中小企業のメンタルヘルス対策。導入にあたってのヒント
従業員が十分なパフォーマンスを発揮するためには、精神的な健康も欠かせません。
そこで近年、厚生労働省はさまざまな指針を発表するなど、従業員の精神的な健康を保つメンタルヘルス対策が重要度を増しています。
今回は、メンタルヘルス対策の基本的な考え方に加え、中小企業が取り組む際のヒントを紹介します。
そこで近年、厚生労働省はさまざまな指針を発表するなど、従業員の精神的な健康を保つメンタルヘルス対策が重要度を増しています。
今回は、メンタルヘルス対策の基本的な考え方に加え、中小企業が取り組む際のヒントを紹介します。
メンタルヘルス対策の必要性と基本の考え方
近年、職場での業務負担や人間関係によるストレスなどから、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症するケースが増えています。
厚生労働省の発表によれば、精神疾患に該当する『精神障害』などによる労災請求件数は、平成24年度の1,257件から、令和3年度には2,346件へ、支給決定件数も平成24年度の475件から令和3年度には1,953件と、この10年間で請求件数は2倍弱、支給決定件数は約4倍に増加しました。
ストレスの原因となる要因はさまざまです。
働く人が心の健康を保つためには、自身でメンタルの不調に気づき、セルフケアを進める必要があります。
しかし、仕事上の問題や職場でのストレスの原因は、個人の取り組みだけでは取り除くことができないものも多く存在しています。
そのため、事業者がメンタルヘルス対策の重要性を理解し、組織的・計画的に対策を進めることが、従業員の心の健康を保つ鍵となります。
職場でのメンタルヘルス対策としては、まず、『セルフケア』『ラインによるケア』『事業場内産業保健スタッフによるケア』『事業場外資源によるケア』という4つのケアを確立していくことを考えていきましょう。
●セルフケア
セルフケアでは、従業員が自らケアを行える環境を構築します。ストレスやメンタルヘルスケアに対しての理解を深める教育研修の実施や、自身のストレスへの気づきにつながるストレスチェック制度などを導入します。
●ラインによるケア
部長や課長などの管理職が部下の精神状態を把握し、ケアを行っていきます。部署ごとの上長から部下、部下から上長へといった伝達導線を駆使したケアには、管理監督者の部下の異変の早期把握や、相談への対応、職場復帰への支援などが含まれます。
●事業場内産業保健スタッフによるケア
事業場内の産業保健スタッフによるケアです。産業保健スタッフは、従業員と管理監督者に対して支援を実施し、セルフケアや、ラインによるケアが効果的に行える体制を構築します。
●事業場外資源によるケア
事業場外資源である外部専門家を活用して行うケアです。外部専門家としては、地域のクリニックや病院などがあげられ、病院での従業員の治療のほかに、職場復帰支援のアドバイスを受けることなどになります。
中小企業でも取り組める一次予防とは
厚生労働省は企業のメンタルヘルス対策の指針として、平成18年に『メンタルヘルス指針』を策定したほか(平成27年改正)、平成27年には『ストレスチェック制度』を立ち上げ、50人以上の事業場において年1回のストレスチェックの実施と、高ストレス者への面接指導を義務化しました。
これに加えて平成29年には、『職場におけるメンタルヘルス対策について』を発表し、企業のメンタルヘルス対策に関するより具体的な指針を出しました。
そこでは、職場で取り組むべきメンタルヘルス対策には3つの柱があるとされ、メンタルヘルス不調を未然に防止する『一次予防』、メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応を行う『二次予防』、精神的な変調を来した従業員をサポートし、職場復帰を支援する『三次予防』が提示されています。
●一次予防
一次予防は、ストレスなどによる精神障害の発生を未然に防止することを目的として行われます。具体的な施策としては、ストレス緩和ケアや、ストレスマネジメント研修、ストレスチェック制度の導入などを進めます。
●二次予防
二次予防は、早期発見を目的とした対策です。産業医との連携や、相談窓口の設置、外部専門サービスなどを導入することによって、仮に精神障害が発生したとしても、早期に異変を把握することが可能となります。
●三次予防
三次予防は、精神障害によって、休職を余儀なくされた場合の職場復帰の支援を行います。職場復帰支援プログラムの策定や、職場復帰支援プランなどを設けることによって、復職しやすく、かつ再発を防止できる職場環境を構築します。
一次予防から三次予防のなかで、もっとも重要なのは一次予防です。
一次予防は、メンタル不調の原因となる職場環境を改善し、メンタル不調が深刻化するのを防ぐ取り組みです。
前述した『ラインによるケア』がこれにあたります。資金や人的ゆとりの少ない事業所でも、上司と部下で行う業務上の情報伝達や部署内でのコミュニケーションのなかで、メンタルヘルス対策を意識した働きかけを行うことなどが考えられます。
具体的には、日頃の挨拶・声かけや、社内の交流会などによって職場の雰囲気を改善する、談話室や休憩コーナーを設置して適切な休息を取る環境を整える、お互いを尊重し合うようなコミュニケーション方法や傾聴法に関する研修によってコミュニケーションの改善に努める、メンタルへルス対策に関するリーフレットを配布するなどして職場全体での理解を深めるといった取り組みがあります。
さらに、メンタル不調についての相談窓口設置や外部の相談機関の紹介(二次予防)、職場復帰支援施策(三次予防)などを進めることができるとなおよいでしょう。
