社会保険労務士法人なか/労働保険事務組合福働会/福働会中部支部

なぜ毎年改正?いつから実施?知っておきたい税制改正の基礎知識

23.04.11
ビジネス【税務・会計】
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法人は法人税を筆頭に、さまざまな税金を納める義務があります。
税金に関する法律は、毎年改正されるため、経営者はその動きを注視する必要があります。
今回は、企業経営にも深く関係する税制改正の流れを理解し、チェックするポイントについて説明します。
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経済社会の変化に対応するための税制改正

税制改正とは、税金に関する各種法律を改正することを意味します。
税金の額や内容などは社会の変化や国の財政状況を踏まえて、その時々の課題を中心に国会で議論されたうえで決定されます。
たとえば2023年初頭には、財源確保のために、法人税や所得税に付加税を課すかどうかが議論されました。
政府はその目的を、『日本の防衛力強化』と説明していました。

また、昨今の消費税の引き上げなどは、少子高齢に伴う社会保障制度の財源確保が目的とされています。
税負担は公平である必要があり、特定の世代に限らず広く負担を求めるために、国民全員に関わりのある消費税の増税を求めたというわけです。

税制改正は、毎年4月頃に与党の『税制調査会』による総会開催からスタートします。
税制調査会は、税制に関する審議や調査を行う内閣府の機関で、政府税制調査会が中長期的視点で税制について検討する一方、与党税制調査会が各府省庁からの要望を集約し、翌年度以降の税制改正の審議を行います。
外部有識者のヒアリングを行うなど、税制調査会内で審議を重ね、その年の12月中頃に法案の原案となる『与党税制改正大綱』が取りまとめられます。

この与党税制改正大綱を踏まえて、税制改正の大綱が『閣議』に提出されます。
閣議とは、総理官邸の閣議室で開催される内閣総理大臣と国務大臣による会議のことで、そこで決定された税制改正の大綱と予算案をベースに法案が作成されます。

そして、翌年1月頃に政府によって『税制改正の大綱』が発表されます。
これはあくまで税制改正の骨子となるもので、そのまま採用されるわけではありません。
しかし、翌年度以降に適用される可能性のある法案の内容を知ることができるため、ニュースや省庁のWebサイトなどでチェックしておきましょう。


令和5年度税制改正で注目するべきポイント

税制改正の法案は、閣議決定された税制改正の大綱をもとに、国税は財務省が、地方税は総務省が作成し、2月頃に通常国会へ提出されます。
提出された法案が衆議院と参議院の両院で審議され、可決すれば、成立となります。
成立は3月末までに行われ、改正法に定められた施行日に施行されることになります。

『令和5年度税制改正の大綱』は、2022年12月23日に閣議決定されました。
個人所得課税に関連したものでは『NISA制度の抜本的拡充・恒久化』や『スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設』など、個人の資産を貯蓄から投資に振り分けることで資産を倍増させ、より公平で中立的な税制の実現に向けた税制の導入が検討されていることがわかります。

一方、法人に関する税では、中小企業の成長促進を目的に、『研究開発税制の見直し』や『オープンイノベーション促進税制の見直し』が図られています。
また、電磁的記録の保存に関する猶予措置などを講じた『電子帳簿等保存制度の見直し』や、無申告加算税の割合を引き上げる『課税・徴収関係の整備・適正化』なども経理処理に深く関連する変更です。
インボイス制度に関して、これまで免税事業者であった人がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置が決定しました。

税制改正の要点を知ることのできる税制改正の大綱は、総務省や財務省のWebサイトなどで確認できます。
ただし、改正法の詳細や具体的な中身については、法律の施行後に国税庁のWebサイトやリーフレットなどで確認することが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています