自家製酒には要注意! 『酒造法』に違反してしまう可能性
この酒類を製造したり、販売したりするには、酒税法に基づく製造免許や販売業免許が必要です。
もし、免許のないまま酒類を製造すると酒税法違反となり、10年以下の懲役または100万円以下の罰金に、免許のないまま酒類を販売すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
しかし、一定の条件のもとに自分で果実酒などをつくる行為については、例外的に酒類の製造行為にはならないルールになっています。
梅酒などに代表される自家醸造を行う際の注意点を説明します。
20度以下の酒類をベースに使うのはNG
毎年5月末~6月中旬頃になると、スーパーなどの売り場で青梅が並びます。
青梅を氷砂糖と一緒にホワイトリカーなどに漬け込むと、夏には飲み頃を迎える梅酒が出来上がります。
梅酒のつくり方は書籍や雑誌、Webサイトなどで紹介されており、近年は定番のホワイトリカー以外にも、ジンやウォッカ、日本酒などで漬ける方法も取り上げられています。
ここで注意したいのが、青梅を漬けるベースとなる酒類のアルコール度数です。
酒税法では、アルコール度数が20度以上で酒税が課税済みの酒類を使う場合に限り、果実酒などの自家醸造を例外的に認めています。
梅酒づくりで一般的に使われるホワイトリカーは焼酎の一種で、その多くはアルコール度数が35度です。
また、スーパーなどで販売されている商品はどれも課税済みなので、スーパーで購入したホワイトリカーを梅酒づくりで使用する場合は酒税法に抵触しません。
しかし、日本酒などの酒類をベースに使う場合は、アルコール度数に注意する必要があります。
日本酒にはアルコール度数が20度以下のものも多く、もし、アルコール度数の低い日本酒をベースに梅を漬けてしまうと、酒税法違反となってしまうのです。
かつて、テレビの料理番組でアルコール度数の低いみりんをベースとした梅酒のつくり方が紹介され、問題になったこともありました。
そもそもお酒は、酵母菌という微生物が糖分に働きかけ、アルコールと炭酸ガスを発生させる『アルコール発酵』によってつくられます。
たとえば、ワインは酵母菌がぶどう果汁をアルコール発酵させることでつくられます。
アルコール度数20度以上の環境では、この酵母菌が活動できず、アルコール発酵が行われることもありません。
しかし、アルコール度数20度以下の環境では、酵母菌によってアルコール発酵が進み、アルコール度数を高めてしまう可能性があります。
つまり、お酒の発酵が進むと新たなお酒を醸造する行為にあたってしまうのです。
そのため、自家醸造ではアルコール度数20度以下の酒類を使うことを禁じています。
ただ、実際にはアルコール度数12度~18度ほどで、酵母菌の活動は鈍化もしくは停止するといわれています。
果実酒は正しくつくって家族だけで楽しもう
自家醸造の過程で以下の原材料を加えることも、日本酒や焼酎、ワインやビールなどの製造となってしまうため、禁止されています。
(1)米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ、もしくはでん粉またはこれらのこうじ
(2)ぶどう(やまぶどうを含む)
(3)アミノ酸もしくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物もしくはその塩類、有機酸もしくはその塩類、無機塩類、色素、香料または酒類のかす
(酒税法施行規則13条3項抜粋)
また、果実酒は梅酒以外にも、りんご酒やレモン酒、いちご酒やさくらんぼ酒など、さまざまな種類があります。
好みのフルーツでオリジナルの果実酒づくりにチャレンジするのもよいでしょう。
ただし、自家醸造の果実酒は、他人に提供・販売することができません。
家を訪ねてきた友人に自家製の梅酒をふるまうだけでも、酒税法違反となってしまいます。
あくまで、自分もしくは家族だけで楽しむようにしましょう。
当然、家族であっても20歳未満の者に飲ませてはいけません。
近年は自宅で自家製ビールをつくることができるビールキットなども販売されています。
しかし、説明書通りにつくればアルコール度数1%以上にはならないため、問題ありません。
前述の通り、酒類とはアルコール度数1%以上のものを指します。
アルコール度数が1%以上になると酒税法違反になるので、注意してください。
自家製酒は旬の恵みを楽しめるのが魅力です。ルールを守り、家族で楽しみましょう。
※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。