登録数が年々増加! 『在宅療養支援歯科診療所』の指定を受けるには
同時に、在宅などでの療養を歯科医療面から支援する『在宅療養支援歯科診療所』(以下、歯援診)も増えています。
訪問歯科診療の需要は今後もますます高まることが予想されるなか、歯援診の施設基準届出について迷っている人も多いでしょう。
歯援診の届出の有無で、算定できる点数は大きく異なってきます。歯援診の届出を行ううえで気を付けるところを説明します。
療養を歯科医療面からサポートする歯援診
歯科医師や歯科衛生士が個人宅や施設を訪問して歯科診療を行う『訪問歯科診療』は、通院が困難な患者が算定対象となっています。
そして、その利用者のおよそ8割は75歳以上の後期高齢者だといわれています。
また、団塊の世代と呼ばれる約800万人が75歳以上となる2025年には、国民の5人に1人が後期高齢者になる計算です。
そのような超高齢社会の到来により、在宅医療のニーズがさらに高まると考えられています。
より高い点数の算定を目指す場合は、歯援診の届出を検討してみるとよいでしょう。
歯援診とは、ほかの医療機関や地域包括支援センターなどと連携を図りながら、在宅や社会福祉施設などでの患者の療養を、歯科医療面からサポートする歯科診療所のことです。
歯援診の届出を行うと、歯科訪問診療料の歯科訪問診療補助加算や歯科疾患在宅診療管理料などの算定の際に、より高い点数を算定できるようになります。
歯援診として届出していない歯科診療所でも訪問歯科診療を行うことは可能ですが、算定できる歯科訪問診療料の加算が限られます。
歯援診の届出を行っている医療機関数は、制度がスタートした2008年時点で3,000カ所ほどでしたが、その後は順調に増加していき、2018年には、在宅療養支援歯科診療所1、2の区分が創設され、合わせて1万を超え、2019年に約1万1,000カ所に達しました。
歯援診を届け出るには、厚生労働省が定めた施設基準を満たす必要があります。
施設基準にはさまざまな項目があり、これから届出を行う歯科診療所が特に気にしなければならないのは、歯科訪問診療料の算定実績です。
歯援診は、『在宅療養支援歯科診療所1(歯援診1)』と『在宅療養支援歯科診療所2(歯援診2)』に分かれており、基本的には歯援診1のほうが歯援診2よりも高い点数を算定できます。
その代わり施設基準に関しては、歯援診2よりも歯援診1のほうが多くの実績を求められます。
歯援診1は施設基準の条件がむずかしい分、高い点数を算定することができるというわけです。
歯援診を届け出るために必要な算定実績
訪問診療料は、診療に要した時間や診療した同一建物居住者の人数などによって『歯科訪問診療料1』『歯科訪問診療料2』『歯科訪問診療料3』の3つに分かれます。
この訪問診療料1と2を算定した回数が、歯援診を届け出るための算定実績となります。
歯援診の施設基準の一つである歯科訪問診療料の算定実績は、2022年の診療報酬改定で「過去1年間に歯科訪問診療料1・2を合算した算定回数実績が、歯援診1では合計18回以上、歯援診2は合計4回以上算定していること」となりました。
改定前は、歯援診1は過去1年間の歯科訪問診療料1・2の算定回数が合計15回以上、歯援診2は合計10回以上となっており、歯援診1については要件が引き上げられましたが、歯援診2については大幅に引き下げられたかたちになりました。
歯援診2の要件の緩和は、2018年度の診療報酬改定で施設基準が厳しくなり、歯援診の届出数が減少したことが背景になっています。
歯援診の施設基準は、算定実績以外にも、高齢者の特性や口腔機能などに関する研修を受けた常勤の歯科医師の配置や、歯科衛生士の配置、後方支援医療機関との連携体制の構築や、連携実績、歯科訪問診療を行った患者数の割合など、細かく施設基準での要件が定められています。
自院の届出状況が不明な場合は、地方厚生局のサイトの届出受理状況から自院の施設基準の届出状況を確認することができます。
歯援診の届出を検討しているのであれば、各自治体の歯科保険医協会や日本訪問歯科協会のホームページなどで施設基準について確認しておきましょう。
※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。