従業員の心の健康を保ち、従業員が生き生きと働ける職場環境をつくっていくことは、事業者にとっても重要な課題です。
まだ取り組みを進めていない企業は、できることからはじめてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています。
近年、職場での業務負担や人間関係によるストレスなどから、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症するケースが増えています。
厚生労働省の発表によれば、精神疾患に該当する『精神障害』などによる労災請求件数は、平成24年度の1,257件から、令和3年度には2,346件へ、支給決定件数も平成24年度の475件から令和3年度には1,953件と、この10年間で請求件数は2倍弱、支給決定件数は約4倍に増加しました。
ストレスの原因となる要因はさまざまです。
働く人が心の健康を保つためには、自身でメンタルの不調に気づき、セルフケアを進める必要があります。
しかし、仕事上の問題や職場でのストレスの原因は、個人の取り組みだけでは取り除くことができないものも多く存在しています。
そのため、事業者がメンタルヘルス対策の重要性を理解し、組織的・計画的に対策を進めることが、従業員の心の健康を保つ鍵となります。
職場でのメンタルヘルス対策としては、まず、『セルフケア』『ラインによるケア』『事業場内産業保健スタッフによるケア』『事業場外資源によるケア』という4つのケアを確立していくことを考えていきましょう。
●セルフケア
セルフケアでは、従業員が自らケアを行える環境を構築します。ストレスやメンタルヘルスケアに対しての理解を深める教育研修の実施や、自身のストレスへの気づきにつながるストレスチェック制度などを導入します。
●ラインによるケア
部長や課長などの管理職が部下の精神状態を把握し、ケアを行っていきます。部署ごとの上長から部下、部下から上長へといった伝達導線を駆使したケアには、管理監督者の部下の異変の早期把握や、相談への対応、職場復帰への支援などが含まれます。
●事業場内産業保健スタッフによるケア
事業場内の産業保健スタッフによるケアです。産業保健スタッフは、従業員と管理監督者に対して支援を実施し、セルフケアや、ラインによるケアが効果的に行える体制を構築します。
●事業場外資源によるケア
事業場外資源である外部専門家を活用して行うケアです。外部専門家としては、地域のクリニックや病院などがあげられ、病院での従業員の治療のほかに、職場復帰支援のアドバイスを受けることなどになります。
中小企業でも取り組める一次予防とは
厚生労働省は企業のメンタルヘルス対策の指針として、平成18年に『メンタルヘルス指針』を策定したほか(平成27年改正)、平成27年には『ストレスチェック制度』を立ち上げ、50人以上の事業場において年1回のストレスチェックの実施と、高ストレス者への面接指導を義務化しました。
これに加えて平成29年には、『職場におけるメンタルヘルス対策について』を発表し、企業のメンタルヘルス対策に関するより具体的な指針を出しました。
そこでは、職場で取り組むべきメンタルヘルス対策には3つの柱があるとされ、メンタルヘルス不調を未然に防止する『一次予防』、メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応を行う『二次予防』、精神的な変調を来した従業員をサポートし、職場復帰を支援する『三次予防』が提示されています。
●一次予防
一次予防は、ストレスなどによる精神障害の発生を未然に防止することを目的として行われます。具体的な施策としては、ストレス緩和ケアや、ストレスマネジメント研修、ストレスチェック制度の導入などを進めます。
●二次予防
二次予防は、早期発見を目的とした対策です。産業医との連携や、相談窓口の設置、外部専門サービスなどを導入することによって、仮に精神障害が発生したとしても、早期に異変を把握することが可能となります。
●三次予防
三次予防は、精神障害によって、休職を余儀なくされた場合の職場復帰の支援を行います。職場復帰支援プログラムの策定や、職場復帰支援プランなどを設けることによって、復職しやすく、かつ再発を防止できる職場環境を構築します。
一次予防から三次予防のなかで、もっとも重要なのは一次予防です。
一次予防は、メンタル不調の原因となる職場環境を改善し、メンタル不調が深刻化するのを防ぐ取り組みです。
前述した『ラインによるケア』がこれにあたります。資金や人的ゆとりの少ない事業所でも、上司と部下で行う業務上の情報伝達や部署内でのコミュニケーションのなかで、メンタルヘルス対策を意識した働きかけを行うことなどが考えられます。
具体的には、日頃の挨拶・声かけや、社内の交流会などによって職場の雰囲気を改善する、談話室や休憩コーナーを設置して適切な休息を取る環境を整える、お互いを尊重し合うようなコミュニケーション方法や傾聴法に関する研修によってコミュニケーションの改善に努める、メンタルへルス対策に関するリーフレットを配布するなどして職場全体での理解を深めるといった取り組みがあります。
さらに、メンタル不調についての相談窓口設置や外部の相談機関の紹介(二次予防)、職場復帰支援施策(三次予防)などを進めることができるとなおよいでしょう。
従業員の心の健康を保ち、従業員が生き生きと働ける職場環境をつくっていくことは、事業者にとっても重要な課題です。
まだ取り組みを進めていない企業は、できることからはじめてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています。