。
離婚協議書は、特に形式などの決まりはありません。
離婚条件というものも、当事者間の合意であるため、夫婦双方が記述内容の意味を理解できる形で残されていれば十分といえます。
とはいえ、離婚後に何らかの問題が生じて、裁判所の力を借りる必要が出たときのことを想定すると、当事者以外の第三者が見てもわかりやすいものが望ましいです。
そういった観点から、一般的な離婚協議書の雛形などを検索し、それを参考に作ってみることをおすすめします。
また、協議離婚書に書いてある内容と双方の意思が不適合であったり、法律的に認められないものであったりするおそれもあります。
可能であれば離婚届を提出する前に弁護士に相談し、条件の中身・形式などについて確認してもらうとよいでしょう。
そして、協議離婚の条件が決まったのであれば、『公正証書』を作成した方がよい場合もあります。
公正証書とは、公証役場というところで、公証人が作る書類です。
ちなみに、公証人というのは、元裁判官や元検察官が担当しています。
公正証書を作成する最大のメリットは、決めた離婚条件のなかに金銭給付の条項が入っている場合、支払えなかったときに公正証書を利用して速やかに強制執行をかけることができる点です。
一般的に、離婚条件として養育費の支払いや財産分与の分割払いを決めた場合などは、約束を反故にされる恐れがあるため、公正証書を作成するケースが多くあります。
他方で、公正証書の作成には、分量に応じて作成費用数万円を公証役場に納めなければならないこと、公証役場には夫婦双方が一緒に出向く必要があること(代理人を立てることも可能)といったデメリットがあります。
しかし、後々になって金銭未払いなどのトラブルが起きたときのために、裁判などを行わずに強制執行の手続きをとれるようにしておくことは、とても有用です。
公正証書は、必要書類を持って公証役場へ出向くことで作成できます。
協議離婚という方法を選んだのであれば、公正証書を作成すべきかどうか?という検討を忘れずに行うようにしましょう。
実際の作成について弁護士に依頼することも可能なので、困ったら専門家に相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。