介護業の残業事情は? サービス残業になりやすい業務のポイント
慢性的な人手不足にある介護職は、人を相手にした仕事であるためイレギュラーな業務も多く、時間通りに終了できないこともあります。
しかし、残業が日常的になっていたり、残業分の賃金が支払われていなかったりするのはよくありません。
サービス残業は法律違反となります。
今回は、サービス残業が発生する背景と、サービス残業に含まれやすい業務などについて説明します。
しかし、残業が日常的になっていたり、残業分の賃金が支払われていなかったりするのはよくありません。
サービス残業は法律違反となります。
今回は、サービス残業が発生する背景と、サービス残業に含まれやすい業務などについて説明します。
4人に1人がサービス残業を行っている
人の命を預かり、時間に追われながら次々と業務を進めていかなければならない介護職は、身体的にも肉体的にも厳しい職業であるといえます。
一方、社会の少子高齢化に伴い、介護サービスや介護施設の利用者は増えています。
それゆえに深刻な人手不足は続き、国による介護分野への未経験者参入を促進する施策などを投じても、なかなか状況は好転しないというのが現状です。
そこへ加えて、2019年に施行された『働き方改革関連法案』で、時間外労働の上限規制が2020年に中小企業も対象となったことも、介護事業所が抱える人材不足の悩みに影響を与えています。
利用者が増えるなか、人材不足のまま残業の上限規制が導入されてしまっては、業務量に対する人員の少なさがより大きな問題となってきます。
加速化する人材不足問題の対応に各事業所が追われるなか、新たな懸念事項として浮かび上がってくるのが、不払いの時間外労働、つまりサービス残業の常態化です。
全国労働組合総連合が発表した『介護労働実態調査報告書』(2019年)によると、施設介護労働者の4人に1人がサービス残業を行っているという調査結果が報告されています。
法改正以降、介護事業者においては、サービス残業の発生により一層の注意を払わなければなりません。
サービス残業が発生してしまう原因には、「経営者のコスト削減を目的とした指示によるもの」、「労働時間管理に対する法律知識が欠如しているため」、「労働時間の管理がずさんであるため」などが考えられます。
なかには、経営者や管理者からの指示がなくても、職場の状況に気を使い、無賃金で働いてしまうケースもあるでしょう。
サービス残業は労働基準法違反となるため、放置しておくと従業員の退職や労使トラブルに発展する可能性が高くなります。
サービス残業が発生していないか、従業員の業務内容や就業時間をよく確認することが大切です。
業務終了後の事務作業は要注意
では、業務上のどのようなシーンが、サービス残業に陥りやすいのでしょうか。
具体的な業務は以下の通りです。
・業務時間開始前に引き継ぎのために出勤しているが、労働時間に含まれていない
・業務終了後に社内研修や勉強会が実施されている
・業務終了後にミーティングが実施されている
・訪問介護の居宅間の移動時間が労働時間に含まれていない(自由な補償がない場合)
・勤務時間外に介護記録の記入や入力をしている
・勤務時間外に利用者やその家族の対応を引き受けることが多い
・交代勤務後の時間が労働時間として記録されていない
まずは、自社がこのような事例に該当していないか、現在の労働状況を確認してみましょう。
一つでも該当する事例があれば、早急に改善策を講じる必要があります。
また、労働基準法の改正により、2023年4月1日から、中小企業を対象に月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上に引き上げられました。
これまでは2010年に施行された改正労働基準法に基づき、大企業は月60時間を超えた時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払うよう定められており、中小企業の割増賃金率はしばらくの間、25%以上のままとする猶予期間が設けられていました。
しかし、2019年施行の『働き方改革法案』の成立により猶予期間が廃止され、2023年4月1日からは中小企業にも、月60時間以上の時間外労働について割増率50%以上の割増賃金を支払う義務が生じました。
サービス残業をなくすには、正規の残業代を支払うことが大切です。
ただ、上記のような割増賃金の増加もあり、人件費ばかりがかさむと介護事業所の経営にも支障が出てしまいます。
介護事業者には、利用者への提供サービスの質を低下させることなく、スタッフ一人ひとりの業務負担を削減するような取り組みが必要です。
