社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

合弁会社を設立するコツと得られるメリット

23.05.30
ビジネス【税務・会計】
dummy
合弁会社とは、複数の企業が共同で事業を行うことを目的に設立する会社のことで、『共同出資会社』や『ジョイント・ベンチャー』などとも呼ばれます。
合弁会社は、共同で取り組む必要のある大型の新規事業や、海外展開などを行う際に利用されます。
今回は、合弁会社を設立する際の注意点や、事前に決めておきたいことなどを説明します。
dummy
事業の展開につながる合弁会社設立

現在、日本の会社法では、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4種類が法人の形態として認められています。
合弁会社は会社法で規定されるものではなく、公正取引委員会の企業結合ガイドラインで『共同出資会社』と呼ばれているもののことです。
2つ以上の企業が共同で事業を行うために設立され、法人登記をする際には、株式会社や合同会社として申請することになります。

そもそも合弁会社という概念が日本で広まったのは、外国資本の企業による日本進出がきっかけでした。
かつて日本では外国資本100%の企業が日本市場へ参入するのを認めておらず、外国の企業が日本で事業展開するには、日本企業と共同で合弁会社を設立する必要がありました。
これを『外資規制』といいます。
各国が国内産業を保護する目的で、何らかの形で外貨規制を行っているのは一般的なことであり、日本企業が海外進出する際も現地企業と合弁会社を設立する例は珍しくありません。
このように合弁会社は、その市場のノウハウを持つ企業と合弁会社を設立して市場参入を図ったり、複数の企業で合弁会社を設立して、1社では請け負えない大型のプロジェクトを受注したりといったケースで設立されます。

合弁会社の利点は、相手企業の強みを活かせるということです。
1社が抱えることのできる技術力やノウハウ、資金面には限界があります。
お互いの企業がそれぞれの経営資源を持ち寄ることで、コストを抑えながら新規事業を立ち上げられるのは、大きなメリットといえるでしょう。

また、合弁会社を設立することで、リスクが分散できるというメリットもあります。
合弁会社には複数の企業が出資しているため、たとえ事業が失敗に終わったとしても、損失を出資金だけにとどめることができます。


合弁会社のカギとなる出資比率と撤退条件

多くのメリットがある合弁会社ですが、デメリットについても認識しておく必要があります。

合弁会社は同じ市場の同業他社と提携することも少なくありません。
相手企業の技術やノウハウを活用できるということは、自社の技術やノウハウも相手企業に流出してしまう恐れがあることを意味します。
技術やノウハウの流出は企業にとって大きなリスクです。
合弁会社を設立する前に、本当に信用に足る相手なのかを調査したうえで、秘密保持契約を締結するなど、知財などの流出を防ぐ手だてを整えましょう。

また、経営方針を巡って、出資企業同士が対立してしまうことも考えられます。
対立構造は意思決定を遅らせるマイナス要因であり、スピード感が求められる新規事業などにおいては大きなデメリットになります。
このような事態を避けるためには、出資比率に前もって差をつけておく方法があります。
2つの企業が合弁企業を設立する場合は、均等に50:50の割合で出資するケースが多いようですが、敢えてどちらかの企業の割合を多めにして、優位性を持たせることがあります。
メイン企業とサブ企業という関係性をつくることで、意思決定のスピードを早めることができます。
出資比率は配当の分配や、経費負担の割を決める際にも使用されるため、前もって合意しておきましょう。

また、撤退条件も事前に決めておかなければなりません。
事業がうまくいかずに業績が伸びないのであれば、合弁会社を解散し、提携を解消させる必要があります。
あらかじめ撤退するラインについて、共通認識を持っておくことが大切です。

合弁会社は別の企業同士が共同で事業を行うため、さまざまな場面で相互理解が重要になります。
特に海外企業との合弁会社では言語や商習慣が異なるため、すれ違いが起きやすく、トラブルに発展することもあります。
設立する際はメリットとデメリットをしっかりと把握し、専門家とも相談しながら進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。