中小企業経営者が押さえておくべき『連帯保証』のポイント
逆に、取引の相手方になった法人に対して連帯保証人をつけてもらうようにお願いをする場面もあるでしょう。
連帯保証は、債権回収を確実にするための手法であり、後から手続きに不備があったなどということにならないようにしなくてはなりません。
そこで今回は、連帯保証に関する押さえておきたいポイントを解説します。
そもそも保証契約、連帯保証契約とは?
保証契約とは、主たる債務(よくあるものとして、借金)を主たる債務者ではない者が代わって支払うことを約束する契約です。
保証人は主たる債務者の代わりになる立場であり、単純な保証契約では、主たる債務者に資力がない場合に支払えばよいとされています。
そのため、保証人は債権者から支払うように求められた場合に、まずは主たる債務者に支払いを求めるように反論したり、主たる債務者の財産から先に取り立てるように求めたりすることができます。
これらを『催告の抗弁権』または『検索の抗弁権』といいます。
単純な保証契約では保証人に抗弁(反論)が用意されており、実務上、単純な保証契約が用いられることは少ないといえます。
したがって、催告・検索の抗弁権がなく、主たる債務者と同時に支払いを求めることができる連帯保証契約がよく使われています。
連帯保証人は、主たる債務者に資力があったとしても、債権者から支払いを求められたときには応じなくてはなりません。
そのため、巷では「連帯保証人にはなるな」とよくいわれているのです。
このように保証契約(特に連帯保証契約)では、保証人が酷な立場に置かれることがあります。
主たる債務が事業用の借入れである場合には、金額が大きくなる可能性もあることから、安易に保証人になることを抑制する制度として『保証意思宣明公正証書』の作成が新設されています。
保証意思宣明公正証書が必要になるとき
保証意思宣明公正証書とは、主債務の内容や保証人になることの持つ意味合い、リスクについて理解したことを記載した公正証書です。
これまで主に中小企業や個人事業主が事業用資金の借り入れを行った際、安易に連帯保証人となった人が支払いに追われ、破綻する事例が多くみられました。
そのため、令和2年4月の民法の改正により、保証契約手続の一つとして義務化されました。
保証意思宣明公正証書は、保証契約締結の前1カ月以内に作成されなくてはなりません。
また、保証意思宣明公正証書は保証契約成立の要件とされているため、この公正証書を欠く場合、保証契約は成立しないことになります。
保証意思宣明公正証書を作成する必要があるのは、事業のために負担した貸金などの債務に対する保証契約です。
なお、法律上、対象は事業のための債務であり、主たる債務者が法人(会社)である場合だけでなく、個人事業の場合も対象となるため注意が必要です。
ただし、以下のような場合には、保証意思宣明公正証書の作成は不要とされています。
(1) 法人が保証人となる場合
(2) 主たる債務者が法人などの場合に、その法人の取締役や過半数の株を有する株主が保証人となる場合
(3) 主たる債務が個人事業の場合に、共同事業者、個人事業者の配偶者で主たる事業に関与している者が保証人になる場合
これらは、保証意思を厳密に確認しなくても、十分にリスクなどを把握・判断していると判断される一方で、保証意思宣明公正証書の作成を求めると費用や時間がかかりすぎるのを考慮してのことと考えられています。
以上のように、主たる債務者の類型や誰が保証人になるかによって、必要書類が異なります。
これから保証契約に関与していく可能性のある事業主は、保証意思宣明公正証書の要否について理解し、ケースによって正確に判断していくことが必要です。
※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。