介護専門職や介護助手といった役割ごとに業務をきちんと分けて、書類の電子化やロボット・センサーなどの活用で業務の効率化を図るなど、現在の業務内容に組み込んでいけることから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年6月現在の法令・情報等に基づいています。
人の命を預かり、時間に追われながら次々と業務を進めていかなければならない介護職は、身体的にも肉体的にも厳しい職業であるといえます。
一方、社会の少子高齢化に伴い、介護サービスや介護施設の利用者は増えています。
それゆえに深刻な人手不足は続き、国による介護分野への未経験者参入を促進する施策などを投じても、なかなか状況は好転しないというのが現状です。
そこへ加えて、2019年に施行された『働き方改革関連法案』で、時間外労働の上限規制が2020年に中小企業も対象となったことも、介護事業所が抱える人材不足の悩みに影響を与えています。
利用者が増えるなか、人材不足のまま残業の上限規制が導入されてしまっては、業務量に対する人員の少なさがより大きな問題となってきます。
加速化する人材不足問題の対応に各事業所が追われるなか、新たな懸念事項として浮かび上がってくるのが、不払いの時間外労働、つまりサービス残業の常態化です。
全国労働組合総連合が発表した『介護労働実態調査報告書』(2019年)によると、施設介護労働者の4人に1人がサービス残業を行っているという調査結果が報告されています。
法改正以降、介護事業者においては、サービス残業の発生により一層の注意を払わなければなりません。
サービス残業が発生してしまう原因には、「経営者のコスト削減を目的とした指示によるもの」、「労働時間管理に対する法律知識が欠如しているため」、「労働時間の管理がずさんであるため」などが考えられます。
なかには、経営者や管理者からの指示がなくても、職場の状況に気を使い、無賃金で働いてしまうケースもあるでしょう。
サービス残業は労働基準法違反となるため、放置しておくと従業員の退職や労使トラブルに発展する可能性が高くなります。
サービス残業が発生していないか、従業員の業務内容や就業時間をよく確認することが大切です。
業務終了後の事務作業は要注意
では、業務上のどのようなシーンが、サービス残業に陥りやすいのでしょうか。
具体的な業務は以下の通りです。
・業務時間開始前に引き継ぎのために出勤しているが、労働時間に含まれていない
・業務終了後に社内研修や勉強会が実施されている
・業務終了後にミーティングが実施されている
・訪問介護の居宅間の移動時間が労働時間に含まれていない(自由な補償がない場合)
・勤務時間外に介護記録の記入や入力をしている
・勤務時間外に利用者やその家族の対応を引き受けることが多い
・交代勤務後の時間が労働時間として記録されていない
まずは、自社がこのような事例に該当していないか、現在の労働状況を確認してみましょう。
一つでも該当する事例があれば、早急に改善策を講じる必要があります。
また、労働基準法の改正により、2023年4月1日から、中小企業を対象に月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上に引き上げられました。
これまでは2010年に施行された改正労働基準法に基づき、大企業は月60時間を超えた時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払うよう定められており、中小企業の割増賃金率はしばらくの間、25%以上のままとする猶予期間が設けられていました。
しかし、2019年施行の『働き方改革法案』の成立により猶予期間が廃止され、2023年4月1日からは中小企業にも、月60時間以上の時間外労働について割増率50%以上の割増賃金を支払う義務が生じました。
サービス残業をなくすには、正規の残業代を支払うことが大切です。
ただ、上記のような割増賃金の増加もあり、人件費ばかりがかさむと介護事業所の経営にも支障が出てしまいます。
介護事業者には、利用者への提供サービスの質を低下させることなく、スタッフ一人ひとりの業務負担を削減するような取り組みが必要です。
介護専門職や介護助手といった役割ごとに業務をきちんと分けて、書類の電子化やロボット・センサーなどの活用で業務の効率化を図るなど、現在の業務内容に組み込んでいけることから始めてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年6月現在の法令・情報等に基づいています。