社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

相続税がかかる場合とは? 知っておきたい対象財産や控除額

23.07.04
業種別【不動産業(相続)】
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財産を相続することになったとき、頭を悩ませるのが相続税です。
実は相続税は、相続のすべてにかかるわけではなく、相続税の対象となる場合とならない場合があります。
また、相続財産から控除できる基礎控除もあります。
今回は、相続税の対象となる財産や、基礎控除額の計算方法などについて説明します。
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基礎控除額以下であれば相続税はかからない

ある人が死亡すると、法的にその人の財産や権利などを特定の人が引き継ぐ『相続』が発生します。
相続した財産の額から被相続人が残した借金や葬式費用を差し引いた額が、一定の基準額(基礎控除)以下であれば、相続税の申告・納付は不要です。
しかし、基準額を超えた場合、相続税の申告・納付をする必要があります。

相続税の申告・納付は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」にする必要があります。
相続税の申告・納付をすべきであるにもかかわらずしなかった場合、無申告加算税や延滞税が課されたり、本来であれば用いることができた有利な制度が使えなくなったりといった不利益を被る可能性があります。

ところで、相続税は誰に課されるものなのでしょうか。
そもそも相続税は、被相続人の財産を相続や遺贈(死因贈与含む)、相続時精算課税にかかる贈与によって取得した場合に、その取得した財産の価額をもとに課される税金です。
そのため、相続、遺贈、相続時精算課税にかかる贈与により財産を取得した人=相続税を課される人ということになり、相続人などがこれに当たります。

相続人は、相続により財産を取得する可能性があり、遺贈などによっても財産を取得する可能性があります。
また、遺贈は第三者に対してもできるため、遺贈により財産を取得した人も相続税の申告や納税が必要になることがあります。

相続税が課される財産にはどのようなものがあるのでしょうか。相続税の対象となる一般的な財産は以下の通りです。
(1)被相続人が亡くなった時点において被相続人が所有していた財産
(2)みなし相続財産
(3)被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
(4)被相続人から相続開始前3年以内(※税制改正により、2024年1月1日以降の贈与については相続開始前7年以内)に取得した暦年課税適用財産

次に、項目ごとに詳しくみていきましょう。

生前贈与でも相続税の対象になるものに注意

相続税が課される財産とは、原則として、金銭に見積もることのできる経済的価値のあるものです。

(1)の被相続人が亡くなった時点で被相続人が所有していた財産は『遺産』『相続財産』と呼ばれ、現金、預貯金、不動産(土地や建物など)、有価証券(株など)、自動車などがこれに当たります。
また、被相続人が死亡時に有していた貸付金(たとえば、被相続人が生前、誰かに貸していて未返済のままのもの)、宝石や絵画などの動産類も財産に該当します。

(2)のみなし相続財産は、被相続人の死亡に伴い支払われる死亡保険金や死亡退職金などです。
死亡保険金や死亡退職金は、民法上は遺産や相続財産には該当しませんが、相続税を計算する際には、相続財産とみなして計上されます。
ただし、受取人が相続人の場合は一定の金額までは非課税となっています。
『500万円×相続人の数』が非課税限度額となっており、取得した死亡保険金などが非課税限度額以内であれば課税されません。

(3)の被相続人から取得した相続時精算課税適用財産は、相続時精算課税制度を使い、生前に被相続人から贈与された財産です。
相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合に2,500万円までは贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。
贈与者が亡くなった時には、この制度を適用した贈与財産の額と相続や遺贈により取得した財産の額の合計から相続税額を計算し、その税額から、すでに納付した相続時精算課税に係る贈与税額を控除した金額を納税します。

こちらも民法上、相続財産ではありませんが(ただし、いわゆる特別受益に当たる可能性はあります)、相続税の課税において財産として計上されるものです。

(4)の被相続人から相続開始前3年(※但し、改正前が前提)以内に取得した暦年課税適用財産は、暦年課税贈与を受けた3年以内に贈与者が亡くなった場合の財産です。
被相続人が亡くなる前3年以内に被相続人から暦年課税に係る贈与によって取得した財産は、相続税の課税対象となります。
なお、3年以内であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算されます。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。

相続税は、すべての相続にかかるわけではありません。
相続税申告の要否を決めるものとして、『基礎控除額』というものがあります。

基礎控除額は、<3,000万円+(600万円×法定相続人の数)>によって計算されます。
たとえば、相続人が3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。
『相続税が課される財産の価額の合計額』から『相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用の金額の合計額』を差し引いた金額が、基礎控除額を超えていなければ、相続税の申告・納税は不要となります。

なお、基礎控除額を超えているかどうかは、財産全体で見ます。
たとえば上記のケースで、遺産の総額が1憶円であり、債務・葬式費用の合計が2,000万円であれば、差し引き8,000万円となります。
基礎控除額の4,800万円を超えるため、この場合は申告納税が必要となります。

相続は突然起きることが多いものです。
相続税の対象になるもの・ならないものをよく理解し、早めの対策を心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2023年7月現在の法令・情報等に基づいています。